御主人様⁉
その後大山羊で駆けてきたラナー姉様達による疑惑の追及については割愛させていただきたい。・・・・・本当に、先程までの戦いより大変だった。
フェリ様はラナー姉様とコレットを伴い用意された部屋に向かった。
オレも行きかけたがルーネリア様の言葉を思い出し、そちらは任せて北条殿達を父上達がいるであろう大会議室の方へ向かった。
「これが内部ですか、山の中の洞窟とは思えないような作りですね」
秋山殿が感心しきりだ。
「もう何百年と受け継がれている施設ですからね。都度改修して整えています」
そう言いながら回廊を進む。ドワーフ達の優秀な技術者が作り上げた聖月山内部は広々としていて洞窟をイメージするようなジメジメとしたものとはとはほど遠い作りだ。これは他の聖山も同じであろう。
すれ違う人達は皆忙しそうだ。伝令兵であろう腕章を付け走って行く者、書類を抱え追い抜く者、他の聖山の兵だろう鎧を着ている者や魔術学校の生徒の制服姿もいた。中には親しく声をかけてくる者もいた。
「おかえり」とか「大きくなったなぁ」とか「聖導師になったんだって!」「おめでとう」とか。聖月山の者なら小さいころから見知っているからだ、嬉しいけど少し気恥ずかしい。
「ここがリョーマ様が育った場所なのですね?皆に愛されていますな」
北条殿が目を細めて言った。
「ええありがたいと思っています3年ぶりですここに来るのは。あっ、こちらです」
そう言うと開け放たれた扉をくぐり中に入った。
多くの人がいて、父上を始め首脳部の人々が報告やら命令やらでごった返していた。何台もある魔術通信機からは様々なやり取りが漏れ聞こえている。
きっと各聖山や他国とやり取りをしているのであろう。
これは待つかなと思っていると副官の女性ウェリーナさんが気付いてくれた。こちらを見て手を振ると、誰かと話している父上に耳打ちをした。
「おおーリョーマ無事戻ったな!北条殿も秋山殿も御助力感謝します」
立ち上がった父上が深々と頭を下げた。
「そのような、どうぞ頭をお上げください。我らもリョーマ様、新しく誕生した月詠の導師様と共に戦えたこと嬉しく思います」
北条殿が言い、秋山殿も頷いている。
「アヤメも御苦労であったな。姫様は?お加減はどうか?」
「はい、ラナー様たちとお部屋に行かれました。セデリア様の治療もあり落ち着いておられます」
「そうか、ならば良い。お二人ともお疲れでありましょう、部屋を用意します。そちらでお休みいただきたい。アヤメ、空いている客室に案内を頼む。リョーマ、後程首脳部の会議がある。呼びにいかせる、それまでは自室で休んでいるといい」
そう言うと慌ただしく戻った。待っていた人達が次々と報告をしている。
改めて二人に礼を述べ、アヤメに案内を頼むとオレも自室に向かった。
変わらずに掃除のいき届いた部屋に入ると疲れが一気に押し寄せてきた。
鎧を脱ぎ、用意してある服に着替えベッドに倒れ込む。
久しぶりにここの大きな温泉に入りたいななどと考えていたら意識が遠のいた。
誰か入ってきた気配がしたが、また眠ってしまう。
ノックの音がして目が覚めた。
返事をしようと声を上げかけたら、すぐ隣で返事をされた。
「はい」
「失礼します。座主様がお呼びです。大会議室へお越しください」
若いの男の声だ。
「承知しました」
アヤメが応えた・・・・・ん?
「アヤメ?」
「お目覚めですか、若様」
「何で同じベッドにいるのかな?」
「筆頭従者にしてメイド長なら当然ではありませんか?」
そう言うとベッドから起き出し、下着姿を見せつけるようにしながら、ゆっくりとメイド服を着だした。
困惑しながらも、その姿をしっかり見つめているオレ。
はいはいそうですスケベですよ!
だって気になるもの・・・・・。
アヤメのしてやったりという顔に若干ムカつくが。
それと筆頭従者?メイド長?そんな役職いつ決めた?
「若様?座主様がお待ちですよ。あっ、お着換えのお手伝いですか、喜んで!」
「いや手をワキワキしないで!このままの恰好でイイから」
オレは慌てて立ち上がり部屋を出た。若干前かがみになりながら・・・。
「あーーそれとアヤメ、その若様と呼ぶのはそろそろ・・・・・」
「そうですね・・・・・。ではダーリンとか・・・・・・」
「・・・アヤメ、オレのいない3年間修行に行ったと言ってたけど、どんなことを
してきたの?キャラがすごく変わったようだけど・・・・・・」
「ついに聞いてしまいましたね・・・・・。聞くも涙、語るも涙・・・・・」
アヤメが拳を握りしめてプルプルしている。
「やっぱりイイよ・・・・・」
「あれは櫻倭国の霧深い山の中、シーフの上級職『忍者』そして私が修行したのはその女性版『くのいち』。それらが学ぶ隠里がありました」
あっ話すんだ・・・・・。
「来る日も来る日も修行の日々。小太刀に格闘技、諜報活動や罠解除、さらには房中術まで・・・・・」
「房中術?」
「まあ、興味ありますか?フフフじゃあ今夜にでも!」
アヤメが妖艶な笑みを浮かべ、流し目をしてきた。そういう系のことか・・・・・。
「いやそうじゃなくて・・・・・とにかく凄く厳しい修行をしてきたんだね?」
「はい週5日、9時~17時までみっちりと、あとそのうち1日は『パーフェクトメイド講座』を受講してました」
「パーフェクトメイド講座? 凄いね・・・・・。じゃあ夜はクタクタで寝ちゃうね」
「いえいえ夜こそ忙しいんです。年頃の女の子がみんな一緒に寝起きしていますから、誰かの部屋にお菓子を持って集まり女子会です!
週末のお休みどこに遊びに行くかとか、美味しい甘未処はどこかとか、カッコイイ男子の話とか。
ああ、もちろん私はリョーマ様一筋ですから、いっぱいお話しましたよ!みんな会いたがっていましたよ」
「そ、そうなんだ・・・・・」
「私、そんなに変わりましたか? 変ですか?」
「いやそんなことは無いよ。すごく明るくなったし、アヤメが楽しく過ごせたなら
オレも嬉しいよ!」
「若様!・・・・・。いえダーリン!・・・・・」
アヤメの瞳がウルウルしてる。
「・・・・・待ってダーリンはやめて」
「えっそうですか?あっフフフ分りました、あ・な・た」
「いや、それも・・・・・」
そんなことを話していたら大会議室の扉の前まで来た。
「では御主人様、入りましょう」
そう言うと扉をノックしてオレの名を告げた。
御主人様でいく気か・・・・・。




