二章【二十五話】 少年、命を受ける
流れは全く変わりませんが、ここら辺から第二章的な話になってきます。
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ジャイアントボーンの率いる魔物たちの襲撃から5日経った。
街の人々は既に混乱から抜け出していた。ドラグがすぐに魔物を一掃したために、街に大きな実害がなかったからだろう。
ただ、今までと少し違うのは、街の人々がドラグのことを知ってしまったということだろう。
知ってしまったと言うのは、何も顔名前姿形全て明確に覚えられたというわけではない。「魔物から街を救った、見た目駆け出しの少年がいる」という程度のことだった。
さて、そんな街の、謎の救世主になってしまったドラグは今何をしているのかというと、
「あいかわらずカレンさんのご飯は美味いなぁ!」
集いの酒場で昼食を食べていた。
街を救ったドラグであったが、今までと何ら変わらずナンパをしては、集いの酒場で腹を満たしていた。
本日のドラグの成果?もちろん、0人だ。
「なんでこうも惨敗するの・・・・」
飲み物をのみながらそう呟くドラグ。
「まだ懲りずに女の子に声かけてるの?」
その声に反応したのは、キッチンで皿を洗っている。料理はしていない。なにせこの店に最近出入りしているのはドラグのミユ程度なのだ。
「なら格好変えたら?」
「前に格好を思いきって変えてみたんですよ。全身ガッチリ覆ったアーマーつけたりとかしてみたんですど・・・・」
「ドラグくんがアーマー?似合わないな・・・・」
「そうでしょう?それになにか違う気がしてすぐに戻したんですよ」
どうやらドラグには、現在のスタイルを変える気はないようだ。
そんなことを話していると、店の奥にある階段が唸りをあげはじめた。
ギシギシギシギシッ
「師匠!今日も探索には行かないのですか?」
シャルが階段から現れた。
シャルはドラグが魔物を退治した次の日から今日までずっと、早く修業をしたいというような顔をドラグに向けていた。
しかし、ドラグにはいま、森へ向かう目的がない。大量の金貨を手に入れてしまったためだ。
それに、
「シャルはまだ武器もってないだろう。武器が手に入ってからにしなって」
シャルの武器はまだミユが製作中だ。なのでシャルはいまだに自分の武器を持っていない。そのためにドラグは、ここ最近シャルを森へは連れて行っていないのだった。
「でも、僕の武器はいつできるかまだ決まっていませんし・・・」
実はシャル、ミユがもう既に自分の武器を作ってくれているということをまだ知らない。
「まぁ、いつかちゃんとその時が来るから待ってなって」
「・・・わかりました」
そうはいったものの、まだ納得が言ってないような顔をするシャル。ゆっくりとドラグの座る席に近づき、隣の席に座る。
「そういえば、街中ドラグさんの話で持ちきりでしたよ」
「え、うそ!?どんな?」
「街の救世主とか、謎の少年とか」
「おぉー・・・!」
「あと、別の話でナンパ男っていうのもありました」
「・・・・・」
~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~
そんな店内の様子をうかがう謎の影が三つあった。
「あんなどこにでもいそうな少年で本当にあってるのか?」
「ご主人様に言われた人相に当てはまるのは、子の街にはこの少年しかいないわよ、たぶん」
「たぶんではいかんだろうに!」
何やらもめているようであった。
「でも、背格好もそのままだし、たぶんそうでしょう?」
「まぁ、いそうでいないよな。あんな典型的な初心者。実際は手練れのようだが」
「よし、行くしかないであろう!」
何やら決心したようであった。
~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~
相変わらずカレンの飯を口の中に書き込んでいるドラグ。その様子を皿洗いしながら眺めるカレン。ドラグの横で、ただ姿勢よく座っているシャル。
集いの酒場で最近よくある状況だ。
そんななか、何の前触れもなく店のドアが勢いよく開かれた。
バァンッ!
