第30話 凪うなぎの蒲焼き
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釣具店の店主に教えてもらった川へ向かうとそこには幻想的な光景が広がっていた。一面の白銀世界であるにもかかわらず、川の水だけは凍りつくことなく静かに流れている。ところどころからぽかぽかと湯気が立ち上っており、どうやら地下深くから温泉が湧き出ているようだ。
「へぇ……温かい川なんて不思議ですね」
まずはウナギ用のエサ、カームワーム探しだ。
岸辺の霜が降りた土や大きめの石をひっくり返していく。すると、湿った土の奥から指ほどもある太さの、赤紫色のグロテスクなミミズがにょろりと姿を現した。つかみどころのないふにょふにょとした感触が手袋越しにも伝わってくる。
「キモッ! やだ、なにそれ……!」
プチさんが即座に二、三歩後ずさった。俺も正直なところ、ちょっとだけ苦手かもしれない。
苦笑いしつつ針にミミズを掛け、重りごと川の深みへ向けて投擲した。ドブンと静かな水音が響き、仕掛けが川底の泥へ沈んでいく。
釣れない。ひたすら待つ。
プチさんは早々に飽きたようで、雪の上でカメ子と遊んでいた。
「うわぁ、カメ子! そんなの食べたらバッチいよ!」
見れば、カメ子は自分の小さな前足で器用に土をほじくり返し、カームワームをパクッと一口で丸呑みにしていた。「キュー♪」と嬉しそうに鳴くカメ子にプチさんが頭を抱えている。
そんなほのぼのとした光景に目を細めていた、その時だった。
――ギギギギッ……!!
置き竿にしていた新型の竿が恐ろしい角度で川面へ向かってブチ折れそうなほど曲がった!
リールが一気に唸りを上げ、ラインが目にも留まらぬ速さで吐き出されていく。
(うわっ……重っ!!)
「引っかかったの!?」
喋る余裕すらなく無言で頭をブンブンと縦に振った。
両手でしっかりと竿を保持するが水底へ突っ込もうとする相手の力強さは半端ではない。
腰を落とし、体全体で引きに耐える。何度も底の泥へ潜ろうとする抵抗を竿の弾力をフルに使ってじわじわと受け止め、慎重に距離を詰めていく。
格闘すること数分。バシャッと川面を割って現れたのは、大人の腕ほどもあるでっぷりと太った巨大なウナギだった!
網ですくい上げ、雪の上へ引き揚げる。
【凪うなぎ】
寒冷地の温かな清流に生息する大型ウナギ。
肉質:★★★★★
臭み:★★★★★
脂 :★★★★★★
推奨料理:蒲焼き、白焼き、ひつまぶし
ぬめぬめと体をくねらせる凪うなぎを両手で必死に押さえつけながら、俺は目を輝かせた。
さっそく調理に入る。
ほんのり温かみのある川の水を使って表面のぬめりを丁寧に洗い流し、目打ちをして一気に腹を開く。中骨を取り除き、食べやすい大きさに切り分けたら、竹串をしっかりと打ち込んでいく。
プチさんが熾してくれた焚火にくべる。揺らめく橙色の炎が、白銀の雪景色をあでやかに照らし出す。
「釜がないから……これで炊こう」
取り出したのは、氷結スカッシュの空き缶。上部を綺麗に切り離し、洗ったアスター米と清水を入れる。缶の口に平らな石で重石をして、焚き火の脇の熱い薪の上に設置した。
以前どこかで目にした空き缶炊飯のやり方が、まさかこんな場所で役に立つとは思わなかった。
しばらくすると、缶の隙間からブクブクと香ばしい泡が溢れ出してきた。火から下ろし、ひっくり返して余熱でじっくり蒸らす。
その間に、蒲焼きにとりかかる。
醤油、酒、みりん、砂糖を煮詰めた特製タレを用意し、まずは串打ちした凪うなぎを素焼きにする。
熱が通るにつれて、ピンク色の生肉がキュッと縮み、表面にブツブツと透明な肉汁が浮き上がってくる。皮目が香ばしく焼き上がったら、タレにどぶんと潜らせる。
――ジィジィジィッ……!
タレが熱い肉と脂に触れた瞬間、爆ぜるような音と共に、熱せられた脂が焦げる香ばしさと甘辛いタレの濃厚な香りがグラデーションとなって一気に広がった。
つける、焼くを何度も繰り返す。
タレが何度も層を成し、凪うなぎの表面が宝石のような深みのある飴色に輝き、透明な脂のテカリが炎の光を反射して眩しく踊る。
炊きたてのご飯を盛ったお椀に焼き立ての蒲焼きをドンと乗せ、仕上げに追いタレを回しかける。
「完成です!凪うなぎの蒲焼き!」
「いただきまーす!」
熱々のうなぎを口へ放り込む。
――サクッ……トロン……ジュワァァァッ!!
歯を入れた瞬間の、皮目の香ばしいパリッとした手応え。直後に訪れる、身の圧倒的な噛み応え。咀嚼した瞬間に、閉じ込められていた熱い脂と濃厚な旨味が、甘辛いタレと合わさって口腔いっぱいに弾け飛ぶ!
「……っっ!!」
言葉が出ない。
タレがたっぷりと染み込んだ炊きたてのアスター米と一緒に掻き込むと、噛むことすら忘れてそのまま喉奥へ流し込みたくなるほどの満足感が脳を直接揺らした。
隣を見ると、プチさんも目を見開いたまま、無言で猛烈な勢いで箸を動かしていた。
二人とも会話を挟む間すら惜しんで、あっという間に平らげてしまった。
「……ふぅぁ……美味しかった……」
ぽつりと漏らしたプチさんの声に、俺も深く頷いた。
あまりの美味さに完全に病みつきになってしまった俺は、すぐさま新しい仕掛けを取り出し、竿にミミズをセットし始めた。
「……また釣るの?」
「はい! 今度は別の調理を試してみたくなりまして!」
「絶滅させる気?」
「それは困ります!」
二人で笑い合いながら、俺は再び温かな川へ向けて仕掛けを投げ込んだ。
【フラミス】サービス15日目 雑談スレ Part8
401:名無しのバーバリアン
新しい島寒すぎるだろ!! 放置してたら凍結デバフで動けなくなったんだが。
402:名無しのバーバリアン
のんきに雪山で放置してて草。
403:名無しのバーバリアン
山登りしてたら急に吹雪いて足止まったんや! 仕方ないやろ!
404:名無しのバーバリアン
まじかよ、あの山登ろうとしてんのかw
405:名無しのバーバリアン
雲の上まで突き抜けて続いてるんだぞ? 絶対なんかあるやろ!
406:名無しのバーバリアン
寒い場所ばっかやないで。温泉スポットもあるぞ。
[画像]
407:名無しのバーバリアン
うわ、めっちゃ景色いいやん! 湯気立ってる!
408:名無しのバーバリアン
ここで眠りこけて溺死した奴がいるって噂から極楽温泉って呼ばれてるw
409:名無しのバーバリアン
天に召されたとw
関西風の焼き方を想定して書いてみました!
関東風は蒸す工程があるので身がふっくらするようです。
また背開き、腹開きの違いがあって、関東の方は切腹を連想させるため背開き。関西の方は腹を割って話すという心意気から腹開きにしているらしいです!
皆さんはどちらがお好きですか!?




