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第41話 俺は食材じゃありませんって!

 翌日、ドラセナさんから『自由時間終了ー! 港集合!』というメッセージが届き、俺たちは港へ向かった。


 再びドレッドノートに乗船し、荒波を揺れひとつなく突き進んでアスタータウンへと帰還する。

 その足でまっすぐ向かったのは料理人ギルドだった。


「ほんとにボロボロね……」


 目の前に佇む、ドラゴンの襲撃で半壊したギルドハウスを見上げてプチさんが漏らす。


「はい、修復するためのお金が足りなくて」

「あんた以外に、他にプレイヤーの料理人はいないの?」

「どうでしょうか……NPCの方以外は見かけたことがないですね」

「じゃあ、私が二人目ってことね!」

「あはは、そうかもしれませんね」


 受付を見回してみたがロメリアの姿はない。


「ところで、転職ってどこでするの?」

「うーん、俺も転職したことがないので分かりませんね。とりあえず、ガランさんのところに行ってみましょうか」

「そうね」

「ふふ、ロメリアさんもこんなにいっぱいのお土産を見たら驚きますかね」

「ロメリアって誰だったかしら」

「えーと、料理人ギルドの受付さんですよ」

「ああ、あの説教女ね」

「そんな言い方酷いですよ~」


 黄金の鍋の扉をガチャリと開ける。


「お! 料理人君じゃん!」

「ほんとだ! やっと帰ってきたのか!」

「おーお帰り! お前の飯、待ってたんだぞ!」


 店内に入った瞬間、料理を食べていた常連プレイヤーたちから一斉に歓声が上がった。


「ただいま戻りました!」

「おう坊主、いい旅してきたか?」


 奥から顔を出したガランさんに、俺はインベントリから獲れたての魚を取り出してみせる。


「はい、おかげさまで! 凪ウナギに潮香アジ、氷結サーモンも釣れましたよ!」

「おっ、大漁じゃねえか!」

「あー! ぺんさーーん、お帰りなさいっ!」


 配給の手伝いをしていたロメリアがパッと表情を輝かせて駆け寄ってきた。お土産の魚に目を輝かせたあと、俺の後ろで少したじろいでいるプチさんに気づく。


「お魚いっぱいだね!……あれ、後ろの子は?」

「彼女はプチさんです。ロメリアさんも釣りに行ったときに会ったじゃないですか」

「あー! あの雷の子!」

「プチフィーユよ。よろしく」


 フンッといった様子でプチさんが差し出した右手を、ロメリアさんは「よろしくねー!」とぶんぶんと上下に激しく振って握手した。


「早速で悪いが坊主、厨房を手伝ってくれないか? 客が押し寄せてて手が足りねえんだ!」

「はい、すぐに!」


 俺が急いで厨房へ向かおうとすると、残されたプチさんにロメリアがビシッと指をさした。


「あなたはこっちよ!」


 数分後。ロメリアから借りた可愛らしいエプロンを身に纏い、顔を真っ赤にしたプチさんが出てきた。


「はい、これ運んで! 4番テーブル!」

「わ、わかったわよ……!」


 不慣れな手つきで料理を運ぶプチさん。


「水ください」

「そこにあるでしょ、自分で取りなさい!」

「違う違う! プチちゃん、お水は運んであげて! 次はこれ7番テーブルね!」

「おすすめは?」

「……全部よ!」

「もっと売る気出してー!」


 てんやわんやの接客。常連客のからかいにも容赦ない。


「フィーユちゃん可愛いね! 今度俺と一杯どう?」

「フンッ、お断りよ! ハゲ!」

「ヒューッ! ツンデレ最高! もっと罵倒して!」

「キモッ! あんたなんて出禁だわ!」

「そりゃないぜー!」


 最初は大混乱だったプチさんだがロメリアが眩しいほどの笑顔で「お待たせしましたー!」とお客さんに接する姿をチラチラと盗み見始める。そして、たどたどしくもロメリアさんの真似をして、少しぎこちない笑顔を作りながら料理を差し出し始めた。


