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【二十九話】 少年、国王と対峙する

 王宮の大廻廊をまっすぐ進むと、大きな扉が目の前に現れる。 その扉の先には、この国の王がいる。


 この国、グランド王国は、この現代において最も強大な力をもつ国のひとつである。

 しかし、このグランド王国は、ほんの 一世代前まで存在すらしていなかった。


 一昔前。今、齢70のものがまだ18~20ほどの頃のこと。


 今グランド王国のある場所に人々は住んではいなかった 。そこにあったのはなにも開拓されていない広大な森と、数々の魔物の巣窟であった。


 人々はその森を「魔王の森」と呼んだ。


 森に接する国の人々は、魔物の驚異に怯えながら、「きっとあの森には魔物を統べる魔王がいるんだ」と考えはじめたのだ。

 そしてまた、「誰かその魔王を倒せば魔物はいなくなる、と信じ始めていた。


 そこに現れた勇者が、後にこの地にグランド王国を創立し、王となる男、「ジン・アルバート・グランド」である。


 1つの説である。


 この男、ジン・アルバート・グランドは魔王の森の最深部にいた魔王を倒したそうだ。

 すると、魔物は消えることはなかったものの、魔物の凶悪さが弱まり、森のなかに人々が介入することが可能になった。

 ジンは、魔王を討伐したのち、多くの魔物を狩り、道を作り、そして森の中心部に大きな城を建てた。それが今の王宮なのだそうだ。

 王宮建設後、ジンを中心とした人々は、次々に街を作り、国を建てた。それが、「グランド王国」である。

 その国の勢力拡大はとどまることを知らず、今現在、最も強大な力をもつ国の1つになっている。


 ドラグとシャルを含める一行、計七名は、いま、魔王を倒した勇者と対峙していた。


「今回のパーティーメンバーをお連れしました!」

「ご苦労」


 目の前の豪華な装飾を施された玉座に深く座った老人は、ゆっくりとした、そして聞いていて心地の良い低音の声で、フードの言葉にそう返した。

 その老人は、白くて長いひげを生やし、その白髪の頭には王冠をかぶり、黒を基調とする装備を身に着けていた。

 そして何より、大きかった。二メドルは優に超えているだろう背丈に、その白髪には似合わない、マントの間から垣間見える剛腕。その風貌は、まさに伝説を感じさせるものであった。


「我は、グランド王国国王、ジル・グランドである。名乗れ」


 ドラグたちの目の前にいる老人、いや、老人という言葉は不相応かもしれない、目の前にいる国王は、またしてもゆっくりとした口調でそう言った。


 すると、ドラグたちのうち、一番右にいたフードをかぶっていたものが、突然その場にひざまづいた。


「ルディウス・シグマ。ここに」


 それに続くように、エルフ、ドワーフ、獣人、桃髪の少女の順にひざまづく。


「ヨルト・ミルニル。ここに」

「ゴウ・バイス。ここに」

「またやんのかよ・・・・。ヴィスタ・ヴォルフ。ここに」

「パルミ・テルミス。ここに~」


 一瞬目の前で起こったことに戸惑ったドラグであったが、その流れに従ってひざまづき、名乗った。


「えっと・・・・ドラグ・ベン。ここに?」

「し、しししっ、シャルロット・ロー・ランドここにぃ!?」


 ドラグの名乗りの後に、パニック状態で、声を裏返しながら叫ぶシャルの名乗りが部屋に鳴り響く。


 すると、玉座に座っていた国王は首をかしげながらフードを被っているルディウスに声をかける。


「ルディウス、最後のものは?」


 その問いに、ドラグは納得した。

 シャルは直々に王から呼ばれた訳ではないのだ。


「すみません。俺の弟子です。連れてきちゃダメでしたか?」

「そうか。いや、構わん」


 国王はそう言うと、ゆっくりと玉座から立ち上がり、そして話した。


「今日お前たちを呼んだのは、言わずもがな、ミッションの為である。かなり厳しいものだ。覚悟はあるか?」


 国王は真剣な面持ちで話す。


「覚悟のないものは、今、ここから去って構わん」


 そういう国王。それに対して、ドラグたちは


「・・・・・・・・」


 その場から一歩も動かなかった。


「そうか。では、ルディウス!」

「承知しました」


 国王の声に従い、ルディウスが王の前へと進み、そしてクルリとドラグ達の方を向いた。


「それではここから私が、今回のミッションのパーティーリーダーを務める、王都調査部隊隊長、ルディウス・シグマが、ミッションの内容について説明する。みんな、立ってくれ」


