第22話 岩焼タイタンプレート
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「ダフィー! ポンポン! いくぞ!!」
マッチョの豪快な掛け声を皮切りに、三人組のマッチョプレイヤーたちが岩の巨人を囲むように三方向へと鋭く散開した。
見上げるほど巨大な岩石の巨人が地鳴りのような咆哮を上げる。しかし、マッチョたちは怯むどころか、太い前腕を誇示するように構え、太い鎖を巨人の巨体へ向けて同時に投げつけた!
「「「三重筋肉封鎖!!!!」」」
ギチチチチチチッ……!と、重厚な金属の鎖が千切れんばかりの悲鳴を上げる。だが、全身の筋肉を激しく収縮させた三人の圧倒的な膂力によって、あの巨大な岩の巨人の両腕と両脚が確かにその場に縫い付けられた。
(鍛冶師なのに前衛なんだ……! しかも素手と鎖だけで抑え込んでる……!)
俺が驚愕していると、後方から高らかな声が響き渡った。
「エントリーナンバー1!! マジカルアメジスト、いきます!」
フリフリの衣装を纏った魔法少女のプレイヤーが、杖をクルクルと回しながら飛び出す。
「マジカルビーーーーーム!!」
杖の先から眩い紫色の星々があふれ出し、極太の光線となって岩の巨人の頭上へ降り注いだ。ドカンッ!とド派手な爆発が弾ける。
すると、いつの間にか戦場の後方に設置されていた長机で、メイド服、ビジネススーツ、そして熊の着ぐるみを着た三人のプレイヤーが、真面目な顔で採点フリップを掲げた。
「再現度、10点」
「作品への愛を感じられます。10点」
「文句なし。10点」
(……何を採点してるんだろう、あの審査員の人たち)
俺が呆気にとられている間にも、必殺技大会は留まることを知らない。
「エントリーナンバー2!! タイガーオーキッド、いきます!」
特撮ヒーロー姿の男が、重厚な効果音と共にキレキレのポーズを連発する。
「努力! 友情! 勝利! 響け咆哮! 滅せ悪敵!! ガオンバーストーーー!!」
胸部の関節ギミックがガシャコンと展開し、オレンジ色の激しいビームが巨人の胸甲を粉砕する。
「素晴らしい! 再現の難しい胸部ジョイントギミックをここまで作り込むとは! 10点!」
「決めポーズの角度、10点!」
「前回からの成長が感じられます、10点!」
その後も、忍者、侍、巨大ロボ、変身ヒーロー、怪盗、アイドル、魔王……と、職人たちが丹精込めて作り上げた自慢の装備と演出による必殺技ラッシュが続いた。もはやレイド戦というより、命がけの文化祭である。
隣で見ていたドラセナが、「料理人君も何か必殺技、披露するかい?」と悪戯っぽく笑いかけてきたが、残念ながら俺にはそんなロマン溢れる必殺技は無い。いつか自分も、見ている人を魅了するような必殺技を作ってみたいものだ。
そして――最後に、一人の侍プレイヤーが静かに前へ出た。
「次元斬――!!」
一閃。空気が鋭く裂ける甲高い音が響き、岩の巨人の胴体が完璧な水平線を描いて真っ二つに滑り落ちた。
(すごい切れ味……! あの無駄のない刃の入れ方、包丁裁きの参考にしよう……!)
地響きを立てて巨人が崩れ落ち、討伐は完了した。
戦闘が終わるやいなや、鍛冶師たちは一斉に群がり、転げ落ちた希少な鉱石や金属素材の回収を始めた。皆が鉱石に一直線の中、マッチョ三人組だけが、砕けた岩の鎧の隙間から覗く巨人の肉を食い入るように凝視していた。
「素晴らしい筋肉だ……」
「これはかなり良質なタンパク質が含まれているな」
「この太い筋繊維……タイタンの日々の筋トレの努力を感じる……!」
感心したように肉を観察する彼らに、俺はふと声をかけてみた。
「あの……食べてみますか?」
「「「!!!!」」」
三人が猛烈な勢いでこちらを振り返る。「お、調理してくれるのか!?」と超乗り気だ。ドラセナに確認すると、「その肉は鍛冶の用途がないから自由に使っていいよ」と笑って許可してくれた。
よし、お言葉に甘えて調理に取り掛かろう!
今回の主役は、目の前で崩れ落ちたロックオブタイタンの身体――その一端を担っていた、黒く重厚なタイタン岩だ。俺は表面が平らに引き締まった手頃な岩片を選び出すと、そのまま焚き火の上にドンと据えた。極厚の天然鉄板の完成だ。
薪の火力を極限まで強め、岩をじっくりと炙っていく。黒かった岩肌が徐々に熱を孕み、わずかに赤みを帯び始めたところで、指先から水滴をひとしずく垂らしてみた。
――ジュッ!!
一瞬で水滴が白い蒸気となって爆ぜ、弾け飛ぶ。熱の保持力は完璧だ。
そこへ、削り出したばかりのタイタン肉の巨塊を豪快に押し当てた。
――ヂィィィィィッ……!!
