妨害
「しかし今の状況では・・・・・」
父上が叫ぶ声が聞こえた。
「ここは大丈夫だ!リョーマ飛べ!」
「・・・・・・・」
「お気持ちは分かります。ですが奴らの目的がフェリネシア殿下とリョーマ様
なのですから、戦略目標を無くすことが肝要です」
北条殿が言う。
「戦略目標を無くす?」
「そうです、奴らの目の前で転移をすれば、今後ここ聖月山が狙われることは無くなります」
そうか、もし勇星教団がいないところで転移をした場合、また捜索ということで狙われるかもしれない。ならば・・・・・。
「分かりました。転移をします。何をすれば?」
「天翔石を握って、ひたすら魔力を送って下さい。転移に十分な量に達すれば、自動で転移されます」
「はい」
オレは天翔石を握り魔力を込めた。すると黒い石の部分が青白く明滅を始めた。
「皆様はリョーマ様に掴まってください。身体的接触が無ければ一緒に飛べません」
皆が慌ててオレに触れてきた。
「ん・・・あの光、まさか!おい奴らを止めろ!あれは転移だ、行かせるな!マグラーお前も防げ」
ローブの司祭が叫んでいる。
それを聞いて他の3人もこちらに動こうとするが、皆が防いでいる。
問題はマグラーという奴、恐らく先程、腕を斬った男だろうか?
その時だ、後方に何か物が投げられ、床に転がる音がした。
白い骨のような塊だ。
!
それは突然ムクムクと起き出した。
「スケルトン・ウォーリア!七体もいるわ」
ラナー姉様が叫んだ。
スケルトン・ウォーリア、呪物処理をした骨を使用して召喚できる兵隊。
強さは様々で使用する骨が強い魔物だと強力になるといわれている。
また武装も・・・・・!剣が三体と槍が三体、弓も一対いる。
頭蓋骨の中の落ちくぼんだ目が赤く光ると、こちらを敵と認識したのか
動きだした。
「みんな気を付けて!弓持ちもいるぞ」
オレは叫んだ。
クソっオレが動いていいのか?
「弓持ちを潰します」
そう言うと北条殿は杖を構え突っ込んでいく。
スケルトン・ウォーリアが弓を撃ったが、危なげなく杖で叩き落とし、短縮詠唱で
何か唱えた。
「ダークショット」
黒い闇が大人の頭程ある球体になり飛んでいき炸裂した。弓持ちのスケルトン・ウォーリアが砕け散る。
だが他がこちらに向かって来る。
「ええいもう!リョーマ君、フェリ様、マリアちゃん、コレットは動かないで」
そう言うとラナー姉様がオレから離れて、杖を構え詠唱を始めた。
「レイム・アース・ブレド・フラウ・ショルト。大地よ礫となりて敵を穿て。
アースショット!×3」
ラナー姉様が放った拳よりも大きい土の礫が3つ高速で飛来し槍持ち三体を大きく吹き飛ばした。
だが剣を持った三体が素早く殺到してくる。
次の詠唱をしているが間に合わない!
「ラナー姉様!」
オレは叫んだ、だが剣が届くより先に二体を撃退した者がいた。
アヤメが小太刀と蹴りで二体を大きくノックバックさせ、もう一体をマリアがガントレットの拳で砕き、ノックバックした二体も砕いていく。
そして3人が慌ててオレの元に戻り、身体に触れた。
「みんなありがとう!無事か?」
「大丈夫」と三者三様に応えてラナー姉様が聞いてくる。
「リョーマ君どう?まだかかるの?」
「分からない、魔力がスゴイ吸われている」
天翔石は先程より輝きを強めている。
「見て骨が集まっている、復活しそうよ!」
北条殿が相手をした弓持ちは細かく砕けて動かないが、それ以外は徐々に身体が形成されていく。
「クソ!リョーマ君、まだ飛ばないでよ!置いていったら、お姉ちゃん泣くからね」
そう言うとラナー姉様が詠唱を始めようとした。
その時だ、ドタドタと走る音がしたかと思うとスケルトン・ウォーリアに走る音と共に「オリャー!」という掛け声と骨を砕く音が響いた。
「ルバルス様!」
それはドワーフの鍛冶師にして戦士、猛き右腕のルバルス様だった。
「待たせたのう」
それだけ言うとまたドタドタと走りながら戦斧を振るい、スケルトン・ウォーリアを文字通り砕いていった。
「良かった!」
そう言うとラナー姉様がオレの身体に触れた。
ん!何か感じるゾクっとする悪寒・・・・。
何かいる?
