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呪い姫を抱きしめたら月詠の導師に覚醒したので、王子を〆て姫を救う旅に出ます  作者: 輪三


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帰還と待ち人

城門前に集結した。

総勢100騎になる。城内の突入した40騎以外に城壁前に40騎、城外に20騎で不足の事態に備えていた。


「聖月山に連絡は?」


父親が尋ねる。


「はっ、笛が鳴った時点で『交戦』の第1報は城外の兵から伝令を走らせ、第1物資集積所で待機の兵が通信宝珠で聖月山に連絡を入れました」


「よし続けて俺が帰還次第、『赤い流旗』を出すから準備をしろと伝令を出せ。それとリョーマが月詠の導師に覚醒したことも伝えろ」


「はっ」


中隊長が応じ指示を出していく。


傾注けいちゅう!」



「これより帰還する。第4物資集積所にて野営、夜明けとともに聖月山に向け進発。昼前には到着する。第2行軍速度、斥候せっこうを3組2名体制で展開、

あと1小隊を馬車の回収に向かわせろ」


城壁前の待機組だった大隊長が指示を出し出発する。

帰りは大山羊での帰還なのでホッとした。馬車は苦手だ。

天秤月(10月)の騎行は少し肌寒いと思ったらジャケットをメイヤに預けたままだった。

野営地に戻ったら着る物をもらおうなどと考えていたら父上が歩速を落とし横に並んだ。


「父上、殿下はどうなるでしょうか?」


「王位継承権の剥奪、祖父のマルフェル公の自領で謹慎。そんなところだろう。

お前も命まで取ろうとは思って無いのだろう?」


「それは流石に・・・・・」


もしフェリ様の命が奪われるなどということになれば別だが。


「まぁ来年、他国へ留学という形で国を出すであろう。無論レイドリア特別優選学院では無いぞ」


「はい」


「それよりリョーマ、野営地にお前を待っている人がいる」


「待っている人ですか?どなたです?」


「まあ会えば分かる」


「はい・・・・・」


誰だろう?知っている人なら名を告げるはずだ。


「リョーマ」


「はい父上」


「いや・・・・・その・・・なんだ・・・・・まあ何でもない」


そう言うと父上が前の方に戻っていった。

珍しく歯切れが悪い。

そうこうしているうちに街道を外れだした。荒地に入るとその先には山が広がっている。大山羊の良いところは道を選ばないというところだ。最短ルートで目的地に向かえる。


王都と聖月山の道は山道や荒地を使って行けば街道の1/3の時間で行ける。

また大山羊が2列縦隊で行軍できるように木を間引いて整備してある。


3時間も走った頃に目的地の第4物資集積所に到着した。

ここは川沿いの山の高台にある、倉庫の1つで食料や天幕、行軍に必要な物資を保管している。

すでに待機組により天幕が幾つも張られ、炊事の煙が上がっていた。


「整列!大山羊の世話が済んだら囲いに放て。武器の手入れ、使ったものは矢の補充。それが済んだ者から食事。夜警は第一小隊から二刻(四時間)交代、結界石の魔力補充を忘れるなよ。小・中隊長は一時間後に大天幕に集合、以上解散!」


