【十七話】 少年、マジックバッグを買う①
いつもの倍くらいです。すいません。
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「うひょーーっ!大金大金!」
店から出てきたドラグ。
ドラグは袋の中に詰まった金貨に目を輝かせていた。
ドラグは今、メタルマンの巣窟から一番近い街に来ていた。
その街の中にある宝石、貴金属を扱っている店にドラグは洞窟から持ってきた金を売ったところ、
「金貨100枚、100000000ペレル!?」
銅貨一枚が1ペレル。銅貨1000枚で銀貨一枚。そして銀貨1000枚で金貨一枚となる。
つまり、金貨一枚で1000000ペレル。100枚で100000000ペレル、1億ペレルとなる。
「え、やばい。これ何日ご飯食べられるの?」
ミユも同じだが、なぜかご飯を基準に金銭を考えるドラグ。ドラグも大概金銭感覚がくるっているのかもしれない。ちなみに約66666日間三食食べられる計算である。
この量の金貨。もう既に普通の農民が一生に稼ぐ金額を優に超えていたりする。
「これでマジックバッグ買えるでしょ。やったね!」
金貨の詰まった袋を片手にルンルン気分で街を歩き始めたドラグだったが、すぐに立ち止まって首をかしげた。
「そういえば、マジックバッグって、どこで売ってるんだっけ?」
ドラグは計画性のない男であった。
「ギルドに行けば何とかなるかな?」
適当にそんな風にいうドラグ。
だが、確かにこんな時に便利なのがギルドなのだ。
ギルドは冒険者にとって有益な情報を数多く持っている。
効率のいい稼ぎ場、アイテムの有用性、レべリングに最適な場所など、本当にさまざまな情報を持っている。ギルドの言うとおりにしていればすぐに強くなれる、という風に冒険者に言わせるほどに。
「あ、ねぇそこの猫ちゃん」
「へ?わ、私?な、なんでしょう?」
道行く女の獣人に声をかけるドラグ。
獣人はどうやら猫人のようで、かわいらしい猫耳に、お尻からは尻尾が生えていた。毛並みは白と茶色が混ざったような感じで、雰囲気からして活発そうであることをイメージさせる女の子であった。
「今ちょっと困っててさ、お願い事されてくれない?」
「お願い事?」
「その耳触らせてくれない?」
「・・・え?」
まったくこの男は・・・。
本来のギルドに行くという目的も忘れて、ドラグは猫人の少女に衝撃発言をした。
ドラグのその言葉に、2~3歩身を引く女の子。全力で引いている。両手で耳まで隠している。
「じょ。冗談、冗談だよ!そんなにひかないで・・・」
猫人少女のその反応に焦ってそういうドラグ。
「この街のギルドがどこにあるのか知りたいんだ」
「ギ、ギルドですか?」
疑いの目をドラグに向けながらも言葉を返す獣人少女。
いまだにドラグに近づこうとも、その両手を耳からどかそうともしていないが、少女はドラグに道を教えてくれた。
「こ、この道をまっすぐ進んだ後、噴水がある交差点があるんで、そこを右に曲がって、またまっすぐ進むとギルドがありますよ」
「ありがとう!でも、一人じゃ不安だから、一緒についてきてくれない?」
「え、いやっ、え、遠慮します!」
「そ、そう。あはは・・・」
全力で拒否られたドラグはから笑いを浮かべた。
「じゃ、じゃあ、失礼します」
「うん、ありがとうね」
そういって獣人少女と別れるドラグ。
少女は道を曲がるまでずっと耳を両手で隠しながら走って行った。どれだけドラグに耳を触られたくなかったのだろうか。
イースではない、別の地でも振られてしまったことに意気消沈したドラグは、一つため息をついてから気持ちを切り替えてギルドに向かった。
~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~
「かわいいね。今度ご飯で・・・」
「別に用事がないのなら帰ってください」
「反応はやっ!」
ギルドの受付で、ドラグはかわいらしい人間の受付嬢に軽くあしらわれていた。
ギルドの受付嬢は可愛い。なぜだかよく知らないが、可愛いのだ。
そのためにギルドの受付嬢はしょっちゅう冒険者からお誘いをされる。
そのお誘いを断り続けるうちに、ギルドの受付嬢はお誘いに対する対応が必然的に早くなるのだ。
「い、いや、ちゃんとあるよ?用事」
またしても負けの予感がしたドラグはすぐさま本題に入る。まったく、可哀想な男である。
「マジックバッグの売ってる場所が知りたいんですけど」
「マジックバッグですか?この街にはたぶんありませんよ?」
「え、ない?」
予想外の返事に戸惑うドラグ。そんなドラグに受付嬢は続けてこう言う。
「マジックバッグはとても高級ですからね。この街よりもずっと大きな街にある高級道具店にしか置いてないでしょう」
「そ、そうなんですか・・・」
意気消沈するドラグ。
「どの街に売ってそうですか?」
「一番近いのは・・・この街からしばらく西に行ったビシュテルの街ですかね。あそこにはお強い冒険者が多いですから」
