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【十六話】 少年、遠出する

シャルが弟子になってから、しばらくの時間が経ったある日のこと。


ドラグは、イースの街から遠く離れた『メタルマンの巣窟』の前に来ていた。


「相変わらず鉄臭いなぁ、ここ」


この『メタルマンの巣窟』は、『メタルマン』という全身金属でできた魔物がわんさかいるとても深い洞窟で、この『メタルマン』が、とても質のいい金属をドロップアイテムとして落とすため、一部の冒険者の稼ぎ場となっていた。


この『メタルマン』だが、その体の材質は様々で、主に鉄でできた個体が多いのだが、ごく稀に金や銀でできた個体が存在する。その個体はその自分を構成する素材をドロップさせるため、簡単に金や銀が手に入る。


ここにドラグが来た理由。それは、「メタルマン」の落とすドロップアイテムを採集することだった。


「いいやつ探すぞー!」


ドラグは意気揚々と、洞窟の中を探索し始めた。


~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~


一方その頃、シャルはというと


「とりあえずその片手剣の値段は25000ペレル。その槍は20000ペレルで。このナイフは・・・・・・・業物ですね。30000ペレルにしましょう」

「!?そんなに高くして、大丈夫か?」

「大丈夫です!これでもこの街の客層に合わせて激安にしているんです!」


金銭感覚が崩壊していたミユに代わって、「鍛冶屋デュイス」にて、店においてある武器一つ一つの値段を、正規の値段へと変えていた。


「30000ペレル・・・・・一体何日間の食費に」

「食べ物基準で武器に値段をつけないで下さい!」

「わ、わるい・・・」


とても不安そうにするミユに、可愛らしい怒鳴り声をあげるシャル。その様子は、ダメな姉を叱る妹のようであった。あ、弟か。


「だ、だが、こんなに値上げして、客は来るのか?今まででさえ来てないんだぞ?」


ミユが紙で作られた値札に値段を書きながらシャルにそう聞いた。


するとミユは、こう答えた。


「まずですね、なんでお客が来なかったのかと言うのは、武器に値札が着いていなかったからです」

「?なぜだ」

「ミユさんの武器はどれも一級品と言っていい代物です。そんなものが陳列されている店に、この街の主な客層であるまだ駆け出しの冒険者は来るでしょうか?「この店は絶対高いぞ」と勘違いして近寄ろうともしないでしょう」

「な、なるほど」

「しっかりと値段を掲示すれば、お客はしっかりよってきます」

「なら、値上げした理由は?」

「あんな値段でミユさんが生活していけるわけがないでしょう!一体今までどうやって生活してきたんですか!?」

「い、いや、それは・・・」


怒濤の勢いでミユに言葉を浴びせるシャル。

そんなシャルに気圧されるミユ。


数日後、この店がイースの中で有名店になることを、まだ二人は知らない。


「お客さんが入りやすいように外装も少し変えた方がいいだろうし・・・。ミユさん、やるべき事がたくさんあるので、まずこの値段決め、お昼時には終わらせましょう!」

「お昼まで!?まだ大量にあるのだが・・・」

「気合いです!」


両手を体の前で握るシャル。


「精神論か!?」

「話している暇はないですよ~!はいコレ50000ペレル」

「50000だと!?」

「フルメイルですからそのくらいしますって!」


あーだこーだいいながら作業をする二人。店の奥にしまっていた分も含めて、すべての武器防具の値段をつけ終えたのは、昼過ぎだった。


「おわった・・・」


 武器を片付け終えたミユは地べたに座り、両手をついて息を吐いていた。


「まだやることはあるんですが・・・とりあえずお昼食べに行きましょうか」

「行く!」


 シャルとミユは遅めの昼食を食べに、集いの酒場へと足を向けた。


 ミユは、もう既に集いの酒場の常連になっていた。

 こんなにおいしくて量があって、その上安いなんて反則だ!、と言って、もうここ最近は毎日三食集いの酒場で食事をとっているミユ。

 常連さんが二人になってうれしいわ!、とカレンも喜んでいる。


 昼食をとり終えた二人が、鍛冶屋デュイスに戻り、まず何に取りかかったかというと、


「まずこの店構えを変えます。準備はいいですか?」

「あぁ。もう一度言うが、店自体には何も手を加えないでほしい。師匠の店だから」

「わかってます」


 店の外観の改善だ。

 今の状況は、ただ店の名前だけ書かれた看板だけ。それだけを見てもどんなサービスを行っていて、どのような品があるのか、つまり店の情報が全く客に伝わらない状況になっていた。


