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【二十三話】 グランド王国に迫る危機

「し、師匠!勝手にとび出していかないで下さい!・・・あれ?」


 遅れてきたシャルは、目の前の光景を見て動きを止める。


 一面の灰景色。今までそこにいたはずの魔物の軍隊は姿を消し、残るのは大量のドロップアイテムとドラグだけ。


 その場にいた誰もが言葉を失った。街にいる冒険者をかき集めても敵わなかった魔物の大群。それを駆け出しみたいな少年があっという間に一掃してしまったのだから。


 後から来たシャルの声に反応して後ろを振り返るドラグ。


「あぁ、シャル。終わったよ」


 いつも通りの笑顔を見せるドラグにてててっとかけよるシャル。


「終わったよって・・・魔物の大群はうそだったんですか?」

「いや、全部倒した」

「全部!?」


 ドラグのすぐ目の前で、驚きのあまり動きを止めるシャル。


 (全部って、この人数の冒険者さんたちと戦っていたほどに多くの魔物たち全部ってことですか!?信じられない・・・いや、でも師匠ならあり得るかも)


 いろいろと自問自答するシャル。


「一体、師匠って何者なんですか・・・」

「ん~、冒険者?」

「いや、そうですけど・・・・」


 シャルの問いを軽く受け流して、地面に落ちていた「ジャイアントボーンの硬骨」を拾うドラグ。


「いいもの拾ったし、帰ろう?シャル」

「・・・・え、あ!置いてかないでください師匠!」


 唖然としている冒険者たちの間を、ただ街の中心の方向へ歩いていくドラグとシャル。

 その様子を、驚きのあまり口を開けたまま目で追っていく冒険者たち。


 今日、ドラグはイースの街を救った。


 今日も街は平和である。


~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~


 魔物の軍隊が襲来してから数日経ったある日、ある部屋にて二人の男が話をしていた。


「オークの森の魔物の大幅減少は、ある一人の少年が大量討伐していたからでした」


 ローブを目深にかぶった男は、目の前の椅子に座る白髪混じりの男にそう言った。


「大量討伐?いったいどれ程だ?」


 ローブの男に聞き返す白髪混じりの男。


「2~3日に一度、数分間で500体前後ほどです」

「500だと!?」


 思わぬ数字を聞いて、あからさまに驚く白髪混じりの男。


「何者だ、そいつは」

「わかりません。ギルドにも裏ギルドにも加盟していないようで。ただ者ではないと言うことは確かです」

「なるほどな・・・」


 白髪混じりの男はそういいながら自らの顎に手をやる。

 そして、少々何かを考えるそぶりをしてから、またローブの男に話しかけた。


「そこまで重大な要因でなくて何よりだ。ご苦労」

「ありがとうございます。ですが、もう1つ、今回の調査で明らかになった重大な問題がありまして」


 何か含みを持たせながらそう言うローブの男。

 その様子に、何かある、と考えた白髪混じりの男は、ローブの男にこう言った。


「褒美はやる。話せ」

「・・・・・わかりました」


 白髪混じりの男の言葉に満足したのか、口角をあげてそう言うローブの男。


「先ほど言った少年の調査中に、オークの森にバグベアーがやって来ていることが判明しました」

「!?魔物の生息域が何かの要因で変わっているのか!?」

「わかりません。ですが先日、ジャイアントボーンが低級モンスターを連れてイースの街に攻めてきました」

「ジャイアントボーンだと!?」


 思わず立ち上がる白髪混じりの男。


「イースの街は無事なのか!?」


 額に汗を浮かべながら焦るようにローブの男に詰め寄る白髪混じりの男。

 そんな様子の白髪混じり男をなだめながら言葉を続けるローブの男。


「ええ、無事ですよ。でも、あの少年がいなかったら危なかったかもしれないですね」

「あの少年、とは、さっき話していた少年のことか?」

「はい。魔物の大半とジャイアントボーンはその少年が討伐しました」

「それほどに強いのか、その少年は」

「えぇ、強いです」

「そうか。少年に感謝せねばな」


 イースの街が無事であったことに対する安堵と、少年の予想以上の強さへの驚きを心に抱きながら、もう一度ゆっくりと椅子に座る白髪混じりの男。


「褒美は後で何が欲しいか私のじゅうしゃに言え」

「どうも」

「それで、仕事が終わってばっかりでなんだが、もう一度仕事を頼みたい」

「なんでしょう?」

「少年を連れてきてほしい」

「少年を?それはまた、一体何故?」

「少し考えがあるのだ。それと、ギルドで名誉冒険者に指定されてるものも集めてくれ。頼んだぞ、情報屋」

「分かりました、お任せください国王様」


 そうして、ローブの男は部屋を出ていった。

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