決着
赤い流旗と角笛の音、その結果は劇的だった。
上空から見ていても気付かなかった。隠蔽の魔術で潜んでいたのか?そこら中から味方の兵が溢れてくる。
ドワーフ達が戦斧を掲げ雄たけびを上げながら爺やメルーサ叔母上達の戦場に吶喊していき、たちまちに乱戦になる。
浮足立つ敵、その隙を突きたちまちに爺が勇者を斬り伏せた。メルーサ叔母上も敵を圧倒しはじめる。
周りを見れば竜騎士達が飛び出し攻撃していた。
黒い鎧を着た見慣れぬ兵隊も参戦していく。あれはもしかして母親を連れて前皇帝が参拝していると言っていたガルフォード帝国の兵か?
ん?先頭でグレイトソードを高々と掲げ赤いマントを翻し突撃しているのは、
まさかその前皇帝では無いよね?
白髪頭を揺すり笑いながら次々と敵を斬り伏せている。護衛の兵達が先を越されて慌てているように見える。
本陣の方に目を向ければエルフの集団が、空中に残るペガサスナイトには矢を。
地上にいる敵には精霊魔術や剣で襲い掛かっていた。秋山殿やアヤメ達も呼応し反撃を強めている。
聖月山の紋の入ったローブを着た魔術師達、神官服の兵も多くいる。きっと聖月山で魔術を学ぶ学生達であろうか?
こちらももう大丈夫だ。
一頭の飛竜がこちらに飛んでくるのが見えた。手を振っている。
「おおーい!おおーい!アリス!アリスティア!」
オレの乗る飛竜の騎士が手を振り返している。そうかまだ名前も聞いてなかった。アリスティアって名前なんだ。彼女は薄水色の髪が兜の隙間から長く風に揺れていた。その顔は少し幼い感じがした。オレより年下かな?整った目鼻立ちをしていて目は少し眠そうだ。
「ん。ロナリア・・・・・」
言葉少なく呟くと飛竜を空中に停止させた。バッサバッサと大きく羽ばたく音がしている。ロナリアと呼ばれた人の乗る飛竜も同じように停止した。
「やあ、私はロナリア。聖氷山氷瀑竜騎兵所属のロナリアだよ!あなたがリョーマ・マークス?新しく覚醒した月詠の導師の!」
アリスティアと同じような青の革鎧を着た、女性の声を掛けられた。
兜の隙間から、鮮やかな緑色のボブカット髪が見える。
「はいそうです。はじめましてリョーマ・マークスと申します」
「かしこまり過ぎ!歳はそんな変わらないよ。普通にしゃべってイイって!」
そう言うとコロコロ笑っている。
「そんな・・・・・。そうだアリスティア様と申されるのですね。リョーマ・マークスです。お助けいただきありがとうございます!おかげで・・・」
さえぎるようにロナリアが口を開く。
「だから固いってば!アリスティアは君より年下だよ!それよりずっと見ていたんだよ。アリスの方が飛び出すのが早かったけどね!同じ八聖山に集う者だよ、助けるのは当然だよ」
そう言うとまたニパっと顔全体に花が咲いたように笑った。この人の笑顔には華があるな。
「それにしても凄かったよ!ペガサスナイト相手に空中戦をするなんて。ビックリだよ!ねえアリス?」
「ん。凄い。カッコ良かった」
アリスティアはそう言うと親指を立ててサムズアップしてくる。
この子は言葉が少な目だな。2人は良いコンビなのかもしれない。
「ねぇ聖導師になればあんなことできるの?習ったの?」
「習ってはいないよ。どうすれば良いか考えて、必死だったんだ。ただ聖導師の魔術は想像を具現かできると知っていたからやってみたんだ」
「へええ・・・・・・。だったらリョーマは凄いよ!覚醒してすぐあんなことできるなんてさ!ねぇアリスもそう思うよね?」
「ん。思う。リョーマは凄い」
「2人だって凄いよ。飛竜で大空を駆る竜騎士なんてさ!みんなの憧れのジョブだ!」
これは本心から思う。生物最強の竜種の一種の飛竜を自在に操る竜騎士。なろうと思ってなれるものでは無い。そもそも人が乗れる飛竜自体が貴重なんだ。
「ヘヘヘ、やっぱそうだよね!私達も凄いよね、ねぇアリス」
「ん」
やはり言葉少なく応えている。
「・・・・・-マ・ん。リョ・・く・!おーーーーい!」
下から声がした。ラナー姉様やアヤメが手を振り叫んでいたようだ。
「呼んでいるね。アリス下に降りよ」
「ん」
羽を小さく広げ滑らかに滑空していく。大きく羽を広げ3回ほど羽ばたくと着地した。
「みんな無事?」
「大丈夫だよ!」
飛竜の上から見渡すとラナー姉様は笑って大きく頷いた。アヤメは少し後ろに下がり秋山殿の背中に隠れた。そういえば飛竜のような大きな生き物は苦手と言っていたな。
「フェリ様は?」
「少しお疲れのようです。今、北条様が治癒魔術をかけて下さっています」
アヤメが応えた。ん?なんか睨んでない?アリスティアさんをなぜ?
