聖域
時間が近付いたので部屋を出て本堂に向かった。
「わぁ!御主人様素敵です!」
「へぇこれが聖導師様の正装なの?厳かな感じねリョーマちゃん偉い人に見えるわよ」
部屋に用意してあった正装に着替えるため、外に出ていた2人に褒められた。
着替えを手伝うと散々ごねられたことは割愛しよう。
純白の白法衣には所々に金糸や銀糸で刺繍がされ、袖先や首回りなどの意匠も凝っている。首には聖月山の紋章の入ったアミュレットを付けている。
「儀式用の衣装らしいです。裾が長くて歩きづらいです」
苦笑して応えた。
本堂にたどり着いた。辺りは少し騒然としていた。
そこには警備の兵がいて、普段は参拝者が自由に入れるのに今日は立ち入りを規制していた。
一般参拝者や聖山の関係者などがいたが、オレの姿を見ると拍手をする者や
拝みだす人までいた。
「物々しいわね」
中に通され、警備の厳重さに驚いたルーネリアさんの言葉にアヤメが喜々として応える。
「そりゃあ因果を授けられるのですから!」
なぜドヤ顔だアヤメよ・・・・・。
本尊の月の女神アルテミア様の前には、父上や叔父上、フェリ様達がいた。
「来たなリョーマ」
「はい」
「リョーマ、よくお似合いです」
フェリ様が微笑んで言った。
「ありがとうございます。フェリ様お加減は?」
「ええ大丈夫です。聖山の中にいるおかげか、身体はすごく楽です」
「リョーマ君、立派になって・・・・・」
ラナー姉様が涙ぐんでいる。
「姉様大げさです・・・・・」
「だって・・・・・・」
オレが苦笑していると。
「そろそろ行こうかリョーマ」
叔父上に促された。
「ではいって参ります」
入口は本堂の真裏にあった。
こんな所に扉があるなんて知らなかった。
叔父上が扉の鍵を開けるとまた扉があったが、それは扉というより
取っ手も無く、入口に蓋をしてあるという感じだった。
「ここからは月詠の導師にしか通れないことになっている。
いきなさいリョーマ」
オレは一歩中に踏み出した。
「お前が戻ったら開けよう」
叔父上はそう言うと扉を閉め、鍵を掛けた。
蓋のような物を見つめる。
「どうやって開けるのだろう?」
それは木製でも金属でも無く、見たことのない物質だった。
触れてみる。
すると魔力が吸い出されるのを感じた。
膨大な量だ!
どの位吸われていたか、やがて蓋が徐々に薄れていくのを感じた。
「・・・・・消えた!・・・・・」
もともと無かったかのように消えていてポッカリと開いていた。
開いた先見ると、岩肌がむき出しになった細い階段が下へ下へと続いている。
「行ってみるか」
薄暗いが岩肌がほのかに青白く輝いていて、それ程暗さを感じなかった。
聖月山内部は山の中の洞窟とは思えない程どこも整備されている。
だがこの階段を降りていると、ここが山中の洞窟なのだと改めて認識した。
どのくらい下ったのだろうか、大きな広場に出た。
そこは泉のように一面に水を湛えており、鍾乳石が垂れ下がって真ん中に小島のような足場があり台座が鎮座していた。
「これが聖域かな?」
自然と言葉が出た、聖域と想わせる実に幻想的な風景だった。
水に触れてみるとぬるいくらいの温かさだ。
「入るしかないよな・・・・・」
衣装を濡らしても良いのか迷ったが、仕方がないであろう。
オレはジャブジャブと泉の中に分け入っていく。
徐々に深くなっていく、腰位の深さになり泳がねばならぬかと思った辺りで浅瀬に
なり小島にたどり着いた。
濡れた衣装を軽く絞り、台座に近付くとそこには石板があった。
「どこの国の文字だろうか・・・・・?」
石板の文字は判読不明であった。
何気に触れてみる、すると突然それが激しく輝きだした。
「うわっ・・・・・眩しい・・・・・」
そこでオレの意識は途切れた。




