奥の院
「若、参りましょうか」
爺に声を掛けられ、父上のことが気になったが部屋を出ることにした。
「若、ワシは色々指示を出さねばなりません。アヤメの他にもう一人付けます。
それでお休みくだされ」
「えっ警護は私一人で大丈夫です!」
アヤメが抗議の声を上げた。
「明日からもある。お前も交代で休まねばならぬであろう」
「ありがとう。爺も無理しないでね」
「はい。大丈夫ですじゃ。戦の夜は滾りますのでな」
ニヤリと獰猛に笑い、そう言うと一礼して歩み去った。
アヤメを見るとブツブツ文句を言っている。
「せっかく今夜・・・・・」とか
「一服盛って・・・・・・」とか何だか物騒なことを言っているので、放っておくことにした。
フェリ様の様子が気になり向かうとラナー姉様にもう休んだと言われた。
容態に変わりはなく、姉様とマリアの他にロナリアが付いてくれるということなので、自室に戻ることにした。
部屋に入ってしばらくすると扉をノックされた。
アヤメが不機嫌そうに声を上げ扉を開けるとルーネリアさんが夕食であろうお盆を二つ持って立っていた。
「あー重かった。一つ持ってね」
そう言うとアヤメに一つ渡し、中に入ってきた。
「リョーマちゃん今夜の護衛は私ね。あっ冷めないうちに夕食どうぞ。
ついでに私も食べる?」
「何であなたなのよ!」
アヤメが怒りだした。
「えーだってラザン様が護衛をと探していたから志願したの。リョーマちゃんも見知った人のが良いでしょう?」
「はいー・・・・・」
何か夕食におまけが付きそうだったがスルーしておいた。
アヤメとルーネリアさんが言い争っているのを放っておいて夕食をとることにした。
おっ、大赤鮭のシチューに大きなハードパンと鹿肉の大串が3本も付いている。
お腹ペコペコだ!
それにしても今夜オレは眠らしてもらえるのであろうか?
朝のようだ。食事のあとシャワーを浴びたまでは覚えているが、その後のことはあまり覚えていない。いつのまにか寝ていたようだ。
そして予想通り・・・・・。
しどけない寝姿でオレに抱きついている、2人共だ。
そりゃ嬉しいよ、でもどうしたらイイか分からないんだよ!
まあ守ってくれているんだろうけど・・・・・。
オレは2人を起こさないようにそっと身を起こそうとすると、左側の女性に抱き締められた。
「おはようリョーマちゃん」
「おはようございます、ルーネリアさん・・・・・!」
頬にキスをされた。
オレが驚いて固まっているとクスクス笑い出した。
「リョーマちゃん反応が可愛いなぁ・・・ん・・・アレっ、何か硬い物が当たっているよ」
イタズラっぽく笑いながら手を伸ばしてきた。
「・・・!・・・」
オレはベッドから飛び出した。
「驚いた猫みたいな反応ね・・・・・ごめんなさい、可愛いかったからついね・・・・あーー睨まないで!本当にごめんなさいって・・・・・」
ルーネリアさんが笑いながら謝っている。まったくこの人は・・・・・。
オレは軽く睨みながら前かがみになっていた。
恥ずかしい・・・・・。
「どうしたのですか・・・交代の時間ですか?・・・・って、何であなたがベッドに入っているのですか!」
アヤメが起きたようだ。
「おはようアヤメちゃん。だってあなた交代だっていうのにリョーマちゃんに抱きついて起きないんだもん」
「だからって、あなたまで一緒に寝てどうするのですか!
だいたいあなたという人は・・・・・・」
顔洗ってこよう。
2人を放っておいて身支度を整える。
部屋に戻ると着替えをして・・・・・。
オレは慌てて回れ右する。
「あーーーリョーマ君見た?ねえ見た?イイよ遠慮しないで、一緒に寝た仲じゃない」
「もう!御主人様が見てイイのは私だけです、この泥棒猫!」
「わぁスゴい・・・・・泥棒猫って初めて言われた・・・・・」
「こういう時は泥棒猫って言うって、くのいち学校で習ったんですよ」
アヤメがドヤ顔をしている。何を教えているんだ、くのいち学校は・・・・・。
「もうイイです!早く着替えてください、朝食を食べにいきましょう」
何か朝からどっと疲れた。
じゃれ合う2人を連れて食堂に入った。ここは200人は座れる大きな部屋だ。
だが大変混みあっている。
列に並び朝食を受け取る。大きな白パンにキノコの澄んだスープ、ソーセージが5本も付いている。アヤメ達は3本だ、食堂のおばちゃんを見るとウインクされた。おまけくれたらしい。ありがとうとその場で伝え席を探した。
「おーいルーネリア、ここ空くよ!・・・・あっリョーマ様」
手を振る女性の方に歩み寄ると見覚えはあった。確か飛竜の発着場でルーネリアさんに声を掛けていた女性だ。
「おはよう、ヘレナ」
「おはよう、ってなんでリョーマ様と一緒なの?まさかあなた・・・・」
「えーもうリョーマちゃんたら激しくて・・・・・。素敵な夜だったわ」
アヤメが何か言いかけたら。
「はいはい、ごめんねリョーマ様。いつもこんな感じだから・・・・・」
「おはようございますヘレナ様。こんな感じなんですね」
「様はやめて様は・・・・・。」
何て話をしながら礼を言って席を代わってもらう。
食べていると通る人が皆ルーネリアさんに声を掛けていた。
親しまれているんだなと感心した。
相変わらずアヤメとルーネリアさんが言い争っている。というかアヤメが苦情を言い、ルーネリアさんが適当にいなしている感じだ。
視界の先に大きな人影が見えた、鎧姿のメルーサ叔母上だ。きっと夜通し指揮をしていたのだろう。ん、1人では無い。ハロルド叔父上も一緒だ、腕を組んで歩いている。
あそこは有名なおしどり夫婦、メルーサ叔母上が叔父上大好きでいつも大きな身体をペッタリとくっつけて甘えている。
オレは立ち上がり声を掛けた。
「叔母上、お疲れ様です」
「おーリョーマか!今日聖域に入って因果を受けるんだってな。私は今夜もある、休まねばならぬから立ち会えぬがしっかりやれよ」
「はい!」
叔父上は「10時に本堂に来なさい」とだけ言った。
組んでない方の手をひらひらして叔母上達は立ち去った。後ろから従僕らしい若い兵がお盆を二つ持ち追いかけている。これから朝食のようだ。
「御主人様ついに因果を受けるのですね!」
「ねえ、聖域って何処にあるの?因果って何をするの?」
ルーネリアさんの素朴な疑問に、オレとアヤメは首を傾げた。
「実はオレ達もよく分からないです。各聖山には聖域と呼ばれる奥の院があり、聖導師になれば入れるということ以外は」
「そうなんだね。なのに何でアヤメちゃんは興奮してたのよ?」
「え、だってスゴそうじゃないですか。奥の院、聖域、因果。パワーワードですよ、パワーワード!
きっと御主人様がすっごいことになるに決まってます!」
アヤメが両手を組んで目をキラキラさせている。
若干引きながらも、いよいよ聖域で因果を受ける。どのようなことをするのであろうか?
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