「アリスティアさん本当にありがとう!」
「ん。アリスでイイ。私もリョーマと呼ぶ。イイ?」
小首を傾げながら言われた。可愛いな、妹がいたらこんな感じかな?
「もちろん!」
そう言うと飛竜から降りる。
「アリス、飛竜の名前はなんて言うの?」
「ん、サフィーナ。女の子」
「サフィーナ助けてくれてありがとう!」
黄色い瞳の色でジっと見つめられた。
「首を叩いてあげて」
大山羊と同じだ。
「サフィーナ」
言いながら首筋をそっと叩いた。竜鱗という感じだ、堅いが暖かい。
「グギャっ」
鳴きながら首を上下した。
「サフィーナもリョーマを気に入った」
そんなやりとりをしていると伝令が拡声の魔術で命令を伝達していた。
『本陣下の広場に集合せよ。これより残敵を掃討して聖月山の領外へ叩き出す。繰り返す・・・・・・・』
掃討戦に以降するようだ。
「リョーマ君どうするの?」
ラナー姉様に聞かれた、少し考える。
「他の部隊に任せましょう。我々はフェリ様達のところに行きましょう」
「リョーマ、私達は行くね。多分こういう時は竜騎士だけで集まって、空からの哨戒行動になると思うから」
「わかった。ロナリアもありがとう!」
「うん!また後でね!」
そう言うと二人とも飛び立っていった。
フェリ様のいる方へ歩いていく。椅子に座ってうなだれているフェリ様がいた。
無事で良かった。治癒魔術をかける北条殿と心配そうな顔をしたマリアと司祭服を着た優し気な女性がフェリ様に聖なる祈りを捧げていた。副司祭長のセデリア様だ。
それに飛竜と赤髪の女性がいた。おそらくロレッタ様を送ってきたのかな?
邪魔にならないように少し離れた所で見守ることにした。
それほど待つほども無く終わったようだ。
お礼を言うフェリ様、こちらに気付いた。良かった顔色も良い。
すぐに駆け寄り手を握った。
「フェリ様、大丈夫でしたか?」
「はい、リョーマ!見事な初陣でしたね」
ニッコリと微笑まれた。生きてて良かったと実感できた。
そっかぁ初陣だったのかと今更ながら思う。
「みんなに助けられました」
「そうですね、本当に・・・・・勇星教団また襲ってくるのでしょうか?」
不安そうだ。
「大丈夫です。それについては進展があります。フェリ様にとってもオレにとっても良い方法が」
「まぁそうなのですね!フフフ、リョーマがそう言ってくださるのであればきっと大丈夫ですね」
また微笑まれた。よく笑うようになられた。本当に良かった。
ふと何気に頂上に上がる赤い流旗の方を眺めるとこちらに飛竜が2騎飛んでくるのが
見えた。
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