竜騎士達
その飛竜は我々の前に次々と降り立った。
一際大きい濃紺の竜燐の飛竜から女性が飛び降りた。
「フェリ様!お加減はいかがですか?」
「まぁリアリス様。大丈夫です、皆様のおかげで落ち着きました」
「そう良かった。フェリ様にはこの子に乗って御山に移っていただこうということになって。中屋敷もあんなだし、守り切れないからね。よろしくて?」
「わかりました。チェムールちゃん以前も乗せていただきましたね」
「ギャ!」
「フフフ。チェムールも乗ってけって」
フェリ様は立ち上がりチェムールに身を寄せたが少し戸惑っている。
「そうね今日は騎乗用のズボンでは無いものね」
そう言うとリアリスは手綱を緩め、チチチチと舌で音を出した。
チェムールが膝を付き寝そべる様に身体を低くする。
「リョーマ君、抱っこして乗せてあげて」
「は、はい」
オレはフェリ様の側に寄り、そっと抱き上げた。お姫様抱っこというやつだ。
「あっ」
フェリ様は小さく声を上げると、恥ずかしそうに上目使いに見つめてきた。
何これ近い!ヤバい可愛いし柔らかい・・・・・。
「はいはい二人の世界に入らないでね。初々しいわね本当に」
リアリス様が微苦笑している。
は、恥ずかしい・・・・・。
オレとフェリ様はお互いに視線を外したまま、チェムールの背に持ち上げた。
リアリス様が抱きとめるとカラビナを固定する。
「リョーマ君このベルトで、念のため私と固定して。変なとこ触っちゃダメよ」
「触りません!」
まったく、触りませんよ。触りたいけど・・・・・。
「これでどうでしょうか?」
「うんイイわ。コレットちゃんブランケットか何か・・・・・。エラい
ちゃんと用意しているじゃない」
おずおずとコレットが渡してくるのを、オレが受け取りフェリ様の肩から掛けた。
「ありがとう。リョーマ達は来てくれるのですか?」
「はいすぐに御山に向かいます」
我々聖山関係者は山の中のことを御山という。
「あと2騎飛竜がいるから二人は一緒に行けるわよ。人選は任せるわ。フェリ様行きますわよ。チェムール!」
手綱を軽く引くだけでチェムールが立ち上がり、鐙を二回蹴ると飛び上がった。
「行っちゃった。リョーマ君二人どうする?」
「お世話があるからコレットには行ってもらおうかと」
「わわ、私ですか?確かにフェリ様のお世話に行きたいですが・・・・えーーーー!」
コレットは飛竜が怖いのか高いのが怖いのか?
「うん、無理なら山道を大山羊で走ってもらうけど。どうする?」
「い、行きます・・・・・」
震えている。可哀そうだけどガンバレーコレット!
「じゃあ僕と一緒に行こう!」
そう言うと背の高い20代前半位の騎士が飛竜から降りてきた。
「僕はシルドリア・レイクマン。コレット嬢と言うんだね。大丈夫だよ、怖いなら目をつぶっていると良いよ。すぐに着く」
そう言うと早くもコレットをお姫様抱っこをした。
「キャっ」
コレットが真っ赤になっている。
「シルドリア様・・・あのよろしくお願いします。あと荷物を・・・・」
「これでイイ?」
ラナー姉様がコレットの大きな肩掛けバッグを渡している。
「はいラナー様ありがとうございます」
「では行こう」
そう言うとコレットを自分の手前に座らせるとカラビナを固定して、さっさと飛び上がっていく。
「キャアーーーーーー」
悲鳴がどんどん遠くなっていった。
「マリア行くかい?」
オレが聞くとマリアは首を振った。
「私は師匠と戻るわ。リョーマでイイんじゃない?」
そっかあロレッタ様は魔闘術の師匠なんだ。
周りを見ると皆が頷いた。
「決まった?へぇーリョーマちゃんか・・・イイわねあなた・・・・・さぁこっちよ」
セデリア様を送ってきたであろう、彫りの深いはっきりとした目鼻立ちの赤髪の美女が手招きをしている。
「ええーと・・・・・?」
アヤメとラナー姉様がコソコソ何か話している。気付かなかったことにしよう。
「あっ・・・そうね。ルーネリアよ」
「ルーネリア様。お願いします」
「フフフ・・・はい・・・。見てたわ空中戦、凄かった!久しぶりに興奮したわ」
そう言うと妖艶に微笑んだ。色っぽさにドキッとする。
今度は二人にマリアが加わった。ギルティとか言っているし。
オレは無実です!
誤魔化すように声を上げた。
「北条殿、秋山殿。アヤメ達と来て下さい」
「承知しました」
オレはそう言うと促されるまま前に座り、カラビナを固定した。
ルーネリア様がオレを抱きしめるように後ろから腕を回し、耳元だ囁いた。
「い・く・ね」
唇が耳に当たって息がかかってます!