肉が触れた瞬間、耳を刺すような鮮烈な脂の爆音が上がった。火が直接肉を焼くのではなく、熱をたっぷりと蓄えた厚い岩肌から、極上の遠赤外線が肉の深部へとじわじわ押し寄せていくのが手応えで分かる。
ピンク色だった肉の表面が熱に縮み、引き締まり、表面の無数の繊維から、ブツブツと透明な肉汁と上質な脂が溢れ出してくる。溢れた脂が岩肌の上でジュワジュワと弾けて滑り落ちる一方、肉の内側にはしっとりとした膨らみが保たれたままだった。香ばしく焦げる熱せられた肉の匂いと、野性味のある特有の獣臭――それが熱によって凝縮され、甘やかな脂の香りへと変貌していくグラデーションが鼻腔を強くくすぐる。
「よし、脂が乗ってきたな……!」
岩肌を滑り落ちる黄金色の肉脂を逃さず、脇に配したホワイトポテトとグリーンキャロットへ絡める。表面が黄金色に輝き、甘い野菜の香味が引き立つ。
仕上げは特製ソースだ。
みじん切りにしたアスターオニオン、すりおろした生姜とにんにくを鍋でサッと炒め、酒、みりん、醤油を注ぎ入れる。
――ジュワァァァッ!
醤油が焦げる香ばしい和風の香りが一気に立ち昇り、脳に直接「食べたい」という本能的な欲求を叩き込んでくる。トロリと煮詰まった特製オニオンソースを、バチバチと脂を爆ぜらせている極厚の肉塊へ、惜し気もなく豪快に回しかけた。
――ジューーーーーーッ!!
溢れる蒸気と、漆黒の岩肌の上で弾ける濃厚なソースの泡。
見た目、音、そして圧倒的な香り――すべてが噛み合った瞬間だ。
「できた……!岩焼タイタンステーキです!」
「さあ、召し上がれ!」
マッチョたちに差し出すと、彼らは肉塊を豪快に口へ運んだ。俺も切り分けて一口食べる。
――サクッ、むギュッ、ジュワァァァ……!
重厚な弾力があるのに、歯がスッと入る柔らかさ。噛み締めた瞬間に、閉じ込められていた濃厚な旨味と脂が爆ぜ、喉を焼くような満足感となって駆け巡る。醤油と生姜の香ばしい風味が肉の力強さに負けておらず、猛烈にお米が欲しくなる味だ。持ち合わせがないのが悔やまれる!
添えられたホワイトポテトは、口に入れた瞬間にホロホロと崩れ、吸い込んだ肉の旨味を口いっぱいに弾けさせた。
「筋肉が……喜んでいるーーー!!!!」
マッチョたちはステーキをバクバクと平らげながら、全身でマッスルポーズを決めて大歓喜していた。
と、その時。目の前に見慣れないシステムウィンドウが浮かび上がった。
【パッシブスキル:筋力増強を獲得しました】
「えっ……バフじゃなくて、パッシブスキル……!?」
驚いて声を上げると、ステーキを完食したマッチョたちが教えてくれた。
「ああ、それね。俺たちは素で持ってるスキルだから何も起きなかったけど、まだ持ってない料理人君は、その凄まじく上質な肉のタンパク質でスキルが覚醒したんだな!」
「これで君も、俺たちの仲間入りだな!」
歓迎された俺は、嬉しくなって彼らの真面目な真似をし、力いっぱいマッスルポーズをとってみた。しかし、服の袖から出てきたのは、なんとも可愛らしい小さな力こぶだった。みんなが大爆笑する。
照れくささに苦笑いしながら、散らかった調理器具を片付けようとマイ中華鍋を持ち上げた瞬間――
(あ……少し、軽い?)
ほんのわずかだが、鍋を持つ手や足取りが軽くなっているのを実感した。俺は片手で持ち上げたままの中華鍋を、もう一度、確かめるように軽く振ってみた。
【フラミス】サービス11日目 雑談スレ Part5
0931:筋肉のバーバリアン
料理人君にタイタンステーキ作ってもらったぞ!
[画像]
0932:名無しのバーバリアン
うっっっっっっっまそう!!!!!!!
0933:名無しのバーバリアン
待って、何の肉それ!?
0934:筋肉のバーバリアン
ロックオブタイタン。
0935:名無しのバーバリアン
は????????
お前らレイドボス食ったんか!?!?
0936:名無しのバーバリアン
贅沢すぎるだろwwwwwwww
0937:筋肉のバーバリアン
素晴らしい筋肉。
噛み応えと肉汁の深みから、タイタンの日々の筋トレの努力と苦難を感じさせる素晴らしい味わいだったわ。筋肉が歓喜の咆哮を上げてる。
0938:名無しのバーバリアン
何言ってんだこいつwwwwwwww
0939:名無しのバーバリアン
でも写真の肉汁のテカリといい、和風オニオンソースの焦げた匂いが画面越しに伝わってきそうでヤバい……マジで食いたい……。
0940:名無しのバーバリアン
おい筋肉、頼むから料理人君にプレイヤートトレードへ出品してくれるように頼んでくれ!! 全財産出す!!
0941:筋肉のバーバリアン
おっけー、料理人君に頼んでみるわ。
0942:名無しのバーバリアン
よし言ったな! またトレード画面での壮絶な秒殺争奪戦が始まる予感しかしないぜ……!
お肉屋さんでミディアムレアのお肉頼むとついてくるペレット!
あれでジュ―ってやるのが私好きなんですよね。
お腹空いてきちゃいました(笑)