「そこってどれくらいここから離れてますか?」
「馬車で三日くらいですかね」
「馬車で三日か・・・まぁ、なんとかなるかな?」
顎に手を当てて考え込むドラグ。
そんなドラグに声をかける受付嬢。
「あの、本当にいかれるつもりですか?」
「え?なんで?」
「マジックバッグは本当に高価なものです。失礼ですが、あなたはそれほどの金額をお持ちのようには、見えませんので」
まぁ、当然だろう。相変わらずドラグは、見た目駆け出しの冒険者なのだから。
「え、まじで?」
「はい。ちなみに今いくらお持ちで?」
「金貨100枚」
「ひゃ、100!?」
きっと予想の大きく斜め上の金額だったのだろう。今までしっかりと仕事用の敬語口調だった受付嬢は変に裏返った声を出す。
「し、失礼しました。予想以上の大金だったもので」
「だよね~。ふつうこんな大金持たないよね」
あはは、と笑うドラグ。
「は、はい。でも、それでもマジックバッグは買えません」
「そうなの!?」
「はい。安いものでも金貨300枚はかかりますから」
「300!?」
あまりの金額に叫んでしまうドラグ。
「300枚ってことは、あと二回洞窟とここを往復しなくちゃ活けないのか・・・・・・・」
そう呟くドラグ
そんなドラグの言葉を聞いてハッ!と何かに気付く受付嬢。
「洞窟・・・・もしかして、メタルマン巣窟に行ってきたのですか!?」
「あ、うん。そうだけど。よくわかったね?」
「!」
ドラグがうなずくと同時に唖然とする受付嬢。
なぜかというと、実はこのメタルマンの巣窟というのは、A級探索地に指定されている、超上級者向けの危険探索地だったのだ。
なぜかというと、メタルマンは金属でできているため本当に斬れにくい、というか斬れない。そのうえその金属でできた体を巧みに、素早く動かし、その超重量級の拳や足を振ってくるため、上級モンスターに指定されているのだ。
このメタルマン単体に遭遇するなら、ただの上級冒険者のパーティー程度ならなんとか倒せるだろう。
しかし、メタルマンの巣窟と呼ばれるこの洞窟では、わんさかメタルマンが生息し、数匹、あるいは群れで襲いかかってくる。
そのために4人のレベル100以上の一級冒険者で構成されたパーティーくらいしかあそこには入らないのだ。
「レベルはどのくらいで?」
恐る恐る聞く受付嬢。
「わからないけど、100はいってると思うよ?」
「!?」
こんな駆け出しみたいな男がレベル100!?というような顔を浮かべる受付嬢。
「本当ですか!?」
机に身を乗り出す受付嬢。
「あ、あぁ。多分?」
受付嬢は、いまだに信じられないという顔をしている。
「では、お仲間といっしょに洞窟へ?」
受付嬢が確認のためにそう聞く。
しかしドラグはあっさりとこう返事をした。
「仲間?いや、俺一人だけど?」
「はぁあ!?一人ぃ!?」
「!?」
思わず素が出てしまったのだろうか。もうわけわかんない!というように受付嬢は叫んだ。
そんな受付嬢の勢いに、思わず身をのけぞらせるドラグ。
「あのですね、メタルマンの巣窟というのはA級探索地に指定されていて、レベル100の一級冒険者4人組のパーティーがようやく探索できるような超危険地域なんです!そんなところに一人でいくなんて、あなた死にたいんですか!?」
目を見開いて大声でそういう受付嬢。もう既に周りの注目を集めてしまっている。
「いや、でも実際生きて帰ってきたし・・・」
居心地悪そうなドラグ。
「偶然かもしれないじゃないですか!とにかく、一人であんなところに行くなんてダメです!」
「えぇ・・・」
「えぇ・・・、じゃありませんよ!まったく、だから命知らずの冒険者は・・・」
受付嬢はそう言い切ると、何やらブツブツと言い始めた。
(まいったなぁ。めちゃくちゃいい稼ぎ場が見つかったと思ったのに・・・)
いったいどうしたものかと腕を組んで考えるドラグ。
「どうしたら、またあの洞窟入っていい?」
受付嬢に問うドラグ。
受付嬢はまだ何やらブツブツと呟いていたが、ドラグにそう聞かれるとすぐに頭を上げてこういった。
「それはもちろん、あと3人一級冒険者の仲間を探してパーティーを組んでもらってください」
「それ以外で何かないかな?」
「それ以外?そんなものないですよ」
「たとえばこれくらいのレベルなら、とかさ」
何とかメタルマンの巣窟を自分の稼ぎ場にしたいドラグ。
そんなドラグの提案に、受付嬢はこのような条件を出してきた。
「あきらめが悪いですねぇ。なら、レベルが200に到達していたらいいですよ?」
その顔は、とても意地悪な顔だった。
このレベル200という値、実は、この国ではほとんど確認されていないのだ。
昔の話だが、この国の危機を救ったという英雄がいた。その英雄のレベルが、噂では200なのだ。
言い伝えでしか存在しないこのレベル200は、受付嬢がドラグを一人で洞窟に行かせまいと思い立った絶対不可能の条件だったのだ。
なぜこの受付嬢、ドラグをこんなにも洞窟に行かせたくないかというと、
(なんか、こいつむかつくから、絶対行かせてあげない!)
