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呪い姫を抱きしめたら月詠の導師に覚醒したので、王子を〆て姫を救う旅に出ます  作者: 輪三


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月詠の導師、覚醒と決意

失礼しますとだけ告げ恐る恐る部屋に入った。

するとソファーの席、テーブルをはさんで奥にはこちらからは見えないように薄い布が天井から垂らされその奥にフェリ様が座っているようだった。

こちら側にアヤメとフェリ様達の侍女で犬人族獣人のコレットもいた。


「リョーマお久しぶりですね。身体は大丈夫ですか?ひどいケガと肺炎と聞きましたが?」


変わらないフェリ様の声がした。


「私は大丈夫ですよ。・・・・・」


ダメだ、言葉が続かない。話したいこと聞きたいことがいっぱいあるのに。


「最後にあったのはいつでしょうか?1年前でしょうか?」


「そうですね、その位だと思います・・・・・」


「・・・・・」


無言だった。きっと布の向こう側ではかなげに微笑んでいるんだろうと思う。

フェリ様は耐えている。

全て飲み込んで自分だけで消化しようとしている。

昔からそうだ。

決して愚痴や文句など言わない。

そういう人だ。


でもこのままじゃダメだ。


呪いは心をもしばみ、弱り切ったところで身体をむしばんでいくと聖月山の書架しょかで読んだ記憶がある。

このままでは呪いに飲み込まれてしまう。

生きる希望を与えないとフェリ様が死んでしまう。


絶対にイヤだ!


オレはふところからタオルを出し、細長く折りたたみ頭で結ぶ。


「フェリ様、目隠しをしました。そちらに行きますね」


「えっ、ダメですリョーマ!待って・・・・・もしかしたら移る可能性だって・・・・・・お世話をするコレットは呪いを防ぐ聖衣を着てるから大丈夫であって・・・・・」


オレは構わずフェリ様に近づく。

ダメとかリョーマ様いけませんとかみんなも騒いでいる。

フェリ様が後ずさる気配がする。

オレはフェリ様の手を握った。


「イヤ、ダメです。お願いやめて!リョーマに呪いが移ったりしたら私は生きていけない・・・・・」


構わず手を握りながら優しく背中を抱きしめた。


「あっ・・・・・ダメです。お願い離れて・・・・・」


オレの腕の中で身をよじった。


「フェリ様大丈夫です。もし移ったなら、それでも構いません」


オレは優しく言い、抱きしめる手に力を込めた。

懐かしい髪の匂い、大きくて柔らかい胸の感触、心細げな肩。

愛しさが胸に込み上げてくる。

オレはこの人が好きだ。

フェリ様の為なら、たとえ呪われても・・・・・


「お願いリョーマ・・・・・ダメです・・・・ハっ・・・・!」


その時だ、オレとフェリ様から光があふれ出した。


オレは突然どこか真っ白な空間に飛ばされた。

ここはどこだ?

空の上?

浮いている?

すると突然頭の中に、まるで鈴が鳴るような美しい声が響いた。


『ようやく見つけました。あなたにします』


神々しく光る、長い銀髪の女性が浮いていた。

顔はよく見えない、だが微笑んだのが分かった。

女性が飛んでくる。

両腕を伸ばし頭を抱かれた。

そして右目にキスをされた。


「リョーマ・・・・・?」


目の前にはフェリ様がいた、元に戻った?


「エっ・・・・リョーマ右目が銀色に・・・・」


「リョーマ君何があったの?あれっ・・・・・髪の色が一房銀色

になっているよどういうこと?」


ラナー姉様が驚愕きょうがくしている。

何があった?さっきのは一体・・・・・?


「え・・・・何が?」


「コレット手鏡を」


フェリ様がそう言うと、慌ててコレットが鏡を持ってきた。

受け取り見てみる。


「右目が銀色に・・・・。髪もここだけ銀だ・・・・・!」


オレ聖月山の書架にあった本を思い出す。

この特徴は・・・・・・。


「月詠の導師・・・・・・」


考えず言葉が出た。頭が真っ白になる。

本当に?


「えっ⁉」という皆の驚愕きょうがくの声が聞こえる。


「・・・・・覚醒したの?月詠の導師様に!」


「えっ・・・・・本当に?・・・・・でも・・・・・どうして・・・・・」


フェリ様の戸惑う声が逆にオレを冷静にした。


「まだ絶対ではありません。ですが心当たりはあります。眼と髪

の色、知っている特徴の通りです。

そしてこれなら呪いなどの状態異常が効かないということも」


月詠の導師は状態異常は効かない!