大隊長の号令が夕闇が迫る山あいに木霊こだましていた。

オレも乗って来た大山羊の鞍を外し、体を拭いてあげる。気持ち良さそうに目を細め、頭を擦りつけてくる。

頭頂部が固いから地味に痛いのだけど・・・・。

でも可愛いやつだ。木切れを投げたら口にくわえて持ってきた。

そんなことをしていたら声を掛けられた。


「リョーマ様、お久しぶりです」


ふと見るとダンだった。


「やあダン、久しぶりだね。偃月兵団に入っていたんだね」


「はい、今年からなのでまだ見習いですが」


茶褐色の髪を短く刈り込んだダンが頭をかいた。

背はオレより頭一つ低いが肩幅がありガッシリしている。


「それよりスゴイっすよ聖導師様なんて!」


「ありがとう。ダンだって斧術士になったじゃないか」


「それはそうですが。伝説の聖導師ですよ、スゴ過ぎですって!」


「えっ若様あの伝説の聖導師なんですか!」


「マジで!ひょっとして月詠の導師なんですか?」


周りの団員達が話に入ってきた。


「うん、おかげさまでね」


「スゴイや! 俺達、聖月山に関わっている者なら、誰だって憧れますよ。

いつか自分に月の女神アルテミア様の神託が下り覚醒することを!」


そうなんだ、聖導師は各八聖山に関わっている者しか覚醒しない。

ここが勇者のように誰にでもなれるものとは違うところだ。


「ダンお前、若様の戦いは見ていたのだろう、どうだった?」


「スゴかったすよ!王子達十人以上に囲まれているのに、全員ぶっ飛ばしちゃうんですよ。それにファイヤーボールを撃たれたのに、吸い取っちゃうんですよ!マジ、パネーっすよ」


褒めてくれるのは良いのだが、ダンよその言葉遣いじゃ、隊長に怒られないのかな?


「お前はまたそんな言葉遣いで!」


案の定、上官の小隊長から頭にげんこつを貰っていた。


「リョーマ様、座主様がお呼びです。大天幕の方へお越しをとのことです」


「ありがとう、じゃあねダン」


「ハイっす、今度また釣りでも行きましょうっス!」


わかったと返事しながら大天幕に向かう。

今日はいろいろあったけど、新しい友人にも昔馴染みの友人にも会えたことが嬉しかった。近習の時はとつい考えてしまう。もし殿下達と親しくなっていたらきっと今日のような結果にはなっていなかったのであろうか?


そんなことを考えていると、高台にあるここからは日が沈む様子が見えた。

綺麗に暮れていたのに、日が落ちる瞬間に辺りは禍々しく赤黒く空を染めた。

それは暮れた地平線から湧き上がる様に立ち昇り、蠢いていている様子は見るものの心を寒からしめる。

しばらくの後に普通の夜空に変わる。

これが『まが黄昏たそがれの季節』と呼ばれる、魔王復活の証だ。

年々この時間が長くなっている。

夜は魔王の眷属けんぞくが力を増す時間、聞いた話では最前線『極北の長城(ジ・ノーズ)』では日が昇らず、常に夜だということだ。


奥に建てられた大天幕の前に着いた。

それは普通の天幕の二十倍はあろう大きさで、会議などもできる使用になっていた。


「リョーマ様、皆様お待ちになっております」


歩哨ほしょうが二人立っていて声を掛けられた。


「失礼します。リョーマ様がお見えになりました」


もう一人が中に声を掛けた。


「お入りくだされ!」


爺の声がした。


「リョーマ入ります」


声を掛け中に入ると四人いた。

父上とラザンは分かるが、二人は見覚えが無い。


「お待たせ致しました。リョーマです」


「おお来たか」


父上の声に二人が立ち上がった。

一人は60代位の老人だ。小柄で白い髭を長く生やしている。極東きょくとう辺りの着物姿であった。

もう一人は30代後半位の男性で長身痩躯(そうく)だが筋骨逞きんこつたくましい感じだ。同じような着物姿で腰には刀を差している。

今日城を出た時に言っていたオレの客ということかな。誰だろう?


「これは・・・・・。ご立派になられて・・・・・」


老人の方が目頭を押さえ嗚咽おえつを漏らしている。


「誠に・・・・・」


30代の方も目を潤ませジッとこちらを見つめていた」


やがて二人して片膝を折り拝礼はいれいをした。

オレは面食らって呆然とする。

拝礼はいれいってなぜ?


「リョーマこちらは北条殿と秋山殿だ。島嶼諸国とうあしょこく連合の宗主国そうしゅこく櫻倭おうわからお前を訪ねて参られた」


老人の方が北条殿、30代位を秋山殿と父上から紹介された。


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