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【三十一話】 出発前夜①

 演習場を後にしたドラグとシャルは、王宮に設けられた自分たちの寝泊まりする部屋へ向かっていた。


「すごかったです師匠!目の前で何が起こっているのかさっぱりでした!」


 目を輝かせながらドラグを見るシャル。その背中の斧は、やはり何度見ても体に釣り合っていない。


「あの二人、相当強かったよ。あ~疲れた」

「それにしても、あの二方を相手にあんなに余裕でいられるなんて、やっぱり師匠はすごいんですね」

「あの二人のこと知ってるの?」

「え、逆に知らないんですか!?」


 驚きながらドラグにそう問うシャル。


「ヴィスタ・ヴォルフ。ヨルト・ミルニル。どちらもギルドに加盟している冒険者の中でトップクラスの一級冒険者ですよ!一人でA級モンスターを何匹も討伐したり、これまでも幾度となく難関クエストを達成してきた、超一流冒険者です」

「へぇ~、そうだったんだ」

「へぇ~、って・・・」


 一生懸命ドラグに二人の偉大さを開設するシャル。その言葉を聞いても他人事のようにあっけらかんとしているドラグ。


「そんな二人を相手にして平然としてるなんて、師匠って一体何者なんですか!?」

「普通の冒険者だって。あれ、部屋どこだっけ?」

「普通って・・・。この廊下の奥から三番目の扉です」


 相変わらずサラッとシャルの言葉を受け流すドラグ。


 そして、


「よし、ここが俺らの部屋か。それにしても本当に広いな、この建物」

「王国一の巨大建築物ですから」


 ようやく二人は自分たちの部屋にたどり着く。

 ここまで歩いてきた廊下は、まさに王宮というべき豪華な装飾がされていた。床には赤いカーペットが敷かれ、それを照らすのは美しいガラス細工を施された美しい輝きを放つランプ。壁にはいかにもという感じの絵画が飾られ、さらには、


「なんていうか、このドア、すごいですね、師匠」


 そのドアには彫刻が施されていた。よくよく見れば、廊下にあるドアすべてに彫刻が施されている。


「まぁ、とりあえず入ろっか」

「はい」


 二人は、これから一晩寝泊まりをする部屋なのにも変わらず、恐る恐るそのドアノブに手をかけ、ゆっくりと開く。


 そのドアを開いた先、二人の目に飛び込んできたのは


「「・・・!」」 


 廊下同様に豪華すぎる客室の姿であった。

 高い天井には豪華なシャンデリアが。先ほどまでいた客間ほどの大きさではないもののキラキラと輝くその姿は負けず劣らず美しい。ベットもしっかり二つある。


 ただ寝泊まりするだけの部屋なのに、無駄に豪華である。


「僕、こんな部屋に泊まるの初めてです!」


 そういうとシャルは、二つあるうちの一方のベットにかけ寄り、そのままうつ伏せの状態で飛び込んだ。


「あ~、柔らか~い」


 その表情をとろけさせるシャル。その様子を見てドラグは、


(か、可愛い・・・男なのに、男なのに!)


 四つん這いになり、その右拳を床に打ち付けていた。

 全く、相変わらずアホである。


 すると、唐突に部屋のドアをノックする音が、部屋に鳴り響いた。


「ん?だれだ?」

「師匠、僕が出ます」


 シャルが素早くドアの方へ移動し、ドアを開ける。その先にいたのは、


「よう!元気にしてたか?シャル」

「お父さん!」


 シャルの父、ダンの姿だった。


「ダンさん!そうか、そういえば王国軍の指導役をやってるんだっけ」

「会いに来てくれたんだ!」

「驚いたぞ!こんなまた早くに会えるなんて」


 ひしっと抱き合う親子。

 それを見てほほ笑むドラグ。

 シャルとダンは、家族との再会をかみしめながら、しばらくの間そのまま抱き合った。そしてしばらくして満足したのか、ダンがドラグの方を見た。


「王宮に来たということは、ミッションか」


 真剣な声色と表情でそう言うダン。


「知ってるんですか、ダンさん。極秘のはずじゃ?」

「内容は知らないけどな。ただ、今回のはかなり重要らしいというのは聞いた。大丈夫なのか?」

「まぁ。調査的なものだから、何とも言えないけど、まぁ、大丈夫だと思いますよ」

「まぁ、俺がドラグの心配をするのもおかしな話だけどな。ドラグは俺より強いんだから」


 そう言って豪快に笑って見せるダン。


「それでダンさん。今回シャルを連れていきたいんですけど」

「あぁ、かまわないよ。シャルはドラグの弟子なんだから。よろしく頼む」

「わかりました」


 ダンはシャルの頭をなでながらこう言う。


「がんばれよ、シャル。お前も男だ。この旅で立派な冒険者になって見せろ」

「はい!お父さん!」

「いい返事だ!」


 またワッハッハッ!と笑うダン。


「そうだドラグ。そろそろ夕食が出される。一緒に行かないか?」

「いや、俺は少しこの部屋でゆっくりしていこうと思います。シャル、ダンさんに案内してもらいなよ。せっかくだし」

「いいんですか!?」

「うん。全然いいよ」

「ありがとうございます」


 喜ぶシャル。ダンと一緒にいられることがうれしいのだろう。


「それでは行ってきます!師匠」

「夕食はたぶん誰かが呼びに来ると思う。思う存分ゆっくりすればいいさ!」

「はい、そうします」

「じゃあ行こうか、シャル」

「はい、お父さん!」


 そうしてダンとシャルは王宮探索へと出かけた。


 客室に一人となったドラグ。するとドラグは急に真剣な表情をして、そこにいる誰かに話しかける。


「のぞき見はいけないんじゃないかな?」


 すると部屋の奥、窓の外から急に声がした。


「ばれてたか~、気づかれてないと思ってたんだけどなぁ~」


 少し残念そうな表情をしながら、窓から現れたのは、桃髪の少女、パルミだった。

 華麗な身のこなしで部屋に侵入するパルミ。


「そりゃ窓の外からじろじろ見られてたら気づくだろ」


 パルミはパンパンと身だしなみを整えて、改めてドラグと向かい合う。


「作戦失敗だな~」

「なんでこんなことしたの?」

「こういうのってなんか~、面白いじゃん?」

「そんな理由かよ・・・」


 えへへ~、と笑うパルミにため息をつくドラグ。


「ねぇ、いっしょにご飯食べに行こう?」

「なんでそうなる」

「いいからいいから~」

「いや、ちょ、おい・・・!?」


 問答無用で連れていかれるドラグ。

 この後の夕飯がどういうものになるかも知らずに。


~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~


 その頃、王都近くのある森の中。


「どうだった、お前たち」


 そこにはルディウスの姿があった。


「まずいですぞ、ご主人。この王都付近の分布もだいぶ変化してきている」

「そうか・・・ありがとう。戻っていいぞ」

「御意」


 そういうと、ルディウスと話していた何かは煙のように姿を消した。


「参ったな。いよいよ来たか、魔王軍」


 そういって険しい表情をするルディウス。


「今回のミッションは長丁場になりそうだな」


 丸い月が、その頭上で森を照らしていた。

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