第18話 迫りくる魔の手~パンはパンでも、食べられないパン~
ポッポーポッポー、タダイマーゴジ、ゴジ
ギルドの受付にある声真似鳥の入った時計が時刻を告げた。
カリカリカリ
ミリナはギルドの受付で爪を噛みながら、一枚の資料に目を通していた。
「ミリナちゃん。はい、これ。」
アリスはミリナの居る受付のテーブルに袋を置いた。
「何?」
ミリナはアリスを睨んだ。彼女の眼は充血し、目の下にはクマができていた。
「ごめん、忙しかった?」
「いや、いいの。それより、何その袋?」
ミリナは目線を袋に向ける。
「これ、絶対気に入ると思うんだ。」
そういって、アリスは袋から亀の形を模したメロンパンを取り出した。
「これって、カメカメメロンパン!」
ミリナは身を乗り出した。
ポッポー、ポッポー、タダイマーヨジサンジュップン、ヨジサンジュップン
町の青果店に備え付けられた声真似鳥の入った時計が時刻を告げた。
「あら、もうこんな時間!」
デリシャは町の市場に買い出しに来ていた。
「急がないと。えぇっと、あっ、財布忘れちゃった。取りに帰らなきゃ。」
デリシャは急いで引き返そうとした。
その時、
「デリシャさんですね。」
フードをかぶり、白髪を生やした、怪しい長身の男がデリシャに話しかけた。
「は、はい、そうですが。何か?」
デリシャは首を傾げた。男は黙っている。
「私、急いでいるので。それでは」
デリシャは男の横を通ろうとした。
その瞬間、男は呪文を唱えた。
「ファイロ」
ポッポー、ポッポー、タダイマ、ゴジゴフン、ゴジゴフン
「うーん、懐かしいこの味。」
ミリナはカメカメメロンパンの味を堪能していた。
「よかったぁ。やっぱり、デリシャさんの店に行って正解だったよ。」
アリスは胸をなでおろした。
「やっぱり、これデリシャズキッチンのパンなのね。私、ここで仕事する前はよくあそこに通ってたの。最近忙しくて、行けてなかったけど・・・。」
「ありがとう、アリス」
バーン
ロック扉を思いっきり開け、ギルドの受付に入るや否や、掠れた声で叫んだ。
「落ち着いて聞いてくれ、デリシャさんが・・・殺された。死因は焼死だ。」
ミリナは泣き崩れた。彼女の食べていたカメカメメロンパンは涙で湿り、ふやけていた。
「犯人の目星は?」
アリスは目を閉じ、顔を伏せながら、ロックに質問した。
「わからんねぇけど、相当なやり手なことには違いねぇ。近くにある商品に一切、飛び火しなかったらしい。俺の勘だが、これだけの精密な魔法の操作、俺たちの手に負えるレベルを、遥かに超えた実力者だ。」
「そう、わかった。」
アリスは歯ぎしりをしながら、顔を手で覆った。
「私、犯人に心当たりがある。その話を聞く限り、この国の中でそんな芸当できる人間は一人しか考えられない。確たる証拠はないけどね。だから、確かめたい。ロック、もちろん一緒に来てくれるよね。」
「当たり前だ。」
「マッテクレ、ボクモイク。」
ニルがアリスたちの前に立ちふさがった。
「ニル君、あなたはミリナを守ってあげて、彼女には今、側にいてくれる人が必要よ。」
「ワ、ワカッタ。」
アリスとロックは二人で彼の元へ向かう。そう、ウエスタで一番の魔術師、そして、アリスの師匠でもある、大魔術師イグニスの元へ。
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