【二十七話】 少年、弟子と王都へ
始まりの街、イースに朝がやって来た。
東から太陽が上って、街を明るく照らし出す。
天候は晴れ。心地のよいそよ風が吹いている。居心地のいい一日になりそうだ。
冒険者の街でもあるイースのメインストリートには、この時間には人がほとんどいない。なにせ冒険者たちは夜遅くまで食って飲んでを繰り返し、夜が明ける直前まで飲むのだ。冒険者は、朝前にちょうど寝ることが多い。そのため、街の道には人影が極端に少なかった。
そんななか、メインストリートの端、南の門に一人、ボケーっとしている少年がいた。
ドラグであった。
ドラグは今、空を流れる白い雲を目で追っていた。しかし目的は別にある。
ドラグは今日、王都へ行くのだ。
しかし、王都に一緒に行くシャルが来ないため、ここで待っているのだ。
ドラグがしばらくそうしていると、街の方から急いで走ってくる人が一人。
「遅れてすいませんっ!」
シャルであった。
シャルは、ドラグのもとまで駆け寄ると、膝に手をついた。
「すいません、待ちましたか?」
息をきらしながらドラグにそう聞くシャル。
「ううん、待ってないよ。いま来たところ」
そう返すドラグ。ドラグがそれを言ったあと、あっ、なんかこれ恋人同士みたい、と不覚にも思ってしまったことは秘密である。
「言われた通り、防具は外してきましたけど・・・・本当に大丈夫なんですか?」
シャルが不安そうにドラグに聞く。
シャルの装備は、ドラグに似た軽装である。アーマーは無く、背中に自分の背丈ほどある戦斧を担いでいるだけだ。因みにこの、昨日出来たばかりの戦斧の姿はと言うと、柄はジャイアントボーンの硬骨を加工したものに、魔物の皮を巻いて持ち手を作り、刃は鋼。とてもシンプルであるが、その刃の輝きが、その切れ味は業物であることを語っている
「大丈夫、むしろ重装備にすると長旅だと疲れちゃうから」
「なるほど!」
シャルの準備が整っていることを確認して、ドラグたちはは門を出た。
「とりあえずは隣の街まで行こうと思うけど、その間に魔物を倒しながら、シャルの新しい武器の試し切りと行こう」
「はい!師匠!」
二人は軽い足取りでイースの街から旅立った。
~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~
まず二人が足を踏み入れたのは、みんなご存じ、低級モンスターの巣窟、オークの森。
ドラグはシャルに、とりあえず新しい武器の感覚を覚えてほしかった。そこで、どうやったって倒せそうなオークの森にいる低級モンスターをまずは相手取らせようと思ったのだった。
「とりあえずここで止まろう」
なんの前触れもなくシャルにそういう。
「?分かりました」
なぜ止まるのか分からないと言った様子で首をかしげるシャル。
「とりあえずここで、シャルの力試しをしよう」
「!?」
急なことに一瞬驚くシャル。しかし、
「そっか。僕の修行の旅出もあるんですもんね・・・。分かりました」
なにやら自己完結したようである。
「よし、じゃあ、その斧構えて?」
「はい!」
ドラグに返事を返したシャルは、背中にある斧の持ち手を握りしめ、前に持ってくる。そして、その斧を両手に持ち、剣を構えるのと同じ持ち方で、その戦斧を構えた。
シャルが斧を構え終えたのを確認すると、次にドラグはこう言った。
「じゃあ、その斧を地面に思いっきり叩きつけてみて?」
「じ、地面にですか!?斧が壊れたりは・・・」
「ミユの武器はそんな柔なものじゃないから大丈夫。一回やってみ?」
「わ、分かりました・・・」
シャルは、不安を抱えたまま、しかしドラグの言葉にしたがって、斧を大きく振り上げる。そして、
「おりゃぁーっ!」
ブンッ!
一思いに斧を地面に降り下ろした。すると、
ドゴンッ!バキバキバキ!
シャルが打ちつけた部分がクレーターのように凹み、周りにどんどんと亀裂が入って行った。
「え!あ、うわっ!」
自分の足場まで崩してしまったシャルは一瞬体勢を崩してしまうが、
「ほっ」
ドラグが素早くシャルを抱きかかえて亀裂の入っていない場所へ離脱する。
しばらくの間言葉を失っていたシャルは、ドラグによって地面におろされると同時に亀裂を指さしながらこう言った。
「あれ、僕がやったんですか・・・!?」
「そうだよ。シャルは俺と会うまでに結構な量のモンスターを狩ってたみたいだから、かなりレベルが上がってたんじゃないかな?ちゃんとした装備をすれば、このくらいのことができてもおかしくないんだよ?」
ドラグはシャルにそういった。
実は自分がかなり強かったとドラグに言われたシャルは、まだ信じられずにいたが、驚きながら喜んだ。
「僕が強い・・・?」
「ここら辺の冒険者の中では真ん中ちょい上くらいかな?その歳でそれは、たぶんすごいと思うよ?」
「本当ですか!?」
「うん。だから、ここで十匹くらい魔物を相手にして、魔物との戦いに慣れようって予定。長い時間ここにはいないよ。すぐに隣の街に移動する」
「そうなんですね!」
「よし、じゃあさっそく戦ってみようか」
ドラグがそういうと、時を見計らったかのように低級モンスターのグリーンドラゴンが姿を現す。
「とりあえずあいつ倒してみて」
「わかりました!」
そういうとシャルはバッ!っとグリーンドラゴンにかけより、その首を斧で一文字に切断した。
なんの詰まりもなく、まるで豆腐を斬るかのようにスパッと首をはねた。
間もなく、グリーンドラゴンが姿を灰へと変える。
あっという間の出来事だった。
魔物を倒した本人でさえ何が起きたかわからないといった様子だ。
「・・・僕、今この魔物倒しました?一人で?」
「うん。なんか、予想以上にあっさりとね」
「・・・」
流れる沈黙。それを破ったのはシャルの嬉声であった。
「やった!ちゃんと魔物倒せた!これで僕も冒険者の仲間入り!?」
目の前で跳び跳ねながらながら喜ぶシャルをみて、ドラグは心の中でこんなことを考えていた。
(ドワーフの血で受け継いだ剛腕と、パルゥムの血で受け継いだその小柄な体による俊敏さ。強くて速い。これはすごい男になるかも!)
将来有望なシャルは、この後次々に魔物を屠っていった。




