第37話 雑談~葬礼帰りの魔法医話~
「アリス様、大丈夫ですか?」
青ざめたアリスの顔をエレノアは覗き込む。
「うん」
対照的に、魔法医として経験を積んでいたエレノアは仮面をつけて表情はわからないものの、声色はとても冷静であった。
「そういえば、この病院で解剖した際、あの方の胃から大量の黒い砂が出てきたのですが、アリス様はこれについてご存じですか?」
エレノアはアリスにその黒い砂を白い袋に包み、渡した。
「これは・・・。断言はできないですけど、おそらく砂鉄じゃないでしょうか?」
「さてつ?」
アリスはこの世界に転移する前に親友に勧められて読んでいた異世界転生もののラノベ小説にこんなシーンあったなとデジャブを感じていた。
「まぁ、簡単に言うと砂のように粒の小さい磁鉄鉱ですね。」
「じてっこう?」
「強い磁性、つまり磁石によってくっつく性質を持った鉱物ですね。」
「へ、へぇー。」
「まだ、見た目で判断しているだけでこれが砂鉄と決まったわけではないですけど、可能性は高いと思います。」
まだ、アリスとエレノアの間には距離があった。部活や地元のサークルに入らず、毎日勉強、勉強、勉強の生活だったアリスにとって彼女が初めて自分に敬語を使ってくる相手であった。そんな彼女との距離間を掴めず、慣れない敬語でコミュニケーションを図ろうとしていた。
「あの、アリス様、私に敬語を使わなくても大丈夫ですよ。」
「えっ!」
アリスはエレノアのその一言に衝撃を受けた。
「あ、あの、でも、エレノア様は王女なんですよね?」
「“元”王女ね。でも、今はただのしがない魔法医。」
エレノアは仮面の下で自虐的な笑みを浮かべながら、アリスに近寄る。
「ねぇ、アリス様・・・、私の友達になってくれない?」
アリスは人生で初めて慣れないタメ語を聞くことになった。
「ダメ・・かな?」
アリスにとってその質問の答えは考えるまでもなかった。
「ダメじゃないわ、これからよろしくエレノア。」
「はい、アリス様・・・あっ!」
「大丈夫、慣れないうちは敬語のままでいいから。それより、この砂鉄と思しき黒い砂の正体を確かめなきゃね。」
そういうと、アリスは懐から買ってきた釘を取り出し黒い砂に付ける。
「やっぱり・・・。」
「くっ付きましたね!」
「うん、これで磁性があることから、この黒い砂が砂鉄であることはほぼ確定したね。」
「でも、どうしてあの方は胃の中に砂鉄を?」
「今はわからないけど、きっと彼の死因に深く関わっていると思う。」
「そういえば、もう一つ不審な点がありまして・・・」
エレノアは紙でできた遺体の検分記録を取り出す。
「実は、あの方背中側の外傷がなく、刀身の先が腹を貫いて飛び出したのに後ろから刺された訳ではないという不可解な事が起こっているんです。」
(もしかして・・・いや、でもそんなことできるの?)
アリスの顔は再び青ざめた。
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