スキル
「これより選定の儀を始めさせていただきます」
典礼係の声で式典が始まった。
ここからは宰相であるセクムト・デューケル・ラグウェル公爵が進行をしていくようだ。
長い話が続くが要約すると15歳になり、現在の所持スキルを参考にして来年16歳になっての進路を決定して欲しいとのことだ。
また優れたスキルを持つ者はガルフォード帝国領にあるアーリエル特選高等学院に国からの推薦で願書が出されるということだった。
この学院は世界中から武術・学問・魔術・美術・工学などの成績優秀者やスキルを持つ者達が集まり学ぶ場所だ。
推薦枠は各国の国力、ようは寄付金で決まっており、身分が高くても厳正な審査に通らねば入学はできないとのことなどが話されていた。
30分は過ぎただろうか、長い話に全員うんざりしてきた頃にようやく宰相が皆が待っているだろう言葉を述べた。
「これからスキルの測定を始める。呼ばれた者から前に出てこちらにあるスキルオーブに手を乗せなさい」
宰相が指さす先の台座には薄青色に輝く人の頭程もある大きな球体が鎮座していた。
また後ろの壁には白い布が大きく貼られ、映像宝珠でスキルの結果を映し出すようだ。
「レティーネス・デューケル・ハートレイン殿、前に」
意外だった。普通身分の高い順になるだろうから、当然殿下からだろうと思ったからだ。
呼ばれたレティーネス嬢も少し戸惑いチラと殿下の顔を伺いながら歩き出していた。
殿下は当然のような顔でいる。初めから知っていたようだ。
彼女は係に案内され演台に登りスキルオーブの前に立った。
促されるままおずおずと手を伸ばした。
オーブがボンヤリと光を放つ。
やがて映像宝珠からの光が彼女のスキルを壁に映し出した。
『レティーネス・デューケル・ハートレイン 15歳
戦の乙女神ヴァルキュリアスの加護(武技、士気高揚、破邪に
プラス補正)
瞬剣士 LV.01
スキル
細剣技 LV.02
受け流し LV.02
見切り LV.01
踏み込み LV.01
士気高揚 LV.01
馬術 LV.02
舞踏 LV.03
政治 LV.02
宮廷作法 LV.03
教養 LV.03
以上』
周りからおおーという声と拍手が聞こえる。
「ヴァルキュリアス様?戦の神の眷属神か!」
「加護持ちだと」
「10個もスキルがあるではないか!」
「瞬剣士!上級職だと」
「推薦は決まりですな」
「流石ハートレイン家の公爵令嬢」
などと言われている。
彼女は呆然としてたがやがて少し照れながら席に戻っていった。
正直凄いと思う。加護は普通は得られない。女性で瞬剣士で細剣技を得ているなんて。
多分家庭教師に熱心に指導を受け弛まぬ努力をされたのだろう。
「次にオスワルド・デューケル・グスタフ殿、前に」
続いて呼ばれたのは濃い青髪を短く刈り込んだ長身痩躯の男だ。
しかしただ細いだけでなく筋肉もあり、整った顔立ちに鋭い眼光はいかにも武人という感じだ。
グスタフ家は代々軍人の家系。彼の父親は確か軍務大臣ジルベルト卿。
4大公爵家の令息だが、殿下のところにはあまり近づいて来なかったと思う。
自ら意識して距離をおいていたのか、派閥の関係でそうしてきたのか分からない。
オスワルド殿が軍人のようなきびきびした動きで演台に登り、臆せずオーブに手を伸ばした。
ボンヤリ光を放ったオーブから映像宝珠から壁に文字が現れる。
『オスワルド・デューケル・グスタフ 15歳
槍の武神グルギリムの加護(槍術、打ち払い、剛力に
プラス補正)
剛槍士 LV.02
スキル
槍術 LV.03
打ち払い LV.02
剛力 LV.02
見切り LV.01
踏み込み LV.02
士気高揚 LV.01
身体強化 LV.03
馬術 LV.03
軍学 LV.02
宮廷作法 LV.01
教養 LV.01