「たのも~っ!」
突然の来客に驚くカレンとシャル。その目線の先にいたのは・・・
「・・・・・・猫?」
「・・・・・・猫ね」
三匹の猫であった。
「それ、ドアを開ける前に言うことだよ、ミケ!」
「シロの言うとおりだ」
「むっ?そうなのか?」
ドラグたちの目の前にはとても奇妙な光景が広がっていた。
「猫がしゃべった!?」
椅子から転げ落ちそうになほどに身をのけぞらせながら、思わず叫ぶシャル。
ドラグたちの前で、三匹の猫は平然と人の言葉を話していたのだ。
「使い魔か」
その猫たちの様子を見て冷静にそういうドラグ。
「そうみたいね」
カレンもドラグの言葉にそう返す。
現役時代は、冒険者の中でも手練れの部類に入っていたと言うカレンとドラグは、比較的落ち着いていた。
「使い魔?」
シャルが首をかしげながらカレンに問う。
「使い魔ってい言うのは、一部の特殊な魔法、召喚魔法が使える人達が連れている、なんていうかな、戦闘補助ペットみたいなものよ」
「ペットとは失礼な!」
カレンの答えが気に入らなかったのか、横に並んだ三匹のうちの真ん中の三毛猫が飛び跳ねながら訴えた。
「で、どこぞの召喚士の使い魔様が何用で?」
モグモグ
食べることをやめずにドラグがそう問う。食べながら話すなんて、行儀が悪いが、それだけカレンの料理がおいしいのだろう。
その問いを聞いて、さっきまで飛び跳ねていた三毛猫、ミケは、一度咳払いをしてこう言った。
「ごほん・・・。貴殿に用がある!」
ビシッ!
自分の右前脚のかわいらしい肉球をドラグたちに見せつけるミケ。どうやら指をさしているつもりのようだ。
その肉球が指した先にいたのは・・・
「・・・え?僕?」
シャルであった。
しかしミケは、
「違う!其方ではない!其方の奥の男の子だ」
「・・・え?俺?」
改めて言葉で人を指定した。ドラグであった。
シャルと全く同じ反応を見せながら間抜け顔を猫たちに向けるドラグの手はいまだに料理を口へと運んでいた。驚くべき食い意地の張り様である。
「そもそも其方は女子であろう?」
「いや、僕も男なんですけど」
「はっはっはっ!冗談を!」
「本当ですって・・・」
シャルが盛大に勘違いをされたところでようやくドラグが食事を終えた。
「で、俺に何の用?」
カレンに食べ終わった食器を渡しながらドラグは猫たちに聞いた。
すると猫たちは急に真剣な顔をし(猫の表情などよくわからないが)をし、ドラグを真っ直ぐ見据えてこう言った。
「王都に来てもらいたい。王がお呼びだ」
「「!?」」
想像の範疇を超えた言葉に、思わずカレンとシャルが息を詰まらせた。
「王様!?」
シャルが上擦った声で猫たちに問う。
「いま、ある事情により、この国は貴殿のような強者を必要としている。貴殿には王都まで我々と同行願いたい」
どうやらこの猫たち、すなわちこの猫たちのご主人様は、ドラグの強さを知っているようだ。
(この前ので目をつけられたかな?)
ドラグがそのようなことを考えながら、猫たちとの会話を始める。
「ある事情ねぇ。強者が必要ってことは、なんか危なっかしいことなのかな?」
「それは、このような場所では口に出来かねる」
「なるほどな・・・」
左肘をカウンターテーブルにつき、その手に自分の顎を置いて何かを考えるようなそぶりを見せるドラグ。
「し、師匠・・・どうするんですか?」
あまりに規模の大きい話についていけていないシャルは、とりあえずドラグにそう聞いた。
「それなりに礼は出すと王は言っている」
ミケがドラグに対してそういう。
王からの謝礼となれば相当な額になるということは誰でも容易に予想がつくだろう。軽く家が買えたりするかもしれない。
しかしドラグは金など求めてはいなかった。何せ今となっては千枚の金貨をドラグは持っているのだから。
ドラグは手招きをして猫たちを自分の足元まで来させる。
素早く移動する三匹の猫。その動きから、この猫たちのご主人様は相当な実力の持ち主であることがうかがえる。さすがは王からの伝言を受けるだけのことはある。
ドラグは猫たちに、耳打ちをするようにこう言った。
「礼は良いからさ、女の子紹介してくれない?」
とことん女好きの大馬鹿者であった。
「・・・承知」
猫にあきれ顔(猫の表情など(ry)をされたが、ドラグの要求は通ったようだ。
「では、同行してもらえますな?」
「うん!でもいろいろ確認したいこともあるし、二、三日待ってくれない?」
「なるべく早急に頼みたいのだが・・・承知。では、我々はしばらくこの街にとどまってい・・・」
「いや、王都までの行き方は分かっているから、大丈夫だよ」
「左様か。では先に王都に戻って待っております」
「ありがとう」
「では」
そういうと猫たちは開けっ放しにしていた店のドアから素早く帰って行った。
とんとん拍子で話が進み、ドラグは王都に向かうことが決まった。
急なことに、話についていけず、カレンとシャルは口を開けたまま唖然としていた。
当の本人、ドラグはと言うと
「やったね!これで女の子とお知り合いになれる!」
一人、馬鹿なこと気を昂ぶらせていた。




