第19話 最強の大魔術師への宣戦布告~火のない所に師匠は立たぬ~
時刻は午後九時、イグニスの屋敷の暖炉の焚かれた客間で、ロックとアリスは車いすに座ったイグニスと向かい合う形で用意されたソファに座っていた。
「いやぁ、久しぶり。アリス」
「お久しぶりです。師匠」
「君と会うのも、何か月ぶりかな」
イグニスは気味の悪い笑みを浮かべた。
「今日は何しに来たのかな?」
アリスは口を引き結い、デリシャからもらったパンをイグニスに差し出した。
「ほう、これは、私の好きな・・・」
「デリシャさんを殺したのはあなたですね。」
暖炉の炎がパチパチと音を立て、勢いよく燃え盛った。
「藪から棒だね。」
「答えてください。貴方が殺したんですか?」
アリスは凄まじい剣幕でイグニスを睨んだ。
「だったら、どうなんだい?」
「否定、しないんですね。」
アリスは声を震わせ、眉を顰めながら、ゆっくり目を閉じた。
「珍しいね、君がこんな判断ミスをするなんて。」
イグニスは車いすから立ち上がり、アリスの目の前に立った。
「あんた、足が悪いんじゃ・・・」
「ロック君、先入観に囚われてはいけないよ。」
イグニスは流し目でロックを見た。
「アリス、私が君ならノコノコと自分が殺されそうな状況に追い込むような、馬鹿な真似はしないよ。少なくとも、以前の君はそうだった。」
イグニスはソファでうつむくアリスを上から見下ろした。
「ハハッ、そんなこと考えもしなかったですよ。師匠」
アリスは皮肉っぽく笑った。
「でも、安心しました・・・、これで、もう迷わない。」
アリスがイグニスを見上げた。その目は瞳孔が大きく開き、血走っていた。
「わかっているのかい?君は、追い詰められているんだ。」
「わかっていますよ。」
「魔法の使えない君に勝ち目がないこともか?」
「師匠、先入観に囚われてはいけませんよ。」
「無理だね、君は私に勝てない。」
「それは、どうでしょうね。やってみないとわからない。」
「それじゃぁ、今戦うかい?」
「いいえ、さすがにここじゃ、こっちの勝ち目はゼロですよ。」
「じゃぁ、どこならいいんだい?」
「デリシャズキッチンの材料庫、そこで明日の正午、サシで戦いましょう。」
「それは、楽しみだ。」
ロックとアリスはイグニスの屋敷を出て、横並びで歩いていた。
「アリス、本当に勝ち目があるのか?イグニスはこの国一番の魔術師だ、それに、今までの敵とは違って、お前と同等、もしくはそれ以上に頭が切れる。」
ロックは心配そうにアリスを見た。
「わかっている。だから、それを利用する。」
アリスは意味ありげに笑った。
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