過去の記憶、因果、銀狐?
夢をみている・・・・・。
そういう知覚だけはあった。
それは戦場のようだった。
辺りを埋め尽くす魔物・・・・・それは地平を埋め尽くすかのように、
遥か彼方まで広がっていた。
ゴブリン、オーク、黒ウルフ、オーガ、ギガンテス、ハーピー、ガーゴイル、
大蛇、ラミア、地竜やワイバーン・・・・・その他見たことも無いような
禍々しいモンスターが溢れていた。
やがて誰かが叫び出した。
剣を突き上げている。
その男は光り輝く剣を掲げ、雄たけびを上げ走り出した。
皆も雄たけびを上げ走り出した。オレもだ。
「この男が勇者・・・・・」
自然と言葉が出た。
そう勇者だ。
赤く輝くオリハルコンであろう甲冑を着ているから?
光り輝く剣を掲げているから?
否、そうではない。
コイツは勇者だと。
その辺にいる国選勇者、教団勇者、自称勇者などでは断じて無い。
聖導師として心で感じることができた。
真の勇者だと。
身体に沸々と力が湧き、何者にも屈さない不屈の勇気が湧き、心には希望が芽生えた。
勇者がオレを見た。
オレは頷き、勇者の掲げる剣に魔導を込めた。
オレだけでは無い、周りで共に走る聖導師達も魔導を込めている。
それは勇者の剣に集約し、莫大な魔力になり激しく輝いた。
「いけぇ、皇 雅圀!・・・・・」
え、皇雅圀!? 叫んだであろう自分の声に驚愕する。
これは初代勇者の戦いの記憶なのか?
皇 正圀がオレを見て微笑んだ。
「あぁいくぞ ※※※※※」
名を呼ばれたようだ、分からなかったが初代月詠も導師の名前だろうか?
「おおおおおおーーーーっ!!」
雄たけびと共に水平に振られた剣から閃光がほとばしる。
それは轟音と共に魔物達を蹂躙し消滅させた。
記憶がそこで途切れ城内だろうか、建物の中で今度は巨大なとても
巨大な魔物・・・・・。
いや魔王だ。
それと正対していた。
勇者と4名の聖導師、それと聖導師の眷属と呼ばれる仲間がいた。
そこからは只々激しい戦闘の記憶だった。
斬り、突き、殴り、魔導を放つ。
魔王も次々と眷属を召喚し、斬り、殴り、何か膨大な物を放った。
傷つき、倒れ、癒され、また戦う。
その繰り返しが永遠と思われる時間続いた。
仲間の1人が倒れ、2人倒れ、聖導師の眷属達や魔族の眷属も倒れていった。
やがて勇者も魔王も傷付きボロボロになった時、残った聖導師が勇者に最後の力を授けた。
そして勇者が力をふり絞りそれを放ち魔王が倒れた。
ここで場面が切り替わった。また違う魔王と正対していた。
それに勇者も違い聖導師も眷属も違った。あと1人聖導師では無い誰か・・・・・
聖女?もいた。
魔王の隣にはもう1人いる。それは肉感的で美しく、男なら誰でも惑わせる魅力を感じる美女がいた。そして夜を染め上げたような黒髪の頭には羊のような黒いねじ曲がった角が生えていた。
戦いが始まった。先程見たものと同じようにそれは激しい戦いだった。
だが勇者達のほうが少し有利であった。お互い傷付きながらも徐々に魔王を追いつめていった。もう少しで勝てるそう思った。その時までは・・・・・
先程の美女が蠱惑的に微笑みなから手を伸ばし口を開いた。
「月詠の導師********。私のもとに来て」
すると月詠の導師と呼ばれた男が苦しみだし、頭を掻きむしり、下腹を押さえ苦しみだし倒れた。
やがて起き出すと、顔つきが一変してた。魔族のように角を生やし、どす黒くなっていた。
動揺する仲間達。当然だ月詠の導師に状態異常は効かない。
オレもそう認識していた。
そこからは形成が逆転した。
魔王が力を取り戻し、勇者パーティーが徐々に倒されていく。
それは明らかに魔族のように変化した月詠の導師の所為だった。
それまで自分達を支援し圧倒的なバフが無くなり、魔王がそれを受けていた。
また自分達にはデバフが掛けられ、普段に無い身体の重さ、魔導の乱れに苦しめられたのであった。
だがそこでまた変化が、勇者パーティーの数人が月詠の導師に抱きつき自爆した。そして仲間の死に絶望と怒りを滲ませ、残った聖導師が力を結集し勇者に与え魔王を倒すところで記憶が途絶えた。
どの位時間が経ったのであろうか?
オレは眠っていたようだ、ボンヤリする頭のまま目を開ける。
先程の小島の台座の横で仰向けになっていた。
身体を起こそうとした時、胸の上に温かみと少しの重さがあることに気付いた。
「ルル・・・ルル!」
そう鳴き声を発すると、オレの顔をペロペロと舐めた。
「ん・・・・。!?」
オレの胸の上にチョコンと前足を合わせお座りをしているのは銀色の
子狐だった。
その毛並みは美しく銀色に輝き、金色の瞳には賢さというより明らかな知性を感じた。
「ルル!」
と鳴くと顔に身体をこすりつけてくる。
可愛い!!
だが気付いた、尻尾が3尾ある!
「ねえ君は・・・・・?」
「ルル!」
今度は抗議するような鳴き声に感じた。
何で分からないの?と。
「もしかして・・・君が因果なのか?」
「ルル!」
今度は胸に飛び込んで来た。
また顔をいっぱい舐められた。
「コラやめろ・・・・くすぐったいよ・・・・・そんなに舐めないでよ」
自然と笑みがこぼれた。
それにしても、先程の勇者達の戦いの記憶・・・・・
そしてこの銀の子狐。
抱き上げて目を合わせた。
「一緒に来てくれるの?」
すると銀の子狐は飛びつき、オレの口に鼻先を押し当てた。
脳内に声が響く。
『今代の月詠よ・・・・・眷属を集めなさい・・・・・
深い縁を結ぶのです・・・・・さすれば・・・・・
あのような過ちは・・・・・』
そこで声が途切れた。
この声どこかで聞いたような・・・・・!
そうだ、フェリ様と抱きしめ、光と共に白い世界で聞いた時の声・・・・・
「月の女神アルテミア様!」
オレは起き上がり、膝を付き両手を組んだ。
「感謝を・・・・・」
祈った。
どれくらいの時間そうしていたのか、急に右手の甲に温かみを覚えた。
見ると右手の甲には銀の紋様、八芒星に三日月が輝いていた。
「これは・・・・・」
しばらくするとスーっと消えていく。
オレはただその手の甲をしばらく見つめていた