 言われたとおりに立ち上がるドラグたち。


「さて、それでは今回のミッションについて話していこうと思うけど、単刀直入に言って、今回のミッションの目的は、『魔物の生息域が変化している』という報告について調査するということだ。みんなの中にも気付いた人がいるんじゃないかな?」


 ドラグの頭のなかにあることが思い浮かんだ。

 それはイースの街での事。オークの森に現れたバグベアー。街に攻め混んできたジャイアントボーン。それらの事象は、はっきり言って異常であり、非常に危険なことであった。


 国営ギルドは、魔物のでる範囲に「適正レベル」というものをつけている。例えば、イースの街の周りでいえば、オークの森は適正レベル1、暗い針葉樹林であれば適正レベル15という感じである。そして冒険者たちはそれをもとに、自分達の狩り場を選ぶのである。


 しかし、「魔物の生息域が変化する」ということは、その「適正レベルの値が変動する」ということを意味する。


 それはつまり、レベル30の冒険者が適正レベル30の狩場に行ったのにも関わらず、魔物の生息域が変動して、実質の適正レベルが50になってしまい、実力が及ばず危険な目に遭うなんてことが起きかねない、ということ。

 それは必然的に、冒険者の死亡率を格段に上げる。


 ルディウスは話を続ける。


「今だ確認された魔物の生息域の変化は、どれも微小なものだったけど、全部、確実にギルド設定しているの適正レベルを上げるものばかり。つまり魔物が表層部に上がってきている、ということ」


 このグランド王国には、強い魔物の集まる場所、「魔境」というものがある。魔物は、そこを中心として、離れていけば離れていくほど弱くなるという傾向がある。

 そして、弱い魔物が辛うじている場所、それを「表層部」という。始まりの街イースがその代表例である。表層部は、つまりは魔物のいる境界線。この境界線を人間が追いやっていけば、いつか魔物は滅び、魔物たちが推し進めれば、また魔物の世が世界に蔓延ることになる。

 表層部に魔物が上がってきているということは、つまり、魔物が勢力を拡大し、この境界線を推し進めようとしている、と言うことなのだ。


「魔物が勢力を拡大したのは、国王がこの地を治めてから一度もなかったこと。一体何が起きているのか全くわからないんだ。

 今回のミッションはわからないことが多すぎる。策をうとうにも、何と戦うのか、何をどうすればいいのか全くわからない。手探りのミッションになる。みんな気を引き締めてほしい。


 それじゃ具体的な話だけど、今回のミッションの内容は調査だと言ったけど、どこを調査するのか、ってことを言ってなかったね。今回調査するのは、ここから馬車で一日、一番魔物の生息域が変化した『ディオ・グランデ』。

 ここは今まで10体程度の上級モンスターが中級以下の魔物を統率している、適正レベル65程度のB級探索地だったんだけど、最近急激に上級モンスターの数が増えている。とても危険な状況なので、魔物の生息域の変動の原因の調査と同時に、上級モンスターの数減らしをするからよろしく。出発は明日の朝、それまでにみんな装備の点検やら充填やらを済ましておいて欲しい。

 これでとりあえず説明は終わりだけど、何かあるかな?」


 どうやら言うこと全部言ったようで、ルディウスはドラグたちにそう問う。


「・・・どうやら何もないみたいだね。じゃあ明日の朝に、城の門の前に集合。とりあえず全員分の寝室は王宮に準備してあるけど使っても使わなくても構わないよ。それじゃ解散!」


 その言葉を聞いて思い思いに行動しはじめるドラグたち。


「な、なんか、スゴいことになってますね・・・師匠」


 スケール感をつかめないでいるシャルは、口を開けたままドラグを見上げた。


「うん、そうだね」


 ドラグはシャルにそう返しながら、心のなかでこう考えていた。


(あのエルフちゃんと桃髪ちゃん、レベル高い!超可愛い!)


 そんな下らないことを考えているドラグの左肩に、不意に誰かの右手が乗せられた。


「おい、面貸せ」


 そうドラグに言ったのは、狼の獣人、ヴィスタだった。

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