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私を殺すはずだった裏社会最強の殺し屋に、溺愛されてます  作者: NIKE


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第4話 恋人ごっこを教えて



――気づけば、お互いの鼓動が伝わるほどの距離だった。


息が、ぶつかる。


彼が息を吸えば、

彼女の吐いた空気が、そのまま喉に触れてしまいそう。


アングリーは思わず息を止める。

彼の呼吸の音が、やけに近く聞こえた。


ジュードは、ほんの一瞬だけ眉を寄せた。


――近すぎた。


そう気づいたのは、彼自身だった。


だが、もう下がれない。


 彼は何事もなかったように、指先を伸ばし、

アングリーの肩にかかっていた一房の髪を払った。


指が触れたのは、一瞬。

それだけで、彼女の背筋が、びくりと震える。


同時に、ジュードの喉が、わずかに鳴った。


 (……くそ)


 体温が、思ったよりも近い。

甘い香りが、肺の奥まで入り込んでくる。


「……まず、こうだ」


声は落ち着いているふりをしていたが、

語尾が、ほんの少しだけ低く沈んだ。


「こ、こう……?」


「動くな」


 そう言って、彼はアングリーを抱き留めた。


ほんの数センチ。

それだけで、唇が触れてしまいそうな距離になる。


だが、触れない。


触れないまま、止める。


「恋人ってのは……」


言葉が、続かなかった。

生唾を飲む。


彼は視線を逸らしたまま、続けた。


「これくらいの距離に、居る」


 アングリーの心臓の早鐘が、

彼の胸に気づかれてしまいそうなほど、うるさい。


ジュードは一瞬、目を伏せた。


平静でいるつもりが、

思いがけず、呼吸を乱されていた。



――それ以上近づいたら、もう二度と、戻れなかった。


 その僅かな境界線を、

ジュードはぎりぎりで踏みとどまっていた。


妙に長い沈黙が落ちた。

息を吐く音すら、重なるのが怖い。


アングリーがわずかに強く息を吐き出した瞬間、

ジュードの指先が、ぴくりと反応した。


「……じっとしてろ」


叱るような声だったが、

どこか焦りが混じるように掠れていた。


彼は視線を合わせないまま、

ゆっくりと手を伸ばした。



 ジュードは無造作に手を伸ばした。

指先が、彼女の手首に触れる。


掴む、ではない。捕まえる、でもない。

這わせるみたいに、そっと。


アングリーは無意識に身じろいだ。


「えっ……」


「逃げんな」


 そう言って、彼は彼女の指を

一本ずつ解いていく。


まるで、壊れものを扱うみたいに、優しく。


指と指が絡んだ瞬間、

アングリーの視界が白くなる。


 彼は、握る力をほんの少しだけ弱めた。

逃げられる余地を、残すために。


それなのに。


アングリーの指は、離れなかった。

絡めたまま、ぎゅっと返してくる。


その小さな力に、

ジュードの表情が、一瞬だけ崩れた。


「……離すなよ」


ぼそりと落ちた声。


それは命令ではなかった。

自分に言い聞かせてるみたいな声だ。


「恋人なんだろ」


 その一言で、アングリーは完全に言葉を選べなくなった。

ただ、無言で頷く。


頬が、熱い。

息の仕方もわからない。


「それから」


ジュードは、彼女の手を繋いだまま言う。


「無理にどうこうしようとしなくていい」


「……」


「隣にいれば、それでいい」


彼は少しだけ視線を逸らした。


「……俺は、それで十分だ」


アングリーの胸が、きゅっと縮む。


「……ねえ、ジュード」


「何だ」


「それ、慣れてるやり方?」


からかうように聞いたつもりだった。

ジュードは一瞬、言葉に詰まる。


「……さあな」


 素っ気ない返事。耳まで赤い。

けれど、繋いだ手だけは離さなかった。

アングリーは、思わず笑ってしまう。


「ね」


「……何だよ」


「恋人ごっこが嬉しいんじゃないの」


まっすぐ、彼を見る。


「ジュードだから、嬉しいの」


ジュードは、完全に動きを止めた。


数秒。


長い沈黙に包まれる。


逃げ場がなかった。


ジュードは目を伏せ、低く呟く。


「……お前、それわかってやってるだろ」


その声は、どこか引きっていた。




「ふふ」


思わず、笑みが零れる。


「そうね。

 でも、今は恋人でしょう?」


ジュードは目を逸らし、ぼそりと言った。


「……三日間だけだぞ」


「知ってるわ」


それでも、彼女は幸せそうだった。


――そう、三日間だけだ。


ジュードは自分に言い聞かせた。


三日間だけの、ごっこ遊びだ。


そうでなければ、

こんな距離で居られるはずがなかった。


 それでも。

繋いだ手の温度だけが、

どうしても、現実だった。


 初日の午前は、

ただ同じ部屋で、二人で同じ時間を過ごした。


それだけで、

二人世界は、少し明るくなっていた。





「……続きが、今すぐ読みたい」


そう思ってくださった方へ。


実はカクヨム版では、この先の「甘くて危険な3日間」のエピソードを一足先に公開しています。


第5話:恋人として帰りを待つアングリー https://kakuyomu.jp/works/822139844041917371/episodes/822139844103896832




第8話 甘いキスのおねだり https://kakuyomu.jp/works/822139844041917371/episodes/822139844129107646




殺し屋の少年が、少女に絆されていく過程を一気読みしたい方は、ぜひこちらから覗いてみてください。




【続きはこちらからすぐ読めます↓(カクヨム)】


https://kakuyomu.jp/works/822139844041917371

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