呪い持ちへの執着
「現状だがベルレイト王国とは交戦状態に入ったが、まあ恐らく戦争にはならず講和となるだろう」
皆が頷いている。オレもそんな気がしていた。
「私もそう思いますが、皆の周知の意味でもお話ししたほうが良いでしょう」
副座主のハロルド叔父上が口を開いた。
「そうだな。皆も知っていよう、フェリ様の呪いの原因となった、王子がしでかしたことを。緘口令になっていたそれを選定の儀で派手にぶち撒けきた」
皆が顔を顰めて王子の暴挙のことやフェリ様に同情する言葉を上げていた。
「ですが第一王子派の筆頭は王子の祖父、この国の最大派閥のフォード公爵
ですよね?派閥を率いてとはなりませんか?」
見知らぬ副官らしい女性が声を上げた。
「ならぬな。そもそも寄って立つ大義が無い、全ての原因が殿下の暴挙。
他の3公爵が合力することは無いな。自派閥だけ、まあそうなったとしても、1万には満たない、6千~7千だ」
「なるほど」
納得したようだ。周りもしきりに頷いている。
父上がまた口を開いた。
「ただ・・・・・読めぬのは勇星教団だ。奇襲による襲撃は予測していたが、この規模とは正直思えなかった。月詠の導師を得ようというのは分かる。
なぜフェリ様・・・・・呪い持ちにこだわる?」
皆が押し黙った。
「モルド良いかな?」
樹叡騎士団副団長レグラーク様が挙手された。
「レグラーク何だ?」
「3年前になるか、我が国にある村が襲撃された。そこは代々、土地神を信仰していて、その年に産まれた赤子に先祖返りか土地神の呪いが顕現していた。
その村では極まれにそういった子が産まれるらしい。
呪いというが、人にうつったり害なすものでは無く、強い魔力と予知のような能力で村では御子として扱われ大切に育てられるらしい。
その子が奪われた。全滅とまではいかなかったが、かなりの被害者が出た。
生き残りの者の話を聞くと勇星教団の仕業と判明した。
その後、情報を集めていたが、世界中で似たような事件が起きていたようだ。
子供の呪い持ちは呪い子、何らかの力のある女性の呪い持ちは、さらに価値があり
呪い姫と言って教団内でも奪い合うそうだ」
「私も聞いたことがあるわ。隣国の話で、少し予知夢を見る女性を攫って・・・・・」
他の聖山関係者も似たような話をしだした。
「教団内で司祭クラスの序列競争が相当激しいと聞く、ひょっとするとその呪い持ちの有無が関係しているのかもな」
「なるほどな・・・・・。奴らが呪い持ちというものに執着して集めていることがよく分かった」
ひとしきり話を聞くと司祭長のハロルド叔父上が得心の声を上げた。
「さてリョーマよ、ここ聖月山は奴らの勢力圏内で周辺国にも支部があり本拠地も遠くない所にある。やはり昨日話したとおり、教団の影響が及ばないシルドニア獣神国に行くべきだ」
「はい父上」
「そこでだ、明日は聖域である奥の院に入ってもらう」
「奥の院?誰も扉を開けられないと聞いていましたが?」
「一般人はな。お前は月詠の導師だ、扉は開かれよう」
「そこに何があるのですか?」
「分らんのだ」
父上はそう言うと押し黙った。
代わりに口を開いたのはハロルド叔父上だった。
「リョーマここで知っている者は誰もいないし、記録にも無いのだ。
聖導師しか知りえないのだろう。恐らくだがそこで何らかの因果を受けるのだと思う」
「因果ですか?・・・・・」
「うむ、その時の加護によって違うらしい。口伝として聞いたのは、武器だったり、強力なアイテムだったり、必殺の魔導であったり・・・」
「まあこればかりは明日お前に見てもらうしかないよ。そして明後日に飛んでもらう。北条殿あれの起動は問題無いのですね?」
「はい、座標はお渡した時に入力済です。あとは一定量魔力を注入すれば起動します。ただその際には共に転移する人がリョーマ様と身体的に接触しなければならないことは覚えておいて下さい」
「オレと触れてなければならないということですね。わかりました」
「よし、あと懸念事項はジェイクのことだ」
ジェイク兄上?何のことだ・・・・・。
「今回の聖月山襲撃の時、杣道からの侵入があり、その案内として目撃されている。しかしその後の戦いでも襲撃者の遺体からも奴は見つかっていない。
恐らくここの内部も知っている、奴は仲間を手引をし潜伏している可能性がある」
そこで黙ると目を閉じ、少し黙考してから目を開け口を開いた。
「リョーマ、ここを出るまで一人で行動をするな。必ずラザンかアヤメと共にいろ。フェリ様の方にはラナーとマリア様、他の聖山関係者が共にいるようにしている。
そして奴が現れたら迷わず斬れ。迷えばお前やフェリ様が奪われ、他の聖山関係者が傷つくことになる。他の者も同様だ、私との関係は考慮するな」
そう言うとまた目を閉じた。恐らく親としての想いと聖山の座主としての立場で苦しんでいるのであろう。
皆痛ましそうに父上を見ている。
「話は以上だ、皆御苦労であった。赤い流旗が上がり交戦状態にある。中腹の本陣ではメルーサが偃月兵団の団長として掃討作戦を継続中だ。
皆もそれぞれ役回りがあると思う。引き続き頼む。
今回の戦いは王子の暴走によるベルレイト王国との戦争から、対勇星教団へと代わっている。奴らは宗教という観点から、狂気を秘めた行動になる可能性が懸念される。より一層気を引き締めてくれ」
そう言うと散会となった。
その後は皆に声を掛けられた。初めての方々とも挨拶をしたり、見知った方には言祝がれた。
父上の方も親しい人に同情的な声掛けをされているようだった。




