第20話 ぶつかり合う史上最強の師匠と史上最弱の弟子~マジックマジマッチ~
粉塵爆発:非常に微細な粉塵が空気に触れる表面積が大きくなることで、燃焼反応によって爆発的に燃焼する現象。
「ギルドの捜査の結果、デリシャさん殺しの犯人はイグニスさんで確定して、討伐クエストまで出たよ。でも、誰もこの国一番の魔術師の討伐なんて受けるはずないでしょ。だから、誰でも受けられるようにギルド長がDランクでもクエスト受注可にしたわ。」
おそらく、あの事件があってから一睡もしてないのであろう、ミリナは朝早くのギルド受付で、アリスに眠そうな目をこすりながら伝えた。
「私、そのクエスト受けるから。」
「本気ぃ?」
ミリナは表情筋をヒクつかせた。
「アリス、あなた魔力ないんでしょ。私が言うのも、なんだけど、やめた方がいいよ。あなたが賢いのは知ってる、その頭脳でいくつもの修羅場を乗り越えてきたことも。でも、今回ばかりは相手が悪すぎる。」
「大丈夫、私帰ってくるから。」
「約束して。絶対に帰ってくるって。」
「わかった。じゃぁ、そろそろ時間だから。」
そういうと、アリスはデリシャズキッチンのある方角へ歩いて行った。ミリナには、アリスの歩く道が天国への一方通行の道のように見えた。
午後十二時、イグニスがデリシャズキッチンに入った。店長の帰ってこない、この店にはもう食べられることもないであろうパンがきれいに並んでいた。
「入って。」
店の奥の材料庫から、アリスの声がした。
ガチャ
イグニスは材料庫の中に入る。そこでは、小麦粉が舞い、煙幕のようにイグニスの視界をふさいだ。
「これで、師匠のお得意の火属性魔法は使えないわ。」
「粉塵爆発か!」
「そう、師匠、あなたに私が教えた科学知識の一つよ。ここで、あなたが火種を作れば、私達二人とも無事では済まない。」
「フッ、その程度か」
イグニスは人差し指を天井に向け、詠んだ。
『スコウラ』
イグニスの指から黒雲が生まれ、天井へと昇る。
(何、あれ?)
三年間、イグニスの元で修行していたアリスもこの魔術を見たのは初めてだった。
ピチャ・・・ピチャピチャ
空の見えない材料庫で、雨が降った。
(雨を降らせる魔法? でも、どうして?)
「まだ、気づかないのかい?アリス」
「!」
イグニスはアリスの心を読んだようかのように、答えた。
ザーザーと雨がより激しく、アリスに降り注いだ。
「舞っている小麦粉に雨による水滴をつけて、重くし、地面に落としているのさ。そうすれば、ほら。」
彼が手を叩くと一瞬で雨がやみ、視界を塞いでいた小麦粉はいつの間にか、アリスのひざ下まで溜まっていた雨水に溶けていた。
「どうだ、これでもう私は君を焼き殺せる。」
アリスは顔面蒼白になり、後ずさりを始めた。
「終わりだ。『ファイロ』」
イグニスはアリスに火球を放った。
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