旅立ち (登場人物紹介②)
_______ラザン視点________
「どうしたジジイ、そんなものか!」
何度めになる斬撃をいなしながら、小さな溜息が出た。
この男の攻撃のパターンは5種類のようだ。
今は4パターン目の袈裟切り、逆袈裟、突きが2回に上段斬りに
横なぎだ。この後は1パターンか5パターンに以降する。
「オラオラ『鬼神斬りのラザン』と聞いたが期待外れだな!」
よくしゃべる男だな・・・。
まぁ体力だけは合格ラインじゃな、それがこの男への評価の全てだ。
さてワシがこの5パターン剣士を斬らずにいなしているのは、先程
テンタクルススライムを召喚した門使いを斬るためだ。
門使い、めったにいるものでは無い。独自異能の
部類になる。もしくはあの家の一族?
ワシも過去1回だけ戦ってことがある。
空間を操り、自分や仲間を門を使っての短距離移動が可能になる。
潜入する為のスキルとしては有効であり、こちらとしては脅威だ。
そのうえ別空間からだろうか、テンタクルススライムを召喚した。
何としても斬っておきたい。
普通に相対しても門使いは逃げ隠れするだけじゃ。
だからこのアホを斬らずに隙を伺っている。
その時だ、若達の方から魔力の流れと冷気を感じた。
「ブリーズスピア!」
ラナー様じゃろう、果たして?
「はん、あの程度の中位の氷冷魔術じゃあアレは倒せねえよ!」
5パターン男が吠える。
ううむ確かに威力がちと足りぬか・・・・。
「今度はこれだ!ピアッシングソード7連」
ソードスキルの突きか。
「スラッシュソード!」
斬り下ろしスキル。
・・・・・単純なスキルの連続発動。ワシの一番軽蔑する戦い方じゃなぁ。
弱い敵なら有効だが、格上にはスキル発動直後の僅かな硬直が隙となる。
だからワシは基本使わないし、若を始め弟子達にも通常は使わせないように教えた。
この男を本気で倒すつもりなら、一つ目のピアッシングソード発動後に踏み込み
斬り捨てていただろう。
「これも防ぐか。ジジイ防御は上手いようだなぁ!」
自分の優位を疑っていない・・・。溜息も出ぬわ。
その時だ、大きな魔力の流れを感じた。
横目でチラっと見る。
「月瑛五芒」
「ブリーズスピア」
若の張った魔法陣に吸われたブリーズスピアが、何倍もの威力になりデンタクルススライムを凍らせた。周りにの壁や柱も凍りついている。
何じゃあの威力!
その直後だ、若のいた辺りが、激しく青白く一瞬光った。
その光が収まると消えていた。
転移成功のようだ!
だが・・・・
「うそ・・・エっ・・・・何で・・置いていかれたーーーー!」
ラナー様の声が響いた、というか悲鳴だった。
「ルバルス様のバカーーーー」
などと叫んでいる。
手を離したのか・・・いやルバルスがいない・・・・。
そういうことか。
苦笑が漏れた、ラナー様が声を上げワンワン泣いている。
仕方が無いのぉ。
「ええい転移されてしっまたではないか!」
ローブの男が悲鳴を上げる。
「撤退だ!マグラー、門を開け!」
そう言うと先程の閃光と高い音を発する玉を投げた。
閃光、轟音、一瞬目を逸らし見ないように努める。
音の方は気合だ!初めから来ると分かれば我慢できるはずじゃ!
奴は・・・!
