対決 リョーマ VS 王子連合
準備が整ったようだ。城壁を背に広々とした場所が空けられている。
参加者は30名程か、殿下と近習で10名にオスル他18名とオレだ。
殿下達は集まりニヤニヤしている。
オスル以外どう動くかだが、まあ大半は殿下達と迎合するかもしれない。
だが問題は無い。
「では私が審判を努めさせていただく、殿下の剣術指南役、ベルレイト王国国選勇者ロドリゲス・アウルス・ロクナー伯爵である。皆準備は良いか」
そう言うと参加者をぐるっと睥睨するとオレを見てニヤリと笑った。
国選勇者ということできらびやかな鎧に勲章を付けていた。
この人には稽古と称して罵倒され散々に打ち据えられたものだ。
「ではバトルロイヤル形式だ。意識を失うか参ったと宣言して武器を捨て膝を付いた者は負けとみなす。まさかそんな腰抜けはいないと思うが・・・」
オレを見てまたいやらしい笑みを浮かべた。
「最後に立っている者が勝者だ。では始め!」
叫ぶとロドリゲス伯はするすると後ろに下がった。
観客からは声援が飛んだ。
同時に殿下とゴリアス以外の近習達8名と見知らぬ参加者の内5名ががオレに殺到してきた。
しかし見知らぬ参加者の2名はオスルの槍に打ち据えられ悲鳴を上げ倒れ伏した。加勢してくれたようだ。
オレは滑るように前に踏み出すと、ニヤニヤとしている近習3人に間合いを一気に詰めると驚愕している間に1人のこめかみ、2人目の首筋と打ち、3人目の切り下ろしを右脚を引いて余裕を持って躱して間合いを詰めたまま刀の柄元で盆の首を強打して3人を沈めた。
それに動揺して脚を止めた近習達の2人に勢いのまま殺到すると、首筋を打ち剣を突き出してきたので小手を打ちすれ違いざまに左肘で顎を打ち抜き2人の意識を刈り取った。
ここまでで10秒余り。
周りはシンと静まっていたがやがて大きな歓声が上がった。オレの快進撃に声援を送る者、倒れた者を詰る者、数人掛かりでオレを襲う姿に憤る者様々だ。
レティーやメイヤの歓声もよく聞こえる。レティーは心配そうに手を組み、メイヤは拳を突き出して
「いっけー!」とか叫んでいた。こっちが地かな?
などと思っていると見知らぬ参加者3名がオレを取り囲んだ。2人は槍だ。
「しゃあー!」
などと叫びながら前方から槍が突き出され、後方からは剣を振り上げ襲い掛かる。
オレは前方に飛び込み、刀で槍の付きを受け流し柄を滑らすように刃を走らせ半回転しこめかみを打つ。その身体を左手で掴み殺到する剣士にぶつけ、もつれたところで首筋を打った。出遅れた槍を持った男は呆然と立っていた。
オレが一歩踏み出すと怯えた顔をし、槍を放し膝を付き「参った」と叫んだ。
周りから歓声と罵声が響く。
これで8人。
「おまえら来い!」
と叫んで残りの3名の近習を引き連れたゴリアスが鬼の形相で迫ってきた。
ゴリアスは堂々とした体躯で肩からぶつかる様に押し出し叫んだ。
「ソードバースト!」
これは剛剣士のソードスキル、体当たりと共に剣を横なぎに払い切る豪快な剣技だ。当たれば相当なダメージだろう。
当たればだ。
オレは身を屈めるように沈み込み、向こう脛を強かに打ち据え転ばせると身を翻し残り3人を眼で牽制した。
明らかに怯えた顔で立ち止まる。
「クソがぁーッ!」
分かりやすく叫びながらゴリアスが切り下ろしてきた。
オレはあえて受けることにした。
ガキーンと派手な音がして鍔ぜり合う。
「くたばれやーッ!」
剛力でグイグイ押してくる。流石にスゴイ力だ。
それを左脚を引き、受け流すように身体を半回転して後頭部に加減をしながら打ち据える。コイツの頑丈さなら死ぬことはないだろう。
ゴリアスを沈め、改めて近習3人に殺到する。
立ちすくむ2人の首筋に刀を叩きこみ、1人の喉元に刀を突きつけると
「参った」と叫び剣を捨て膝を着いた。
残りは一般参加者7名程と殿下とオスルのみ、他の参加者はオスルに打たれたのだろう。
オレはあえて殿下以外を倒すべく、7名の方へゆっくりと歩を進めた。
明らかに怯えて引きつった顔をしている。
「ま、参った・・・」
1人が剣を捨て、膝を付いた。それを見た5人も次々とそれに倣う。
残った1人は戸惑いながらも去勢を張る様に剣を大上段に構えた。
オレは一気に間合いを詰め、まさに打とうとする寸前にその男は剣を捨て、地面に這いつくばった。
「ごめんなさい、降参です!」
オレはバランスを崩しそうだったが何とかこらえた。
これでいよいよ・・・・・。
刀を八双に構え、殿下の目をジッと見つめた。
殿下は明らかに怯え、引きつった笑みを浮かべていた。
オスルの方をチラチラ見ているが、自分に味方しないと分かったのかこちらを睨みつけてきた。
オレはゆっくりとした歩みからすり脚に変え間合いを詰める。
観念したのか、殿下が上段に構えたまま突っ込んできた。
「覚悟しろーー!」
オレはその場に脚を止めその剣を払った。
付き、切り下ろし、逆袈裟、付き、切り上げと連続して攻撃をするがオレはすべて払い、受け流した。
だが徐々に攻撃が緩慢になり、肩を大きく上下させ息を切らして立ち止まっていた。
剣技云々の前に体力が無さすぎる、仮にも勇者を目指しているなら鍛錬不足だ。
「もう終わりですか?」
「ハア・・・ハア・・・・・黙れ・・・・ハア・・ハア・・・」
そう言うとオレを睨みながらゆっくり後退し始めた。
なぜ歩く?オレが殿下を倒す気なら、とっくに間合いを詰めて打ち倒している。
やがて立ち止まると。
「私は・・・魔術剣士だ!」
そう言うと刃引きした練習剣を捨て、腰の剣を抜き放ち手をかざし詠唱を始めた。
「レイム・ファイア・クラーダ・レオーロ・炎よ我が剣に宿り敵を滅ぼす刃となれ」
すると殿下の剣身が赤く輝き炎をまとった。柄に埋まった魔石のような赤い宝石も光輝いている。あれは国宝のミスリル製の魔剣だ。
殿下が突っ込んできて剣を振り下ろし連続で攻撃をしてくる。
1合2合と刀で受け流すが炎の熱が腕を焼く。
「くっ!」
流石に熱い。
「さっきまでの余裕はどうした?防戦一方ではないか!」
この練習用の刀では損傷も激しい。
腰の刀を抜くか?いやこのままいこう、真剣に変えたら殺しかねない。
するとラザンの声が響いた。
「若、刀身に魔力を込められよ!月詠の導師なら闇魔導をまとえるはずじゃ!」
そうか!オレは聖導師だ。月詠の導師だ!