見渡す、それぞれが戦っている、だが・・・・。
「リョーマ上だ!」
父上の声で上を見て驚愕した。
天井に不自然な穴が出現し、そこからウネウネと触手を動かす何かが産まれ落ちようとしていた。
「テンタクルス・スライム?」
それは黒色粘膜の身体に触手が蠢いている巨大なスライムだった。
何かを探すように動く触手がやがて動きを止めた。
そしてこちらを知覚したかのように触手がこちらに向く。
落下してきた!
マズイ、みんながいるからオレだけ避けるわけにはいかない。
もし斬って黒色の粘膜が皆に降りかかったら、ダメージを受けるかもしれない。
『黒霧』を抜き、板の形状をイメージする。
落ちてきたそれを、受け流すように当て振りぬいた。
15m先位の床に叩きつけられた。
ダメージにはなっていないと思う。
そこにドタドタと走る音と掛け声が重なった。
ルバルス様だ。
『ドオリャアー!』
掛け声と共に両断した。
しかし二つに分かれ、それが別々に反撃をする。
下がるルバルス様。
だがまたくっ付いた⁉
奴らスライムには物理ダメージはほぼ通らない、核を壊さないと。
その間も触手を鞭のようにしならせ、ルバルス様を襲っている。
戦斧で斬り、叩き応戦している。
北条殿が戻ってくる。
「アレは闇属性、私とは相性が悪い。誰か水属性の氷冷系か聖属性の光の高位魔術で
攻撃ができれば・・・・・」
「私、氷冷系使えます・・・得意では無いけど・・・・・」
ラナー姉様が手を上げる。
「何と土属性の他に水属性も、2属性でしたか!」
「もう! リョーマ君まだ飛んじゃダメだからね!」
そう言うとラナー姉様は杖を構え詠唱を始めた。
「レイム・ウォータス・ブリーズ・スピル・ショルト。大気よ凝結し
凍てつく槍となれ。ブリーズスピア」
杖の前に顕現した氷が槍となり、高速で飛来しテンタクルス・スライムに直撃した。
これはアイスジャベリンの上位魔術!
当たった場所が凍り付き砕けていく。
「やったか!」
だが全身に広がる前に身体が分裂した。
どうやら自ら凍った場所を切り離したようだ。
「無理無理無理無理、無理!」
「おしいです!これを三本同時生成か、これより上位の魔術は・・・・・」
ラナー姉様は慌てて戻り、オレにしがみつくと食い気味に叫んだ。
「無理ぃいい!これ氷冷系で私の使えるもっとも上位の魔術なの!
まだ撃てるけど、複数同時展開は無理よ!」
北条殿は顎髭をしごきながら考えている。
「・・・・しからばリョーマ様、よく聞いてください」
そう言いながらも北条殿は口を閉ざしたままだ。
考えをまとめているのであろう。
周りを見る。それぞれが奮闘している、異端懲罰隊とか言って
いたが手練れなのだろう。
下の階からも激しい喧噪の音や魔術の破壊音などが聞こえる。
下も激戦なのだろうか?
氷冷魔術の使い手、姉様より上位の魔術?
ダメだ分からない。地・水・火・風の四大元素魔術の中の水属性でも
氷冷は扱える者が少ない。風属性の雷鳴同様、使用できる者は限られる。
ましてや聖属性の上位攻撃魔術は聖女クラスでないと使えない。アンデット
用の中位以下の攻撃魔術とは訳が違う。
「リョーマ様、月詠の導師のスキル、増幅を使いましょう」
静かにそう告げられた。