そして感じた、今のフェリ様の呪いの状態が。


「フェリ様、身近に接して分かったのですが、今の状態、呪いは完全に定着して人に移らないのではないでしょうか?」


フェリ様がオレに身体を預けたまま見つめているのが分かった。


「はい、そんな気はしていました。ただ確信が持てず怖くて・・・・・・

それにしてもリョーマどうして突然こんなことをしたのです。

もし呪いが移ったらどうする気だったのですか!」


フェリ様がとがめる口調で言った。


「いきなりこんなことをしてごめんなさい。でもこうしなきゃ

いけないと思ったのです。フェリ様が遠くに行ってしまいそう

だったので・・・・」


オレは少し震えているフェリ様を強く抱き締めた。

するとフェリ様も、おずおずと抱き締め返してくる。


「あぁリョーマ・・・・・ありがとう・・・・・嬉しいです」


どれくらいだろう抱き締め続けた。震えも収まっていてお互いの

体温が心地良く感じられた。


もう少しだ。

心を開かせないと。


「フェリ様」


「・・・・・なぁに・・・・リョーマ・・・・・」


「全て話してくれませんか?何があってどう思ったか。どうしたいかを」


「・・・・・・・・」


「ここにいるのは、みんなフェリ様を心から愛し支えたいと

思っている味方です。何があっても裏切ることはありません。

普段フェリ様は決して悪口を言ったり、嫌なことも心に押し殺し

耐えるのを知っています。でも今はそれじゃダメなんです。

フェリ様の心を軽くしないとダメなんです。

お願いです、全て心の内を話してください」


フェリ様の身体が強張るのを感じた。

戸惑っている。

当然だと思う。

でも内に籠らせてはいけない。


「フェリ様・・・・・そのオレは・・・・・フェリ様が好きで

す!小さい頃からずっと・・・・・いつも優しくて頭も良くて

綺麗で・・・・憧れていました」


オレはつっかえつっかえ言うと更に力を込めて抱き締めた。

フェリ様が驚いているのが分かる。

正直恥ずかしい。

でもちゃんと伝えなきゃと思った。

こうしなきゃいけないと思ったんだ。


「そんなフェリ様がこのままじゃ消えてしまいそうだったから・・・・・」


しばらくの沈黙。


「フェリ様泣いて良いのですよ。もう我慢しないで下さい」


そう言って抱き締め続けると。


「・・・・・リョーマ・・・・・私ね・・・・私ね・・・・・」


フェリ様が泣き出した。子供のように大きな声を上げて泣き出した。

今まで我慢して胸に溜めていたものを全て吐き出すように。

髪を優しく撫で、手の平で背中をゆっくりと摩るように撫でていく。

しゃくり上げ長い時間泣いていた。

どれくらいたったであろうか、ポツポツとあの日の出来事を話しだした。

それは知っていることもあったし知らない事実もあった。


父上から聞いた通り急に呼び出され、解呪に参加するように強要されたこと。

他の苦しんでいる兵は捨て置かれ、殿下と近習達のみ解呪を命じられたこと。

お母上のハーディア様が反対したが殿下の他に第一王妃が声高に命じてきたこ

と。解呪に成功したが、厄災級の呪いは強力で御しえなかったこと。


暴走する呪いが部屋中に拡散しそうになりハーディア様が全て自

身で受け入れようとしたこと。

耐えられず苦しみながら死んでいったこと。まだ収まりきれず、

あふれだしこのまま他の人に移れば増幅してしまう、

治癒魔術の心得がある自分なら制御がある程度できると思い、

呪いを自ら受け止めたこと。

痛みと黒々とした怨念で気が狂いそうなったこと。


後悔したこと。

それでもこれで良かったと思うことにしたこと。


「一番にその・・・・・リョーマの顔が浮かびました。悲しそう

な顔が。その後ここにいるみんなの顔が浮かびました。マリアの

泣き顔がラナーの怒った顔が、アヤメの祈るような顔が、

コレットの不安そうな顔が・・・・。お母さまの苦しむ顔が・・・・・」


一緒に聞いているマリアが大きな泣き声を上げた。

ラナー姉さまも何かに耐えるようなうめき声を上げている。

その後意識を失っていたこと、部屋に運ばれて放置されたこと。

時間が経ち部屋に人が入ってきて、意識が切れ切れになりながら殿下の声がして言ったことに心からの怒りと絶望を感じたこと。


