賊
皆がポカンとした顔をしている。
「えーっと・・・つまりラナー姉は転移に失敗して、代わりにルバルス様が
来ちゃったてことなのよね」
マリアの言葉に皆が苦笑いを浮かべた。
「あー何かスマンのぉ・・・・」
ルバルス様が頬を掻いている。
フェリ様がオレをチラっと見てから口を開いた。
「いえ、そのルバルス様は聖月山から離れて、我々と行動することは問題は
無いのでしょうか?」
「うむ、まあ特に聖月山で役目をおっていたのでは無いのでなぁ。
聖雷山に行くのも悪くは無いのぉ」
きっと残されて泣き叫んでいる姉様が容易に想像できたが、オレは気持ちを
切り替えることにした。
ラナー姉様お元気で・・・・・。
「まあこうなったら仕方無いですよね。ルバルス様よろしくお願いします。」
「そうじゃなリョーマ、皆もスマンが頼むぞ」
「それにしても・・・ここは一体?」
オレは辺りを見渡す。
小高い丘の上という感じだろうか、白く風化した巨岩が大地に
埋もれるように点在している。
「この感じは遺跡でしょうか?」
アヤメがしゃがみ込んで、巨岩に触れながらつぶやいた。
「天翔石が転移できる場所は龍脈が流れる場所と言っていたから、そうかも
しれないね」
と返事をしていたら、悲鳴が聞こえた。
「ウワァ・・誰か・・・助け・・・・て・・誰か・・・」
声変わりが済んでいないような若い男の声だ。
丘の下から聞こえる、割と近い。
「ヘヘ、おいもっと早く走らねえと追いついちゃうぞ!」
「ほらほら」
などと、はやし立てるような野太い声と笑い声が響いた。
「アヤメ!」
鋭く小さくつぶやく。
「承知」
短く答え、アヤメが崖になっている端に行き、しゃがみ覗きこんだ。
ハンドサインで敵9名と示し、その後1名とだけ示した。
これは恐らく悲鳴を上げた若い男のことだろう。
アヤメが戻ってくる。
「この丘の5m位下が山道になっています。盗賊か山賊のようです。
12~3歳位の男を追っていますが、笑いながらいたぶる様に追いつめて
いる感じです」
オレはチラっとフェリ様を見る。
「リョーマ、もし可能なら助けてあげて・・・・」
まぁフェリ様ならそう言うと思った。
「わかりました」
オレは崖に寄り下を覗くと、戻って指示を出す。
「アヤメは賊の背後に回り退路を断てる位置で待機。敵の数が減り逃げだした
ら応戦しろ。ルバルス様は中程に突っ込んで倒してください。オレはあの男の子の
前に出て守りながら倒します。マリアはフェリ様とコレットを守ってくれ。あと上から見てて不足の事態になったら叫んで知らせてくれ」
皆が了承を告げる中、ルバルス様が手を上げた。
「リョーマ、賊は必ず殺すべきだ。もし逃げられても奴らはまた同じことをする。
捕虜にしようにも土地勘が無く、引き渡せるか分からぬ」
その通りだ。
「わかりました。ただ1人だけ尋問のために気絶させます」
「うむ、リョーマに任せよう」
「ではアヤメが潜伏したら行動を開始します」
アヤメが大きく回り込むように死角から崖を下った。
「ルバルス様」
「うむ、ワシが先に行って注意を引き付ける」
言うが早いか、崖を下り降りながら戦斧で敵の1人を斬り倒した。
すぐに二人目の首をはねる。
オレは『月瞬』で男の子に迫ろうとした男の頸動脈を切り裂いた。
派手に血が噴き出す。
「な・・・」
言わせる前に次の男の首をはねる。
「何だてめえは!」
叫んで新月刀を斬り下げてくる男の腕を斬り上げ、喉を突いた。
これで3人。
少し年嵩の男に肉薄して、峰を返して首を強打して意識を刈り取った。
ルバルス様も4人倒したようだ。
残った1人が踵を返し逃げ出す。
そこへアヤメの苦無が飛び、腹に刺さった。
素早く駆け寄り、とどめを刺す。
これで全員だな。
男の子を見ると、足首の辺りと腿と肩から血を流していた。
大きく目を見開いて怯えている。
「大丈夫、味方だ他に怪我は?」
よく見るとコレットと同じ犬耳で獣人族だった。
「・・・アっ・・うん大丈夫。そのありがとう・・・・」
そう言うとこちらを見てハっとしてしがみついて叫んだ。
「お願いだよ冒険者様。巫女様と姉ちゃん達を助けて!」