 厨房からその姿を見て、俺は思わず微笑んでしまった。


 ピークが過ぎ、営業終了。


「あ、足が痛い……」


 プチさんが椅子にへたり込む。


「プチさん、お疲れ様です!」

「ありがとな嬢ちゃん、これは今日のお礼だ。坊主もな」


 ガランから手渡されたのはズッシリと重い報酬。お給料を受け取ったプチさんは目を輝かせて何度も袋の中身を眺めていた。


「ところでガランさん、転職できる場所ってご存知ですか?」

「坊主……まさかお前、料理人をやめちまうのか!?」

「違います違います! プチさんが料理人になりたいって言うので!」

「へえ、プチちゃんが料理人にねぇ! ぺんさんがスカウトしたの!?」

「スカウト……というわけでもないんですけど」

「転職なら、案内所にいるサルビアの爺さんのところでできるぞ」

「サルビアさん……あの白髪の!」

「さっさと行くわよ、料理人!」

「あ、はいっ!」


 プチさんにグイグイと腕を引っ張られ、黄金の鍋をあとにした。

 ゲームを始めたばかりの頃に立ち寄った案内所へと向かい、サルビアの前へ立つ。


「珍しい職業を選ばれるのですね。料理人は戦闘向きではありませんが、よろしいですか?」

「問題ないわ!」

「転職に際して、魔法使いの初期スキルは――」

「問題ないって言ってるでしょ! さっさとして頂戴!」

(最後まで話を聞いた方がいいんじゃないかな……)


 心の中で突っ込んでいると、サルビアが静かに頷いた。


「手続きが完了しましたよ」


 次の瞬間、プチさんの身体が光に包まれる。光が収まると、彼女の手には料理人ギルド支給の初期包丁が握られていた。


「ふふーん! 見なさい料理人! 私の包丁よ!」

「あ、あぶないですよー!」


 嬉しそうに包丁をブンブン振り回すプチさん。そして、急に真顔になって包丁を俺へと向けた。


「フードアナライズ!!」

「俺は食材じゃありませんって!」

「ちぇ……。でも、これで私も料理人みたいに、美味しいご飯が作れるようになるのかしら!」


 目を輝かせるプチさんに、俺はしっかりと頷いた。


「はい! 改めて……料理人の世界へようこそ、プチさん!」


 そう言うと、プチさんは少し照れくさそうに、けれどとても嬉しそうに微笑んだ。


「よろしくね、先生」


【フラミス】サービス18日目 雑談スレ Part7


 78:名無しのバーバリアン

 やあ料理人君、やっと帰還してくれたわ。


 79:名無しのバーバリアン

 お? あの黄金の鍋の新人君?


 80:名無しのバーバリアン

 新人ってもう新人ちゃうやろwww


 81:名無しのバーバリアン

 にしても、あのフィーユちゃん可愛かったな。


 82:名無しのバーバリアン

 それな。


 83:魔法使いギルド総帥

 そのフィーユって子、魔法使いの格好してる?


 84:名無しのバーバリアン

 うおw名前えぐwww


 85:名無しのバーバリアン

 そうだよ。

 プチフィーユって魔法使いの子。


 86:魔法使いギルド総帥

 どこで見たの?


 87:名無しのバーバリアン

 黄金の鍋。


 88:魔法使いギルド総帥

 どこよそこ!


 89:名無しのバーバリアン

 自分で探せよw


 90:名無しのバーバリアン

 姉御~。

 あとで地図送っときますから~。


 91:魔法使いギルド総帥

 妹に手出ししたらぶっ飛ばしてやるんだから!


 92:名無しのバーバリアン

 おお怖いw


 93:名無しのバーバリアン

 お前ら姉妹だったんか!


 94:名無しのバーバリアン

 姉もツンデレ属性持ちとは欲張りセットすぎるだろw


 95:名無しのバーバリアン

 フィーユちゃんとロメリア様のために俺、毎日通うわ。


 96:名無しのバーバリアン

 じゃあ俺は料理人始めます。


 97:名無しのバーバリアン

 動機が不純すぎるwww



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