以上』
周りから拍手と歓声が上がる。
「今度も加護が出たぞ」
「こちらは武王神の眷属神だと」
「また上級職だ。今年はスゴイ!」
「素敵ですオスワルド様」
「流石ジルベルト閣下の御令息」
とか声が上がった。
彼はいかにも軍人の家系らしいスキル構成だ。
やはり彼も公爵令息として、きっと弛まぬ努力をしてきたのだろう。
顔色一つ変えず、淡々と席に戻ってきた。
式典会場は盛り上がっていた。立て続けに加護持ち、上級職が出て、スキルも多い。
普通一般人なら1~3個、貴族でも多くて4~5個ぐらいと言われている。
それが11個だ。素直に凄いと思う。
「ルドレム・デューケル・ラグウェル殿」
今度は宰相の孫だ。4大公爵家が3人も同級とは。
栗色の髪を肩まで伸ばし体形は少しお腹が出てポッチャリしている。しかし歩き方は尊大で肩で風をきっているようだ。細い眼には自信がみなぎっていた。
演台に上がるとせっかちそうにオーブに手を伸ばした。
同じように光り、やがて壁に文字が現れた。
『ルドレム・デューケル・ラグウェル 15歳
スキル
算術 LV.02
政治 LV.03
経済 LV.02
弁舌 LV.02
教養 LV.02
宮廷作法 LV.01
以上』
まばらに拍手が起きる。
いささか気の毒だ。決して6個のスキルは少ない訳ではない。
武術系では無いが算術に政治、経済、弁舌といかにも宰相の息子らしい優秀な官僚になれる
スキル構成だ。
だが立て続けに加護持ちが出て多くのスキルを見た後だと・・・・・。
本人も悔しそうに顔をゆがめ、悄然と席に戻ってきた。
友人が何人か声を掛け励ましていた。
その後も続々と高い爵位順に呼ばれていった。
辺境伯の令息が剣術と槍術LV.02、馬術.01などがいたが、加護持ちも出ず、スキルも身体強化と貴族らしい教養やマナー、それに男なら剣術、女なら舞踏か裁縫が付いて平均4~5個前後だ。
これも爵位が下がっていく程、数が減っていった。
ちなみにメイヤ嬢は伯爵令嬢で、算術がLV.03と高く、経済、教養、マナー、舞踏、裁縫と6個持っていた。意外と優秀かも?もう1個スキルがあるんじゃない・・・誘惑とか。
などと苦笑をしていたら、ふと気付いたことがある。
もしかして殿下が先にスキルを測らなかったのはこれが分かっていたからなのかも知れない。優秀な公爵家の前後では見劣りしてしまうから、きっと最後に近習達の後に測定をするのでは無いか?
何だか小ズルイような器の小ささに溜息が出た。
子爵位まできた。女性が風魔術LV.01のスキルを得た者が出た。魔術師の適正は珍しい。大体千人に1人出るかどうかと言われている。小柄だが落ち着いた感じのする方だ。皆の賞賛に照れて席に戻ってきた。
次も女性だ。土魔術LV.01、同じ顔?どうやら双子のようだ。
姉妹で魔術師、そういう家系なのだろうか?
男爵位、農学や工学、算術など何人かスキルを得た者がいた。
高位貴族の方が公爵・侯爵家を除いて目立ったスキル持ちが少ない気がした。
やはり下級貴族の方が成り上がろうと努力をしているのだろうか?
ようやく騎士爵家だ。40名はいようか、皆緊張と期待の眼差しである。
剣術や槍術、魔闘術など戦うスキルが多いようだ。
斧術などがいた。あれはダン?聖月山にある孤児院にいたダンだ。そうか同級だったのか。
ダン・パーカーと呼ばれていた。パーカー家の養子になったのか。ダンは快活で優秀だったからパーカー家に迎えられたのであろう。
昔は遊んだことがあったな。
などと考えていたがいつまでもオレは呼ばれなかった。
あれと思っていたら近習達が呼ばれ始めた。
オレはこの枠で呼ばれるのか?
近習達のスキルはパッとしない。剣術LV.01が5人位いる程度だ。
これでダークカーズヒュドラを討伐?
