余興という名の私刑
やがて式典が終わった。
するとオレの周りに人が集まって来た。
賛辞を送り、まるで昔からの旧友のように肩を組もうとする者まで現れていた。
若干困惑していると、レティーネス嬢から声を掛けられた。
「リョーマ様おめでとうございます。まさか聖導師様になられるなんて!」
両手を組んで眼を輝かせて喜んでくれている。
「ありがとうございます。レティーネス嬢も上級職、瞬剣士おめでとうございます」
「ありがとうございます。でもリョーマ様に比べたら・・・・。」
「そのようなことはございません。きっと弛まぬ努力をなさったからだと思います」
「それはリョーマ様も同じことでございますわ」
などと言っているとメイヤ嬢が上気した顔で抱きついてきた。
「リョーマ様スゴイです!・・・・・私は・・・・・」
いや近いですってメイヤ嬢などと思っていると声がかかった。
「おいリョーマ!」
殿下とゴリアスと近習達だ。
「いや素晴らしいよ、聖導師だってスゴイではないか」
殿下が芝居かかった声で言った。
「どうだろうリョーマ、この後のパーティーまで時間がある。これから余興として皆で試合をしようと思う。お前も参加してその力を見せたらどうだろう?皆どうだ!」
一同を見渡しそう叫んだ。
「おおそれは良い」
「是非リョーマ様の雄姿を見たいですわ」
などと賛同の声が上がる。
「どうだ?」
と問われたので首肯する。
「承知しました。してどのような形式で試合を行うのですか?」
オレは予想がついていたがあえて尋ねた。
「1人ずつで戦う時間も無いし、武術系スキルを持つ者のフリーバトルで良いのではないか?
余興だ、皆も我こそはと思うのは是非参加してくれ!」
やはりそうなるかと思った。
「承知しました」
そう応えるとジャケットを脱いだ。なぜか嬉しそうにメイヤ嬢が受け取る。
オレはメイヤ嬢にどうかされてしまうのであろうか?
この後の試合よりそっちの方が心配になってきた。
近習達の手配で会場が広く開けられ、刃を潰した剣や刀、槍など稽古用の武器が運ばれてくる。
良さげな刀を取り、軽く振って様子を確かめた。
そんな風に待っていると声が掛けられた。
「貴公、リョーマ殿」
それはオスワルド・デューケル・グスタフ殿だった。
「これはオスワルド殿、いかがいたしましたか?」
「先程、殿下の近習達に声を掛けられた。試合が始まったら全員でリョーマ殿を集中して潰そうということだった」
オレは軽く首肯した。
「ええ予想通りですね」
「そうか気付いていたのか、これでは余興という名の私刑だ。私は貴公にお味方しよう、こう見えて槍にはいささか自信がある」
そういうと槍を軽く振るい、小脇に差し込んだ。
「御助力の申し出ありがとうございます。ですが心配は無用です。いささか考えがございます。どうか離れた所で見守っていただけませんか?」
オレはそう言うと軽く頭を下げた。
「そうか・・・。いやそう言われるなら静観しよう。殿下達がまたくだらんことをするのなら、私が今度こそ正そうと思ったのだ」
ああこの方は討伐が失敗したことも知っているのだと思った。
「本当にお申し出ありがとうございます。その上でオスワルド殿にお願いしたいことがございます」
オレは眼を見つめながら言った。
「ふむ何であろう?」
「これから思い上がった殿下達の行いを正します。殿下の出方によっては国中を巻き込む大きな災禍になるかもしれません」
「ではあの件を公にするのですな?」
オレは首肯する。
「どうか見守って下さい。このままあの殿下が国王になるなど正気ではありません。命を取ることはしませんが・・・・・」
オスワルド殿は静かにオレを見つめている。やがて
「わかった。リョーマ殿を信じよう」
そう言ってオスワルド殿が微笑まれた。
「オスワルド殿ありがとうございます」
「いや礼には及ばぬ。本来なら公爵家の我々が正すべきだったのだ。すまない」
そう言って頭を下げられると重ねて言った。
「それと私のことはオスルと呼んでくれ」
手を差し伸べてきた。
「私のこともリョーマと呼んでください」
がっちり握手をした。
友と呼べる人ができたのかな。
嬉しいと素直に思う。
「リョーマ様、私も参加します。殿下達が結託してリョーマ様1人を襲うに
決まってます」
悲壮な顔をしたレティーネス嬢が言った。
「ありがとうございます。ですがご心配には及びません。美しく着飾られているレティーネス嬢の手を汚させるわけには参りません。私に考えがございます」
「ですが・・・・・」
「レティーネス嬢」
オスルが声を掛けた。
「私も先程助力を申し出たが断られた。リョーマには考えがあるらしい。見守ってくれと言われた。
どうであろうリョーマを信じてみないか?」
「オスワルド様・・・・・分かりましたわ」
オレはレティーネス嬢に頭を下げた。
「婚約者であるレティーネス嬢には御不快かも知れませんが・・・・・」
「いいえ、私はリョーマ様の行いの方が信じられる気がします・・・・・」
そう言って瞳を伏せた後、顔を上げると。
「お二人共、私のことはレティーと呼んでくださいまし」
ニッコリと微笑まれた。
オレ達はお互いを呼び合い笑いあった。
「もうズルイですわ!私もメイヤとお呼びくださいまし!」
当然のように加わる人がいた。
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