飛竜が飛び上がった。姉様達の方は見ない。
「ねぇリョーマちゃん、少し寄り道しない?」
「エっ!そんな・・・・・」
「フフフフ・・・・・可愛い」
そう言うと頂上では無く、大きく空を旋回して北東のほうへ向かう。
「からかわないでくださいよ・・・・・」
「ごめんなさい、気を悪くしないでね。でも結構気に入ったのは本当よ」
「また、そんなこと言ってからかう」
「あん、違うってば!あのね真面目な話・・・・・」
考え込んで言い淀んでいる。
「その、あなたがフェリちゃんを大好きなのも知っているわ。多分フェリちゃんの方もね。あなた達の仲を割こうとかじゃないのよ。ただ・・・・・。
リョーマちゃんが普通の男の子なら良かったのよ。でもあなたはそうじゃない・・・・・」
そう言うと少し黙りまた口を開いた。
「・・・・・聖導師様になったの。これからあなたには色々な人が寄ってくるわ。良い人だけじゃなく悪い人もね。あなたに取り入りたい人、利用したい人。貴族が娘と関係をもたせようとしたりね。ここまでは理解できるわよね?」
「はい、分かるつもりです」
心配してくれているんだ。
「今のリョーマちゃんを見ていると、初めての好きな人に全てを捧げて尽くす純真な男の子丸出しなの。確かに今のフェリちゃんの状態は守ってあげなきゃいけないかもしれない。この聖月山にいるうちはイイわ。
でも・・・・・。
外に出たら本当に気を付けないと。リョーマちゃんが思っている以上に、真の勇者を選ぶ勇者の仲間、聖導師というのは掛け替えの無い存在なの。そして敵対勢力からの誘拐や暗殺の恐れもね」
「・・・・・そうかも知れません。隙だらけですか、やっぱり」
「うん。純真なことは良いことよ。でも立場がそれだけじゃあ許されなくなってしまったの。周りを良く見て、そして周りからどう見られるかを意識して」
「ルーネリアさんありがとうございます。こんなに親身になっていただいて」
「フフフ。さぁ難しい話は終わりにしましょう!リョーマちゃん、あの辺に人の来ない綺麗な泉があるの」
そう言うとオレの耳に唇を寄せてきた。
「!」
「ねぇ二人でイイことしよっか?」
「えっ!ししませんよ・・・・・」
「あっ今、スッゴイエッチなこと想像したでしょう?」
「してません!」
「フェリちゃんと初めてエッチするのにリードできた方がイイと思うけどなぁ」
「うぅっ」
「お姉さんがやさしく教えてあ・げ・る」
「だぁーーー耳に息をかけないで!もう!!」
「ハハハハごめんごめん・・・はぁリョーマちゃん可愛いなもう」
やっぱりからかわれている。
「もう戻ってください・・・・・」
「やん、泣かないで!もう本当に可愛いんだから」
「泣いてません!」
「はーーーい戻りますよ!」
笑いながらそう言うとルーネリアさんは飛竜を山頂の方に向けた。
しばらく無言が続く。
「怒ったぁ?」
「・・・・・怒ってはいません。心配してくれたのは本当だと思うから」
少し憮然として応えた。
「嫌われたら哀しいな・・・・・」
「嫌ってなんていません。むしろルーネリアさんのこと・・・・・」
「え!私のこと何!」
「言いません!」
「あーーー仕返しされた。じゃお相子ね」
「はい・・・・・」
何かどっと疲れた・・・・・。
山頂が見えてきた。飛竜の発着場には大勢の人が見える。
「リョーマちゃん、からかいは無しでラナーちゃんやアヤメに言えないような相談ごとがあったら言ってね。私は宿舎で無くて有料の客室525を使っているわ」
「はい、ありがとうございます」
飛竜が羽ばたき発着場に着いた。
フェリ様や他の女性竜騎士数人がこちらに駆けてくる。
ハーネスを外していると耳元で囁いてきた。
「もちろんエッチの勉強をしに来てもイイよ」
「な!・・・・・」
オレは真っ赤になってフリーズしてしまった。
「ああーーーールーネリアがリョーマ君を誘惑してる!!」
女性の竜騎士が叫ぶと周りも騒ぎ出した。
「ちょっとルーネリア何しているのよ!」
「してないわよ!まだね・・・・・」
「ねぇリョーマちゃん?」
「は、はいもちろんです!」
「ええーーー怪しい!」
ジト目で見られる。
「ちょっと粉かけただけよ。じゃあねリョーマちゃん」
そう言うとウインクをして飛竜の手綱を引いて歩いて行ってしまった。
数人の女性竜騎士が質問攻めにしている。
「リョーマ」
フェリ様の方をゆっくり振り向いた。顔は笑っている、目が・・・・・。
「ずいぶん時間がかかりましたね?楽しかったですかリョーマ」
「いえ・・・・・その・・・・・」
「粉をかけるってどう意味なのですか?リョーマ」
初めてフェリ様のことが怖いと感じてしまった。




