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第27話 海洋アップデートと

 翌朝ログインすると、視界いっぱいにシステムウィンドウが舞い込んできた。


【Version 1.1 海洋アップデート】

 ・新エリアの解放

 ・新生物の追加

 ・……


「魚、めちゃくちゃ増えてる!!」


 周りのプレイヤーたちが「新ダンジョンだ!」「船に乗れるぞ!」「氷山エリアへ行くぞー!」と大騒ぎしている。


 プレイヤートレードの画面を開いてみると UI が見違えるほど使いやすくなっている。


(すごいや、便利になったなぁ……)


 感心しながら黄金の鍋へ向かうと店の前で以前トレード機能の改善署名を手伝ってくれたプレイヤーたちに呼び止められた。


「あ! 料理人さん! プレトレの改善、要望が通って神アプデになりましたよ! 署名集めてくれて本当にありがとうございました!」

「えっ、あ、いや俺はただ……皆さんのおかげですよ!」


 お店は今日も大盛況だった。店内は新マップや船の話題で持ちきりだ。


「よし、激辛食って海に出るぞ!」

「地獄激辛、昨日より辛さがマイルドになってないか?」

「でも筋力増強出ねぇーっ!」


 密かに竜の爪を減らしていた俺は心の中で苦笑いを浮かべた。


 営業終了後。片付けを終えた俺はガランに切り出した。


「ガランさん。あの……数日お休みをいただいてもいいですか?」

「ん? どうした坊主」

「アプデで新しい魚がたくさん追加されたらしくて……自分の目で見て、釣ってみたいんです」

「ガハハ! いいじゃねぇか、楽しんでこい! 店のことは俺にまかせろ!」

「ぺんさん、お土産の珍しいお魚、楽しみに待ってますね!」

「二人とも、ありがとうございます!」


 ガランから「海を目指すなら、アスター川沿いを下っていけば港町に着く」と教えてもらい、俺は耐久が今にも無くなりそうな初心者用の釣り竿ビギナーズ・フィッシングロッドを持って出発した。


 アスター川のせせらぎを聞きながら、緑豊かな川沿いを歩いていく。


 しばらく進むと、見覚えのある大きな魔法使いの帽子をかぶった少女が川辺にポツンと座って釣りをしていた。


「あ、料理人!」


 こちらに気づいた彼女が、パーッと表情を明るくして手を振ってくる。


「こんにちは! 釣れますか?」

「ふふん、見てよこれ!」


 彼女が自慢げに指さしたバケツの中を覗き込むと、手のひらサイズの小さなカメがぷかぷかと泳いでいた。


「私のペットのカメ子よ! かわいいでしょう!」

「うわぁ、かわいいですね! 首がちっちゃい……」

「あんたも餌あげてみる?」


 渡された小魚を指先でバケツに差し出すと、カメ子はキューキューと可愛らしく鳴き、首をキュッと伸ばしてモグモグと小魚をついばんだ。


「ほーらカメ子さん、美味しいですかー」

「それで、料理人は何しに来たの?」

「アプデで追加された魚を見たくて、海を見に行こうと川を下ってたんです」

「ふーん、海ねぇ……。料理人一人じゃ危なっかしいし、私が護衛してあげなくもないわ!」

「本当ですか? 魔法使いさんがついてきてくれるなら百人力ですね!」


 こうして、俺たちは下流を目指して歩き始めた。


「そういえばカメ子さんはどこで捕まえたんですか?」

「今日よ! 釣りをしていたら引っかかって……運命の出会いだったわ!」


 歩いているうちにすっかり日が暮れて周囲が暗くなってきた。


「ここらで野営にしましょうか」

「そうね! 初級火魔法(プチファイア)!」


 彼女が杖をひと振りすると、集めておいた薪にポッと優しい火が点いた。


「すごい、便利ですね!」

「ふふん、これくらいお手の物よ」


 俺は近くの清流に降り、釣り竿を垂らした。すぐにググッと心地よい引きがあり、銀色に輝く立派な川魚が釣り上がった。


 持っていた竹串に鮎を打ち、粗塩を振って焚火の周囲に突き立てる。


 ――ジィジィ……。


 炭火の熱で皮目がパリッと焼き上がり、香ばしい脂の香りが夜の空気に漂う。焼き上がった熱々の清流鮎を、彼女に手渡した。


「どうぞ、焼き立てです」

「わぁ……美味しそう! いただきます!」


 はふはふと息を吹きかけながら魚に噛みつく彼女を見て、俺も自分の分を口に運んだ。


 パリッとした皮の香ばしさの後に、ふっくらとした白い身の甘みと、適度な塩気が広がっていく。


(……美味しいな)


 一番最初にここで食べた、あの焼き魚の味が舌の奥に蘇る。


 じわ、と涙が頬を伝い、ポタッと落ちる。


「……えっ!? ちょっと料理人、なんで泣いてんの!?」

「あ……いえ、初心に帰った気がして、なんだか感動しちゃって……」

「へ、変な人……」


 呆れつつも、彼女はどこか優しそうな目で俺を見つめ、カメ子と一緒に美味しそうに焼き魚を頬張っていた。


 揺れる焚火の火を見つめながら、俺たちの海への旅は静かに夜を迎えた。



【フラミス】海を渡る方法を考察するスレ Part13


 801:名無しの探索者

 時が来たぞ野郎ども! 出航の時間だぁぁぁぁぁ!!


 802:名無しの探索者

 うおおおおお!! 海航路開通したぞーーー!!


 803:名無しの探索者

 え、マ? リヴァイアサン消えたの??


 804:名無しの探索者

 正確には消えたんじゃなくて、遠方に回遊するようになって定期船のルートから外れたっぽい。


 805:名無しの探索者

 NPCの船に合法的に乗れるようになったのか。


 806:名無しの船大工

 俺たちの手作りイカダで大航海計画が……俺たちの青春が……。


 807:名無しの探索者

 泣くな船大工、お前のイカダは港の飾りとして輝いてるぞwww


 808:名無しの探索者

 それで、向こうの氷山エリアって結局何があるんだ?


 809:名無しの探索者

 火山の次は氷山か。極寒環境ダメージあるらしいから防寒具必須だぞ。


 810:名無しの探索者

 あと海の真ん中で新モンスター出た。


 811:名無しの探索者

 [画像]


 812:名無しの探索者

 でっっっっっかwwwww


 813:名無しの探索者

 くコ:彡


 814:名無しの探索者

 イカじゃねーか!!


 815:名無しの探索者

 出現はランダムらしい。ちなみに攻撃普通に通るから討伐可能だぞ!


 816:名無しの探索者

 マジ!? 倒せるのか!!


 817:名無しの探索者

 俺は負けたけどww


 818:名無しの探索者

 負けてて草w


↓アップデートの内容(※本文で書くと長くなるのであとがきに入れさせてもらいます!)

【Version 1.1 海洋航路アップデート】

・新エリア『極寒の大陸・氷山地帯』の解放

・海洋航路の解禁(定期船システム、造船および海戦機能の追加)

・川・湖・海における新規水生生物および新食材の大量追加

(潮香アジ、氷結サーモン、泡エビ、雷クラゲ、白真珠貝など)

・プレイヤートレードシステムの大型改修

(適正相場の算出、出品者評価、お気に入り・まとめ買い機能追加)

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