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知逆転移  作者: Curry&Rice
第一章 西の国編

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第17話 日常と迫りくる不穏な影~パン屋を覗くとき、パン屋もまたこちらを覗いている。~

アリスは自分の布団の上で、とある学術書を読んでいた。


「おい、何読んでんだ?」


空気の読めないロックは、アリスが集中して読んでいる後ろから声をかけてきた。


「ロック、聞いてよ。」


アリスは学術書の目次を開き、ロックに見せた。


「水圧について、植物の光合成について、魔法動物の分類について、・・・。なんか、むずそうだな。」


ロックは頭をポリポリと掻いた。


「やっぱり!」


アリスは本を自分の方に向けた。


「どうした?」

「これは、ウエスタで一番難しいとされている、科学に関する学術書なの。でも、この学術書は、私の転

生前の世界なら、中学生レベル・・・、つまり、大体十三歳ぐらいのレベルの内容しか書いていない。」


アリスは頭を抱えた。


「おそらく、この世界は魔術が発達しすぎて、その分科学レベルがとても低いっていう状態なの。あぁ、

だから、師匠は私に科学を教えてほしかったのか・・・。あぁ、もう、こんなんだったら、この世界で学者にでもなればよかった。ん、でも、どうして・・・?」


アリスは布団の上で頭を抱えながら、のたうち回った。


「なぁ、アリス。そんなことより、ミリナに送るプレゼントについて、考えようぜ。」


ロックは暴れまわるアリスを強引に置いてあった椅子に座らせ、ロックは地べたに座るニルと椅子に座ったアリスに演説を始めた。


「前に、地下闘技場の闇を暴いたクエストで、我々は違法賭博をした。」

「ボクハ、ヤッテネェゾ。」

「だが、寛大なお心を持つ、ミリナ嬢によって、チャラとなった。」

「その代わりに、Cランク昇格の件もチャラになったけどね。」

「そこでだ、我々はミリナ嬢に感謝の気持ちをプレゼントで伝えるべきだと考える。」

「オイ、カッテニ、マキコムナ。」

「ちなみに、俺は金の腕輪をプレゼント候補として推薦する。」

「センスないね。ロック」

「お前らなぁ、さっきから文句ばっか言いやがって、ちゃんと考えてんのか?」

「ぜーんぜん。」

「カンガエテナイ。」


二人は首を横に振った。


「でも、そういうことなら、いいお店知ってるよ。」


アリスはゆっくり立ち上がった。



焼き立てのパンの香りが通りを包む、ここを通る人は皆知っている、この香りは、その通りに並ぶ小さな店の中で、ひときわこぢんまりとしたパン屋、デリシャズキッチンから来ているということを。


「うぅ、いざ来てみると、ちょっと緊張する。」


アリスは店の扉の前から、店内を覗き見ていた。


「あら、そこにいるの、アリスじゃない?」


店内にいた、赤い色をした髪を高い位置でまとめた、女性店長のデリシャがアリスに気づき、声をかける。


「は、はい」


アリスは扉を開け、店内に入った。

店の中は、温かいパンの香りに満たされ、並べられたパンが太陽の光を反射し、キラキラと宝石のように輝いていた。


「やっぱり、そろそろ来るんじゃないかと思ってたわ。・・・ん、そこのハンサムなお兄さんは、アリスちゃんの彼氏?」


ロックは決め顔をしながら、アリスの後ろに立っていた。


「ち、違うよ、そんなんじゃない。」


アリスは顔を赤くした。


「わかっているわよ、冗談、冗談」


デリシャは軽く微笑んだ。


「ボク、コノニオイ、スキ」

「あら、この子センスあるわね。」


デリシャはニルに微笑みかけた。


「アリス、お師匠様にはちゃんと挨拶に行ってる?」

「いやぁ、それが忙しくて・・・。」

「ダメじゃない。ちゃんと、顔を出さないと心配するわよ。」


そういうと、デリシャはアリスにエピを袋に入れ、渡した。


「これ、お師匠様の好きなパンなの。お代はいいわ。だって、私の一番のお得意様なんだから。」

「デリシャさん、ありがとうございます。でも、私達がここに来たのは、世話になっている友人に買うパンを探すためで・・・。」

「それなら、これね。」


デリシャは可愛らしい亀の形を模したメロンパンを同じく、袋に入れ、アリスに渡した。


「こっちも、お代は結構だから。」

「デリシャさん・・・。」

「さぁ、善は急げ。早くしないと、パンが冷めちゃうわよ。」


デリシャはアリスたちを急かした。


「また、買いに来ます。デリシャさん」

「アリスは、いつでも、大歓迎よ。」


デリシャは店を出るアリスを店の入り口から見送った。



「デリシャさん、いい人だったな。」


ロックは独り言のようにつぶやいた。


「そうね。」

「ボク、アノミセ、キニイッタ。」

「今度は、ミリナも連れて、みんなであそこのパン買おうぜ。きっと、あの人も喜ぶ。」

「うん、そうしよう。・・・ん?」


アリスは後ろに気配を感じ、振り返る。


「どうした。アリス、後ろに誰かいたか?」

「いや、なんでもない。」


振り返った先には、買い物客と、夕日に照らされた石畳があるだけだった。

だが、アリスの胸のざわつきは消えなかった。


ぜひ、ブックマークを登録して、お読みいただけたら幸いです。

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