本当に世の中を舐めている。
「ゴリアス・アールス・ガリグ殿」
ゴリアスか、あいつは伯爵家の出だが今呼ばれるか。これで後はオレと殿下だけだ。
自信満々という風に傲然と歩いて行く。
勿体つけるように少しゆっくりとオーブに手を置いた。
『ゴリアス・アールス・ガリグ 15歳
剛剣士 LV.01
スキル
剣術 LV.02
剛力 LV.03
踏み込み LV.01
頑健 LV.01
身体強化 LV.03
体力 LV.03
以上』
絶句した。殿下の筆頭近習でありながら宮廷作法や教養も無いのか。
だが本人はどうだと言わんばかりの顔で辺りを睥睨しオレに嘲りの表情を向けた。ある意味スゴイなコイツ。どんだけ自己評価高いんだ。
そして堂々と席に着いた。
「セイドリア・レアル・アークレイン殿」
どこか冷めた空気だったのが一気に変わった。やはり第一王子はどんなスキルを持っているのか皆興味を持っているようだ。
殿下が堂々とにこやかな笑みを浮かべながら歩いて行く。
容姿は整っているので中身を知らなければ貴公子に見えるのだろう。
式の参列者からも黄色い声が聞こえた。
演台に上がると優雅な仕草でゆったりとオーブに手を置いた。
『セイドリア・レアル・アークレイン 15歳
魔術剣士 LV.01
スキル
剣術 LV.02
受け流し LV.01
火魔術 LV.01
魔術制御 LV.01
指揮 LV.01
馬術 LV.02
士気高揚 LV.01
身体強化 LV.03
舞踏 LV.02
教養 LV.01
宮廷作法 LV.02
以上』
おおという声が上がった。
「流石殿下」
「魔術剣士とは珍しい上級職」
「11のスキルよ、ご立派です」
など多くの賛辞が述べられている。
殿下は何でも無い顔で優雅に席に戻って来る。
確かに魔術剣士というのはスゴイと思った。魔術師が千人に1人なら、魔術剣士は一万人に1人かもしれない。
着席する直前にオレの方を見やってニヤリと下卑た笑みを漏らした。
なるほど自分と比べさせるということか。
「リョーマ・マークス殿」
まさか最後を飾るとは。
周りも殿下で最後だと思ったのだろう意外な顔をする者、終わった気でいる者や魔術剣士について語る者などでほとんど注目されていなかった。
オレは気にせず淡々と演台に上がりオーブに手を伸ばした。
オーブが今までに無いような強い光を一瞬だけ放ったように見えた。
『リョーマ・マークス 15歳
月の女神アルテミアの寵愛
(銀眼【瞬身、見切り、看破、状態異常防御、魔力制御、魅了にプラス補正】
月詠【身体能力向上、踏み込み、魔力向上、並列思考、生命力回復・魔力回復にプラス補正、魔導増幅】)
************
聖導師(月詠の導師) LV.01
瞬刀士 LV.03
スキル
刀術 LV.03
月瞬( 瞬身 LV.03 見切り LV.03・踏み込み LV.03が統合) LV.01
闇魔導 LV.02
光魔導 LV.01
状態異常防御 LV.04
魔導制御 LV.02
魅了 LV.03
身体能力向上 LV.05
魔力向上 LV.02
並列思考 LV.02
魔力回復(小)LV.02
体力回復(小)LV.02
騎射 LV.01
騎乗 LV.01
教養 LV.02
宮廷作法 LV.01
以上』
辺りが静まり返った。そしてどよめき。
「何だあのスキルの数は16いや統合されているとある18か」
「月の女神アルテミア様だと12柱の主神の1人じゃないか!」
「寵愛だと加護より上ということか」
「銀眼に月詠?なんだあの内容は!」
「文字が読めん、********とはなんだ?」
「それより聖導師だと、あの伝説の月詠の導師か?」
「信じられん、聖導師。真の勇者を選び導く者が!」
「この何年か八聖山に聖導師が新たに覚醒していると聞く。この国にも誕生するとは!本当にめでたい」
「英雄の誕生じゃないか!」
「だが聖導師が覚醒しているということは魔王軍の侵攻が本格的になるのか?」
「来年は我が国も派兵の約定があったのではないか?」
など騒がれている。
一同が唖然とする中、オレはこの事実を噛みしめていた。
ようやくだ!ずっと願っていた。
聖月山で育ち伝説のことを書物で読んで知っていた。
ずっと憧れていた。聖導師になりたい。伝説の月詠の導師になりたいと。
この力があればフェリ様の呪いを解く方法をきっと見つけられる。
オレはそう思った。
「素晴らしい!このベルレイト王国に英雄が誕生した。聖導師、月詠の導師。真の勇者を選び導く者。皆拍手を!」
宰相の声が響くと割れんばかりの拍手が響いた。
歓声が重なる。
オレは急に恥ずかしくなり、貴族の礼をして席に戻った。
途中様々な人々から賞賛を送られた。
にらみつけている殿下や近習達を除いては。
お読みいただきありがとうございました。
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よろしくお願いいたします。