いた!5パターン男の後方にゲートが開いた。
ならば
牽制だろうか、大振りな横切りを前に大きく屈むように踏み込んで
躱し、そのまま身体をぶつけるように踏み出し、頸動脈を斬る。
「ギャァー」
返り血を浴びぬように避けながら、門に走り寄る。
敵も門に走っている。
比較的近くにいたローブ男と、ジェイク様が門に入った。
「ジェイク待て!」
モルド様の叫びが聞こえる。
シミター女が駆けてくる、入ろうとするのに斬撃を飛ばす。
「飛斬」
「キャアー」
背中をもろに斬った、女の足が縺れる。
突き飛ばすように走り、門の中に太刀を突き入れる。
「ウぐっ・・・」
くぐもった声、そのまま太刀を捻り斬り上げた。
返り血、急激に門が閉じていく。
手を突っ込む、男を門から引きずり出す。
腹部から血を流す男が床に転がした。
門が完全に閉まり、空間には何も無くなった。
「ウ、・・うう」
男が唸る。
若が斬った右腕の傷は塞がっているようだ。
こちらを睨んだ男が何かしようと左手を懐に入れた。
させぬ。
皮一枚残すようにして首を斬り落とした。
首を懐に抱えるように崩れ落ちた。
「ラザンそいつが門使いか?よく倒してくれた」
モルド様の問に「はい」とだけ言い、男の肩を軽く蹴り、面体を検める。
「どうだ?彼の家の者か?」
「髪の色は金髪、目鼻立ちを見るからに西方風。違いましょう」
「そうか、ならば良い・・・・リョーマ達は無事行ったな」
「はい・・・・ラナー様以外は」
モルド様はラナー様の方を見やり苦笑を浮かべた。
まだ大声で泣いている。
ルーネリアが慰めている。
「あの女はいかがしますかな?」
ワシは背中に斬撃を飛ばした女を指さした。
「捕虜にするか、尋問させよう」
そう言うとモルド様は上がってきた兵に指示を出した。
「この女に魔封じの錠を掛け、簡単な治療をし牢にぶち込んで置け。
下の状況はどうか?」
「半数以上は討ち取りました。先程の音を聞いてから撤退を始めています」
「よし、掃討戦だ。2~3人士官らしき者は捕らえておけよ」
復唱して兵が去る。
「座主様」
宗親と秋山殿が来た。
「ご両人、重ね重ねの助太刀感謝致します」
「なんの。リョーマ様の転移は無事成功致しました」
「ありがとう存じます。それと、そこの門使いの男は・・・・」
「我らも面体を検めましたが、無論関係は無く・・・・・」
「左様ですか、ならば良かったです。さて今後ですが?」
「はい我らは帰国致します。いろいろと報告せねばなりませぬので」
「承知しました。明日以降なら港まで飛竜で送らせますが?」
「そうですな・・・・ではお言葉に甘えます」
そんなやり取りを聞いていたら
「とうさぁまーーーー」
ラナー様がルーネリアに抱えられて泣きながら来た。
「ラナーもう泣くな」
「だーって・・・ヒック・・・行っちゃったんだもん
・・・・私を置いて・・・わーーん・・・」
「えーい泣くなって!どのみちラザンには後を追わせるつもりだ。
お前も一緒に行け」
「本当!爺、行こう今すぐに!」
急に泣き止んだ。鼻水を垂らして笑っている・・・・。
嫁入り前の娘が・・・。
まぁ若のこと大好きな優しい娘じゃ。
溜息と苦笑を飲み込み告げる。
「ラナー様、今日は無理じゃよ。シルドニア獣神国は遠い。
しっかり旅の支度をせねばならぬ」
「でも、早く出た方が・・・・・」
「ラナーちゃん明日以降なら、私達が飛竜で港まで送れると思うわ。
だから、ね・・・・」
「わかったわ爺!支度してくる。ルーネリアさんもありがとう!」
そう言うと元気に駆け出していった。
皆、微苦笑で見送っている。
「本当にアイツは・・・・・」
モルド様の表情は微妙だ。
天真爛漫と言えば良いのかのう。
ワシとしては可愛い孫のような存在じゃ。
本当は結婚でもして、ひ孫の顔を見せて欲しいところじゃが・・・。
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第二章の主な登場人物
北条 宗親 島嶼諸国連合櫻倭国から来た使者
秋山 太郎衛門 島嶼諸国連合櫻倭国から来た武官。アヤメの叔父
ハロルド・マークス リョーマの叔父、聖月山副座主で司祭長
メルーサ・マークス ハロルドの妻。偃月兵団団長、2m近い巨躯
レイグラーク・ベルグリーン 樹叡騎士団副団長。弓の名手
リアリス・ラナウェル 氷瀑竜騎兵団副団長。竜騎士
猛き右腕のルバルス 聖岳山出身の鍛冶師で斧遣い
アリスティア・メイラム 氷瀑竜騎兵。リョーマを助ける
ロナリア・ラナク 氷瀑竜騎兵。アリスティアの友人
ルーネリア・ヘイルハーク 氷瀑竜騎兵。リョーマに好意を持ち助言する
ロレッタ・ベルツォーク 副司祭長。魔闘術の達人
バルディウス・カイザル・アイゼンベルク ガルフォード帝国上皇
イグナーツ・バロル・セデン 勇星教団異端懲罰隊隊長