「おい勇星教団の司祭、役立たずの死んだ女は連れていったな。また呪われたらかなわん。そうだこの死にかけの呪い姫も一緒に連れて行くか?若いし使い道はあ

るだろう・・・・・」


場が凍り付いた。姉上の「クソ王子ふざけんな!」という声とマリアの更なる

泣き声。見渡すとアヤメもコレットも絶句している。


オレは・・・・・オレは・・・・・

冷たい怒りが全身を駆け巡っていた。

初めて殿下・・・・・いやセイドリア・レアル・アークレインを憎いと思った。

今まで色々なことをされたが、憎いとまで思ったことは無かった。


許せない・・・・・。


同時に止めきれなかった自分自身に悔悟かいごと情けなさで唇を噛んだ。

怒りでオレの身体が震えた。

するとフェリ様がオレの顔を胸に抱き締めた。


「私ねあの場にリョーマがいなくて、もしかしたら大ケガをしたり、死んでしまったのでは無いかと思い怖くて仕方なかったの。でも直前で近習をくびになったと聞いて本当に心から良かったと思ったのよ」


オレは絶句した。自分自身が大変な時にオレのことを思ってくれたなんて。


「フェリ様お聞きになったかもしれませんが、今聖月山にはこれほどの呪いを解呪できる者はいません。ですが父上が各聖山に問い合わせています」


「リョーマ・・・あのね・・・・・この呪いはもう解けない気がします。

解呪するなら始めの一回目で成功させなければいけないのです。しかし失敗しそれをお母様が皆を守るために自らの身体で中和しようとしましたが受け止めきれずお母様の魔力共々私が受けました」


オレは言葉を失い聞くことしかできない。


「幸いお母様ががんばってくれたので、受け止められ、私の魔力と馴染なじませて中和している状態です。今は痛みなどはありません。すぐに呪いの所為で死ぬことも無いと思っています。ただ半身が醜くただれているだけです」


言葉が出ない。

何で解呪できない。

何でフェリ様がこんな目に合うんだ。

女性にとって、いや人として半身が醜くただれているなんてどんなにつらく苦しいのだろうか。

それでも言わなくちゃ。

オレがやらなくてはいけない。


「フェリ様。オレが必ず解呪できる方法を見つけます」


「リョーマ・・・・・」


「必ずです。必ず治します」


オレはフェリ様の肩を掴んだ。


「週末に選定の儀があります。そこでオレのスキルが分かりま

す。今はっきりとは言えませんが、思っているとおりなら月の

女神アルテミア様の加護を得て月詠の導師になっているはずです。

儀式の後に他の聖山にオレが行って探します。世界中にある聖山

を巡れば必ず見つかるはずです」


肩をつかむ手に力を込めた。


「フェリ様、オレはあなたをお救いします。信じて下さい!」


フェリ様は無言だった。じっと見つめているのだと思う。

やがてすすり泣く声が聞こえた。

胸に抱きついてきた。

オレも強く抱き締めた。


「リョーマ・・・・・ありがとう・・・・・信じます・・・・・

私の・・きなリョーマ」


最後は何て言ったかは聞こえなかった?

すると拍手する音がした。


「リョーマ君よく言った!カッコ良かったよ。そうだよフェリ様絶対見つかるよ。

私も側にいるし支えるよ。それに聖月山の座主ざすであるお父様も探してくれているもの」


ラナー姉さまが力強く言った。


「姉さま、私もいるよ。今度勇星教団が来たら私が守る!絶対奪わせない」


マリアが拳を握りしめて決意を固めている。アイツは聖月山の

僧闘師モンクから魔闘術を学んでいて相当強い。オレも素手では勝てないだろう。


アヤメやコレットも声を上げ励ましている。


「みんなありがとう。私には心強い家族がこんなにもいるのですね」


涙声のフェリ様が笑みの含んだ声音で言った。

そして。


「リョーマ少しだけ待っていてください」


そう言うとフェリ様はコレットと声を掛け、ひかえの間だろうか扉に入る音がした。

お読みいただきありがとうございました。

少しでも面白いと思われましたら、ポイントや

リアクションをいただけましたら、励みになります。

よろしくお願いいたします。

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