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【二十四話】 少年、弟子に武器が装備される

 何事もなく街の中心部に戻ってきたドラグとシャル。

 街の人々はいまだに魔物の襲撃という衝撃的な出来事に混乱しているようで、道を走り回ったり、泣いたり、怒鳴ったりと大騒がしだった。


 そんな人々を横目にドラグは「鍛冶屋 デュイス」に入って行った。


「ミユちゃん、戻ったよ~」

「ドラグ!?」


 すぐに戻ってきたドラグに驚くミユ。何せドラグが魔物の襲来を耳にして店を出て行ってから、まだほんの少しの時しかたっていないのだ。


「魔物はどうした?」

「ん?倒したよ?」

「倒した!?ここから出て行ってからまだ全然時間がたってないぞ?」

「うん。所詮、オークの森の低級だしね」

「所詮・・・・」


 唖然としながら、ミユは目の前の男の実力を測りかねていた。

 ドラグはいったい何者?というのがミユの心の声であった。


 何やら戸惑っているミユをドラグはスルーして、鍛冶場の中の、ミユがいた机(いまだに大量の金属が載った)のもとへ歩きながら、ミユにその右手に持っているものを見せながらこう言った。


「そういえばさ、ミユ。俺さっき偶然これ拾ってさ。こいつを柄に使えないかな?」

「ん?これは!ジャイアントボーンの硬骨じゃないか!?どこでこんな高級品を」


 『ジャイアントボーンの硬骨』


 素材アイテムでも高級品と呼ばれる部類に入る。その骨にはある特定の迷宮や魔物の体内にしか存在しない金属が多く含まれている。その金属を含む素材は、その含む金属の特性を持ち、このジャイアントボーンの場合、硬度がありながらもしなやかで折れにくいという性質を持っていた。

 そのために需要が多い。にもかかわらず、ジャイアントボーンが上級モンスターであるために流通する数が少なく、値段が半端ではなくなっている代物だった。


「さっき魔物の群れの中にいたんだよ。どうやら親玉だったみたいでさ」

「一人で倒したのか!?」

「うん。一匹だったしね。いや~、ドロップしたのは運がよかったよ」


 ミユの問いにあっさりとそう答えるドラグ。

 上級モンスターを一人で倒したということは、基準としてレベル100前後の冒険者相当の力を有しているということ。そんなことをさらっと言って見せるドラグに、ミユは、ドラグってただ者じゃないんだ、と見解を改めた。


「それで、どうかな?言い感じに使えそう?」

「・・・・え?あ、あぁ。見たところ傷もない良物。柄だけに使うのは少々勿体ない気がするが・・・・」

「それは大丈夫だから、気にしないで」

「・・・・分かった。鉄の刃にジャイアントボーンの硬骨製の柄だな。最高のものを作ると約束しよう!」

「ありがとう!」


 ガッチリと握手を交わす二人。その様子を横から何がなんだか分からない様子で見ているシャルは、終始頭に疑問符を浮かべていた。


「なに、あのときのお礼だ。本当にこれだけのことでいいのかと思うのだが」

「いいんだって!武器、よろしく頼む」

「任せておけ!」


 シャルの武器についての話が一段落ついた。魔物の騒ぎは、多少は収まったものの、まだ道からなにやら叫んでいる声もする。

 魔物襲来の騒動のために、店からは客が一人もいなくなっていた。


「それでだな・・・・ドラグ?」


 急にもじもじし始めるミユ。なぜかまだ、ドラグと握手をしたままだ。


「ん?どうしたの」

「その・・・・ドラグはまだ、たくさん素材を持っているのだろう?」

「あぁ、うん。ちょっと待ってて」


 ドラグは、ミユから手を放し机の上に置いてあったマジックバックを手に取ると、袋の口を下に向けた。


 すると、


「まだあったのか!?」


 袋の中からさらに大量の素材が出てきた。


「ま、待ってください師匠!?多すぎます」



 出始めた素材は勢いを衰えることなく、結果的に部屋を金属まみれにしてしまった。


「・・・・ごめん、ちょっと多すぎた」

「ちょっとじゃないです師匠!」


 予想外の出来事に戸惑うシャルと、


「良質な素材がこんなに・・・!?」


 目の前の素材の山に目を輝かせるミユ。


 嬉しそうというか、楽しそうというか、そんな感じの顔を浮かべているミユを見て、ドラグはこう言った。


「これ、全部あげる」

「「!?」」


 まさかの発言に驚きを隠せないミユとシャル。


「いいのか?これだけあれば相当な金になるはず・・・」

「いいのいいの!稼ごうと思えばいくらでも稼げるし、その代わり、また俺とシャルの装備を作ってくれないかな?また素材は用意するからさ」

「そんなことでいいなら何度でも来てくれ!最高の物を作って見せる!」

「頼もしいや」


 どうやら話はまとまったらしい。

 これで当分金属には困らないぞ、とやる気満々のミユ。


 二人のやり取りを見ていたシャルは、話が一区切りついたのを見計らってドラグに声をかけた。


「本当にいいんですか?」

「あれのこと?いいんだよ、たぶん、また取りに行こうと思えばいくらでも取りに行けると思うし」

「いくらでも、ですか・やっぱり師匠ってすごい人なんですね」

「ん?そうなのかな?わからないや」


 あはは、と笑って見せるドラグ。

 シャルとミユの二人は、まだ、その金属が上級モンスターのドロップアイテムであることを知らない。


 その後、金属を鍛冶場のさらに奥にある倉庫にしまったミユは、直ちにたまっていた客からの注文をこなし始めた。修理に製作、数々の武器防具を打っていくミユの腕は、やはり一流と言って過言ではないものだった。

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