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【二十二話】 少年、魔物の軍隊と対峙す

「し、師匠!ま、魔物、魔物の軍隊がっ!?」

「お、落ち着いてシャル?どうしたの?」


 ドラグの足元まできて慌てふためくシャルに、落ち着くように諭すドラグ。

 しかし、シャルはいまだに混乱した状態でドラグに状況を話始めた。


「おお、オークの森の魔物たちが、ぐ、軍隊を作って、街に攻めてきたんです!今、街の入り口で冒険者さんたちが戦っているみたいなんですけど、相手が多すぎて、戦況は、ふ、不利だってっ!どどど、ど、どうしましょう!?」


 どうやらオークの森の魔物たちがこのイースの街に攻めてきたようだ。それも軍隊を編成してのこと。となると、


「上位モンスターが現れたか・・・おかしいな、この前のバグベアーといい、何かが起きてるみたいだ」


 状況を冷静に判断するドラグ。その判断の欠課は最悪のものだった。

 低級モンスターよりも上位のモンスターは、低級モンスターに比べて非常に強い。そのため、オークの森を拠点として動く冒険者が多いこの街には、上位モンスターに立ち向かえる者が少ないのだ。

 すると、その突然現れた上位モンスター一匹の手によって街が破壊される。何てこともあり得るのだ。


 だが、ドラグは落ち着いていた。


「ま、なんとかなるか」

「へ?」


 ドラグの余裕さに間の抜けた声をあげるシャル。

 ドラグのその余裕は、その実力からであった。


「じゃ、とりあえず行ってくるね」

「あ、師匠!?」


 ドラグはそう言って、鍛冶場のドアから外へと出ていった。


~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~


「クッソ!なんだコイツら!」


 この街のチンピラ、ピラルフとビンキは目の前の強大な相手と戦っていた。


『魔王、サイケン、オマエラ、殺ス』


「何でこんなところにジャイアントボーンがいるんだよ!」

「知るか!俺に聞くな、ビンキ!」


 二人は物凄く焦っていた。


 二人の前にいる強大な敵、それは、低級モンスターよりも位が二つ上、上級モンスターであるスケルトンタイプの魔物、『ジャイアントボーン』と、それが従えているオークの森の魔物たちであった。

 『ジャイアントボーン』は、その全身が骨でできており、基本的に人間に良く似た形をしている。しかし、その体は人間よりも遥かに大きい、4メドルはあるだろうか?それに腕は4本あり、そのどれもに大きな剣を持っている。その4つの剣を自由自在に操ってくる厄介な敵であった。


 しかしピラルフとビンキは、その『ジャイアントボーン』に攻撃をできないでいた。

 なぜなら、


「クソッ!雑魚のクセに!力を合わせれば強いってか!?」

「いろんなところから攻撃が来て厄介だ!これが統率された魔物の力か!」


 その『ジャイアントボーン』が統率する魔物たちに足止めをされていたからだった。


 なんとか一匹一匹倒していくピラルフとビンキ。そんな低級モンスターを相手にするのに精一杯な二人に物凄く大きな刃が迫ってきた。


「ビンキ!避けろ!」

「あっぶねっ!?」


『死ネ』


 ぶっきらぼうに振るわれる『ジャイアントボーン』の右から左への横薙ぎ。

 それをビンキはかろうじて、体を反らすことで避ける。


「嫌なところで攻撃してきやがる」

「あんなもん、一発当たったら即死だ!」


 二人は低級モンスターの軍隊を全面的に引き受け、さらには『ジャイアントボーン』の注意を引き付けていた。

 なぜか、それは彼らのレベルが、この街のなかでは相当上だからなのだ。

 二人のレベルは、ピラルフが72、ビンキが69の剣士だった。この街の平均的なレベル数は20~40。二人がこの街でずば抜けた実力の持ち主であることは一目瞭然であった。


 それでも、やはり二人だけでは、大量のモンスターを、さらには上級モンスターを相手取るのは困難であった。

 他の冒険者たちも、二人の戦闘からあぶれたモンスターたちをなんとか倒している。しかし、それでもやはり、魔物たちの方に戦況は傾いていた。


「仕方ない、少し後退しよう!」

「分かった!」


 すると、二人は後ろに跳び、魔物たちから 一度距離をとる。その間に一度体制を立て直そうという算段だ。

 ここまではこんな感じでなんとか耐えてきた。

 しかし、それももう限界が近くなってきていた。


「まずい、あと少しで街の敷地内だ」

「弱音吐くな、なんとか食い止めるぞ!」


 なんとか街に魔物を入れさせまいと奮闘する二人。

 しかし無情にも、彼等に凶悪な一撃が炸裂する。


『うおぉぉぉーっ!』


 ドゴン!バキバキバキッ!