できるはず。
オレは後方に飛び間合いを空けると刀身に手をかざした。闇が刀身を覆うイメージをする。
「無駄だ、詠唱などさせんぞ!」
殿下が猛然と突っ込んでくる。
だが
「闇刃」
オレがそう唱えると、刀身が黒く闇をまとった。
殿下の切り下ろしを大きく跳ね上げ、上体を崩した体を蹴り飛ばす。
剣を握ったまま激しく転倒した。
「クソっ!無詠唱だと?」
オレは刀を八双に構えた。
「そうだ。聖導師の術は魔術ではない。詠唱など必要としない魔導だ」
オレはかつて聖月山の書架で読みふけった内容を反芻する。
聖導師はイメージを具現化する。世にいる魔術師とはそもそもの体系が違うのだ。
周りからもオオーなどの歓声が聞こえてくる。
「だから何だ!そんな物より私の炎の方が上だ!」
そう言うと剣を何度も叩きつけてきた。
オレは冷静に受け流しながら何度か殿下の剣の魔石に刃を当てていった。
バリンという音がし魔石が砕ける。
炎が弱まっていく。
一気に間合いを詰めて手首を打ち、剣身に刀を絡ませるように跳ね上げ殿下の手から魔剣を飛ばした。
「ギャア!」
手首を押さえ悲鳴を上げた。
喉元に刃を突きつける。
「殿下にお尋ねする。なぜ周辺国合同討伐を無視してダークカーズヒュドラに挑んだのです?その程度の腕で勝てるとお思いか」
手首を押さえながら睨みつけてきた。
「思ったさ!倒せなかったのは連れていった一般兵が惰弱だったからだ!」
周りが騒いでいる。
「ダークカーズヒュドラ?」
「厄災級の魔物ではないか」
「我が国だけで単独討伐?」
「無謀だ!誰も止めなかったのか」
「惰弱はどちらか!聞いたところによると、殿下と近習達は始めの咆哮だけで腰を抜かしたと聞きました。そんなあなたたちを逃がすために多くの兵が犠牲になったと。あなたはその兵達に詫びをしたのですか?」
「なぜ王族の私が一般兵ごときに詫びるというのだ!私や高位貴族の子弟の集まりである近習達を守るのは勤めであろうが!」
まったく悪びれずに叫んでいた。
周りもシンとしている。
「あなたがたは呪いを受け城に戻り、自分達だけ助かるために無理だと言う第三王妃であるハーディア王妃に無理やり解呪をさせて死なせた。
そして無理やり手伝わせたフェリネシア殿下が、他に呪いを暴走させない為に自ら犠牲になり半身に醜い呪いを受けられた。これに対して悪いとは思っていないのですか?謝罪はしたのですか?」
「するかそんな物!解呪が上手くできないのも未熟だからだろうが!」
怒りでこの刀を喉に突き刺したくなるのをグッとこらえる。
「苦しみぬいて亡くなられたハーディア王妃の亡骸を、弔いもせずなぜ勇星教団に渡した?あまつさえあなた方を救って代わりに呪いを受けたフェリネシア殿下をも生きたまま教団に渡そうとした。なぜだ!なぜそこまで教団に媚びる?」
「決まっておろう!私が教団認定勇者になるためだ!そうすればこの国はもっと上位の国になれる。私ならやれる!」
周りから
「馬鹿な、そんなことが・・・」
「非道すぎ」
「ハーディア様が殿下のせいで亡くなられただと・・・」
「フェリネシア殿下はご無事なのか」?
などの声が聞こえた。
その時だ突然後ろから殺気が迫るのを感じた。
「フンっ!・・・・死ね」
ロドリゲス伯がオレに袈裟懸けの豪快な斬撃を繰り出した。
振り向きながら刀で受け流し後方に飛び退った。
「しゃべりすぎだ小僧。騎士爵家風情の小せがれが聖導師だか何だか知らんが調子に乗るな!」
剣を肩に担ぐと殿下を庇うように前に立ち塞がった。
「試合中では?」
オレは努めて冷静な声音で返した。
「そんなものは終わりだ。殿下への無礼の数々、見過ごすわけにはいかん」
ニヤリと嫌らしい笑みを浮かべた。




