第55話 四年前~石のように眠る~
(なんだ、体が重い。まるで、体が石になったようだ。それに、なんだか息が苦しい。こんな気分になったのも四年ぶりだな。四年、四年、長いようで短いとはよく言ったもんだ。四年か、あれから・・・。)
ロックは深い深い意識の海の底へ沈んでいった。
四年前、西の国ウエスタ。
「・・・て、・・・・きて」
酒場の机に突っ伏して、泥のように眠るロックを若い女魔術師がゆする。
「起きろっつってんだよ。このすっとこどっこい。」
彼女の大きな魔法の杖がロックの頭に振り落とされる。
ポカ
「あいたぁ」
ロックは後頭部にたんこぶができていないか確認する。
「イテテ、エリス、何すんだよ。」
「何したも、クソも無いでしょ。何もしてないあんたが、何私に盾突いていんのさ。」
エリスは顔を真っ赤にして、ロックに組み付いた。
「うぅ、すげぇ剣幕だな。」
ロックの後ろに立っていた傷だらけの勇者が少し身を引く。
「まぁ、こうなることは火を見るより、明らかでしたよ。」
勇者の横に立っている、医学書を携えた魔法医が呆れていた。
「おい、ルート助けてくれよ勇者だろ。ビートもいくらお前がどんな傷でも治せるからって、これから起ころうとしている惨状をほおっておく気かよぉ。」
勇者ルートと魔法医ビートは顔を見合わせる。
プイッ
「お前ら、そっぽ向くんじゃねぇぇぇぇ。」
ガシッ
エリスがロックの頭を鷲掴みにする。
「あっ、うぎゃぁぁぁぁぁぁ」
酒場にロックの悲鳴が轟いた。
「す、すみません。」
ロックは同パーティメンバー―である、エリス、ルート、ビートの前で思いっきり土下座をする。
「反省してるなら、さっさとクエストをこなしなさい。」
エリスは一枚のクエスト用紙を取り出す。
「うぅ、じゃぁ、早速みんなで一緒に・・・」
「ダメよ。一人で行きなさい。」
エリスは冷淡に言い切った。
西の国、ウエスタ漁港。ダイダイダイオウイカを始とした、様々な水産物がここから出る船で漁られる。
ロックはウエスタ漁港でエリスからもらったクエスト用紙片手にぶらついていた。
「魚人ねぇ、ただでさえ数減ってきてるのに、生死を問わず捕獲して殺したらボーナスってなんというかギルドも鬼だねぇ。まぁ、この魚人も魚人で人を何人も殺してるらしいしな、まぁ、仕方ねぇな・・・。」
「ウワッ」
ゴツン
クエスト用紙に目をやりながらぼやくロックは前をよく見ていなかった。それゆえに、漁場で働く男と正面からぶつかってしまう。
「イッテぇ、すまん、すまん、前をよく見るべきだったな・・・って、あぁぁぁぁ。」
ロックが顔を上げると、彼のぶつかった相手がターゲットの魚人であると気が付いた。
「お前、このクエストのターゲットじゃねぇか!」
「なっ、何の事だ?」
「うるせぇ、大人しくつかまれ。」
ロックは魚人の男につかみかかるが、体格の差が圧倒的であったためか、ロックは海にほおりだされてしまう。
(やっべぇ、俺カナヅチなんだよ。お、溺れるぅ。)
ロックは海中でジタバタと足掻く。
(ダメだ、全然浮上しねぇ。い、意識が途切れ・・・)
ロックが意識を失いかけたその時、水中であるにも関わらず、彼には聞こえた、はっきりとその声が。
(・・・て、・・きて、・・・・・・生きて)
今の自分にはこれ以上書く気力がありません。
でも、もし誰かが自分の物語を必要だと思ってくれたならもう一度書くために戻ってこようと思います。