「「うおっ!?」」


 4つの剣を同時に振り上げ、思いっきり地面に叩きつけたジャイアントボーン。その威力はとてつもなく、ピラルフは、その攻撃によって地割れした地面に足をすくわれ転倒、ビンキは物凄い勢いで飛来した地面の一部を頭に受けてしまう。


「いつつ・・・・ビンキ!?」

「だ、大丈夫だ・・・・・・・・」

「大丈夫って、お前血が・・・・・・・・」


 地面の一部で強打したビンキの頭からは血が流れ出ていた。それも、少ないとは言えない量。


「クソッ!」


 レベル70前後の二人が倒れてしまったことは、今戦う冒険者にとって、この街に住む住民にとって、この街にとって絶体絶命のピンチだった。


 そこに突然響く謎の声が1つ。

 

「あぶないよ、そこから退いて」


 イースの絶対的な危機的状況に無謀にも姿を現す一人の少年がいた。

 その少年は、駆け出しの冒険者みたいな格好をして、左腰に片手剣を携えながら、メインストリートを悠々と歩いてきた。


「なんだと!?こんな時になに、言っ・・・・て、お、お前!?」


 少年の声に振り返るピラルフ。

 その視線の先には、ピラルフの知っている顔があった。


「早く退いてって」


 ドラグであった。


 ドラグは我力を鞘からゆっくりと抜きながらもう一度冒険者たちに忠告する。


 そのただならぬ気迫に、心の奥底にある防衛本能から、冒険者たちは一斉に街のメインストリートへと退避する。


 数多くの冒険者とすれ違いながら魔物の方へと近づくドラグ。

 そして遂に、我力の刀身が全て露になった。

 ドラグはその抜き身の我力を右手に持ちながら、魔物たちまであと15メドルというところまで歩いていき、そこで足を止める。


『?ダレダ』


 急に出てきたドラグに何者かと問うジャイアントボーン。


「しゃべれる感じか。じゃあ一言いってあげるけど、逃げるなら今のうちだよ?」


 ジャイアントボーンが言葉を話せると分かったドラグは、いたって真面目な顔をしてジャイアントボーンに向けてそう言う。


『オモシロイ、ジョウダン』


 それを面白い冗談だ、と笑うジャイアントボーン。

 それを見てドラグは、ニンマリと笑い、剣を横に構えた。


「あっそ。じゃあね」


 そう言うとドラグは、その剣を横に素早く薙いだ。


「『風刃』!」


 見えない風の刃が地を這って飛んでいく。

 その後、間を置いて、


 ブシュッ!


『グオォッ!』


 魔物たちの体が上半身と下半身を境目に割れる。

 何が起きたか分からないと言った顔をしている魔物たちとドラグの後ろにいる冒険者たち。

 そして魔物たちは一気に姿を灰に変えた。


 大量の灰が舞う先で、ジャイアントボーンは四つん這いになって倒れていた。


『ア、足・・・・・・・・!』


 先ほどのドラグの『風刃』で両足の脛から先を斬られてしまったようだ。


 そんな様子のジャイアントボーンに、ゆっくりと歩いて近づくドラグ。


 そして自分の頭の高さほどにまで位置が下がったジャイアントボーンボーンの顔を見ながらこう質問した。


「どうしてこんなことをした?誰の命令?」


 それに対してジャイアントボーンは、


『魔王様、国、再ビ、興ス、タメ』


 と答えた。


 大昔、魔物たちだけで構成された魔物たちのための国があった。その国を興したのが魔王である。

 魔王は力が圧倒的に強く、そのため前魔物を支配して国を興すことができたらしい。

 今の世では、本当に存在したのかと議論されるほどに伝説の存在となっていた。


「誰に命令された?」

「・・・・・・・・魔王様ノ部下、名乗ル、オ方、カラ」


 渋々と言った様子で口を割るジャイアントボーン


「あっそ、ありがと」


 ジャイアントボーン答えを聞くと、ドラグは容赦なく、左の拳を握り、目の前にあるジャイアントボーンの頭を殴った。

 強固であるはずのジャイアントボーンの骨を貫通するドラグの拳。

 無数に入るヒビ。

 そして遂に砕け散るジャイアントボーンの頭。


 灰に変わるジャイアントボーンに背を向けながら、ドラグは我力を鞘に納めた。

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