「とりあえず今の店の雰囲気を崩さないように、派手な色は使わないで単純な看板くらいは作りましょう」

「わかった」


 そういって看板作りに取り掛かる二人。


「まず、ミユさんはお店でどんなことをやってるんですか?」

「そうだな。まず武器や防具の製作、修理が主だ」

「なるほど。オーダーメイドは?」

「もちろんやっている」

「わかりました。看板にはそのことを書きましょう」


 看板の方針も決まり、作業を始める2人。

 手を動かしながら、ミユはシャルにこう聞いた。


「シャルは鍛冶師でもないのになぜそこまで武器や防具のことに詳しい?」

「それはもう、死ぬ気でいろいろ調べましたから。こう見えても冒険者です。自分の身を守ってくれる武器や防具のことはしっかりと知っておかないと危ないですからね」


 胸を張ってそういうシャル。

 その慎重さが招いたのが、あのブカブカハードアーマーなのであった。


 その後もいろいろ話しながら作業を進める2人。


 道行く人々はそんな二人の様子をチラリチラリとみている。

 それもそのはず、二人は店先で堂々と看板作りをしていたからだ。道から丸見えだ。


「シャル。今更だが、周囲の視線が・・・」


 以後ごち悪そうにしていたミユがついにシャルにそう言った。

 するとシャルは


「それでいいんですよ。注目されれば、「なんだなんだ?」「鍛冶屋?新しくできたのか?」「今度行ってみようかな」っていう風に興味を持ってもらえて万々歳なんです」

「おぉ・・・!」


 このシャル、何とも計算高い男の子である。


 そんなこんなで看板が完成した。看板は大きめの一枚の木の板で、そこには「武器・防具 売ります! 作ります! 直します!」と書いてあった。


「よし、これを扉の横に立てかけて・・・完成です!」


 どうやら店の改善は一通り終わったようだ。


 時刻はもう夕暮れ時。道には探索から帰ってきた冒険者たちがドロップアイテム片手歩いていた。


「ようやく終わった・・・!」

「疲れましたね」


 気持ちのいい汗を流す二人。新生「鍛冶屋 デュイス」は、どうやら明日から営業開始のようだ。


「夕飯、食べに行きますか?」

「!」


 全力で首を縦に振るミユ。食べることが好きな二人であった。


~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~


 一方、メタルマンの巣窟。


 洞窟の入り口で、ドラグは頭を抱えていた。


「これ、どうしようかな」


 ドラグの目の前には、メタルマンからドロップした大量の金属が転がっていた。

 その金属の量は半端ではなく、ドラグの背丈を超えるほどの小山になるほど量だった。


 調子にのってメタルマンを狩りすぎたドラグ。その金属をいかにして持ち運ぼうか悩んでいたのだ。


「重さはいいんだけど、持ち方がな・・・」


 ドロップした金属は、その大きさは小石からこぶし大の塊で、持ち運ぼうにも難しいものだった。


「しまったな・・・とりあえずいらなそうな奴は、近くの街で売ってくか」


 ドラグは目の前の金属の山から換金率の高い金の塊をいくつかバックパックに入れ、洞窟から街に足を向けた。


「あ、そうだ!この金売って手に入ったお金でマジックバッグでも買おう!」


 マジックバッグとは、その見た目をはるかに超える許容量を持つ、『空間魔法』という高度な魔術をかけられた高価なバッグのこと。

 その値段は人が一生に稼ぐ金額よりも高かったりするのだが、


「前から欲しかったんだよね~」


 そんなことともつゆ知らず足を進めるドラグはとても上機嫌であった。

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