その場の気分だった。しっかりした敬語からは予想もできない気まぐれさである。
しかしその受付嬢の思惑は、叶わなかった。
「レベル200?200かぁ、ちょっと待ってね」
「へ?待つって・・・」
するとドラグは左腰の我力を少し抜く。
溢れ出る紫色の魔力。
「!?」
「あ、大丈夫。俺、かわいい女の子にはなにもしないから」
突然武器に手を伸ばしたドラグに、また、闇属性の魔力を放出するドラグの剣に、身構える受付嬢。
そんな受付嬢をなだめながら、ドラグは我力にこう言う。
「我力、レベル200にできる?」
そういうと、我力からキラキラしたものがかなりの量出て来くる。
そしてドラグの体がピカーッと輝く。
「!?」
何が起きているか訳がわからないと目を見開く受付嬢。
と言うより、このギルドの建物にいるすべての人がドラグに釘付けになっていた。
その輝きがおさまると、ドラグは淡々と話始めた。
「お待たせ。これで俺、いまレベル200になってるはずだから」
「・・・・・・え?」
ドラグの様子に唖然としていた受付嬢は、ドラグに話しかけられてようやく我に帰ったようだ。
「だからほら、レベル測定器持ってきて」
「え、あの、今のって。え?闇の魔力?え?レベル200って」
混乱ゆえに言葉がおかしい受付嬢。
「?レベル測定器ないの?」
「あ、ありますけど・・・」
「ならほら、早くして?洞窟いきたいから」
「は、はぁ?わかりました」
もう何がなんだかわからないと、頭の上に大量の疑問符を浮かべながら、ギルドの奥にレベル測定器を取りに行く受付嬢。
そして間もなく、レベル測定器を持ってきた。
「お持ちしました」
受付嬢が持ってきたレベル測定器は、人の顔程度の大きさのある石板のようなものであった。
「へぇ、最近のレベル測定器はこんなのなのか」
「最近のって・・・あなたまだ若いでしょう?」
「でも、最後に使ったのは5年前だし」
「ごねっ!?あなた今いくつなんですか?」
「ん?、17」
「17ってことは、12歳より前から魔物と戦ってたってこと?」
「そうだよ?」
「・・・」
もう驚きすぎて何も言う気力がない受付嬢。
「なんでもいいから、早くレベル測ろ?どうやるの?」
「少し待っていてください」
そういうと受付嬢はレベル測定器に手をかざして、
「・・・!」
何事かを呟く。すると、レベル測定器の上に「000」と言う数字と「準備完了」と言う数字が浮かび上がった。
「おぉ!すげぇ!」
声をあげるドラグ。
「ここに手をおいてもらえれば測定できます」
「それだけ?簡単だね」
受付嬢に言われて、レベル測定器に手をおくドラグ。
すると測定器に浮かび上がっていた「準備完了」と言う文字が「測定中」に代わり、「000」の文字が歪み始めた。
「おぉ・・・!」
再び声を上げるドラグ。
そうやって手を置いたままでいると、不意に「測定中」の文字が「測定完了」に変わった。
「お?終わった?」
「みたいです」
はやいな~、と技術の進歩を一人かみしめるドラグと、今から出てくる結果を息をのんで待つ受付嬢。
そしてついに「000」の文字が一度完全に消え、また三ケタの数字が浮かび上がってきた。
そこには「200」の表示。




