【十三話】 少年、チンピラに目をつけられる①
今回はあのむかつくチンピラ、「ピラルフ」が再び登場します。
ちなみにこの「ピラルフ」の由来は「ピラフ」です。
今回は閑話のような回ですが、メインストーリーも含まれていて、また新しく『ギルド』などの新しい設定も書かれているので、ぜひ読んでください。
※少し内容を変えました。このすぐ後の文章。
「ピラルフと手下二人」→「ピラルフと謎の二人」
です。結構話の内容が変わって行ってしまって、修正することになってしまいました。大変申し訳ありません。
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群がるモンスターを、怒涛の勢いで灰に変えていくドラグの様子を、木の上から見る影が、シャルのほかに三つほどあった。
「な、んなんだあいつ・・・!?」
ピラルフと謎の二人である。
この三人がなぜここにいるのか。それは昨日の夜にさかのぼる。
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「くそっ!」
ピラルフの機嫌は最高に悪かった。
今、ピラルフがいる場所は「ドン」と呼ばれるこのピラルフが拠点としている酒場だった。実はこの酒場を経営しているのはこのピラルフだったりする。
この酒場にはピラルフのようなチンピラや、魔物を狩ることに快感を得ているような変態共が毎晩毎晩集まっては酒を飲み、問題ごと、争いごと、密売などをしていた。通商『裏の酒場』の一つだ。
その酒場の中の一番真ん中のテーブル席で、いつも引き連れている手下の「ジン」「ゼツ」の二人と一緒に、ピラルフはまずい酒を飲んでいた。
ピラルフは『裏ギルド』の大型パーティー、『ドリトンの酒』に参加しており、その中で「イースの街の長」と言う幹部をやっている。ジンとゼツもこのパーティーに所属しているため、手下と言うのは、パーティー内での位の違いから手下と言うことになっている。
さて、新たに『裏ギルド』という言葉が出てきたが、その説明をする前に『ギルド』について説明しよう。
『ギルド』
冒険者はこの『ギルド』に冒険者として登録することで、一般市民~貴族、王族など、幅広い身分から発せられる『クエスト』を受けられるようになるのだ。
この『クエスト』というのは、発注者が自分にできないことを冒険者に頼む、言ってみれば求人広告。冒険者にとってみれば日雇いアルバイトのようなものなのだ。
その内容はさまざまだが、庭の草むしりから馬車の護衛、魔物の討伐、ドロップアイテムの収集など、簡単なものから危険を伴うものまでたくさんある。
仕組みとしては、冒険者に仕事を頼みたい発注者が、ギルドにこの『クエスト』を発注する。するとギルドのクエスト一覧にそのクエストが加わる。ギルドに登録している冒険者はたまにギルドに顔を出しては、そのクエスト一覧を確認し、報酬のよさげなクエストを受注し、それを達成。ギルドに達成したことを報告すると、ギルドは依頼人から事前に受けとっていた報酬を冒険者に与える、という感じだ。
ギルドは依頼を受けるときに発生する「クエスト発注料」と、冒険者が一定期間ごとにギルドに払う「冒険者登録料」をもらうことによって成り立っている。
『ギルド』とはだいたいこのような仕組みの機関だ。
さて、それでは『裏ギルド』とはどういったものなのか。
仕組みは『ギルド』とさほど変わらないのだが、その『クエスト』の内容に問題があるのだ。
正式なギルドは、王国の定めた法に従ってクエストを受注、発注している。
しかし、世の中には法に反する仕事というのが存在する。
密輸、密売、窃盗、暗殺。
そういった『クエスト』を発注しているのが『裏ギルド』なのだ。
『裏ギルド』の『クエスト』は、内容が危ないが、その報酬が莫大だ。冒険者の一部はそのスリルと報酬を求めて、裏ギルドに参加する。
もちろん『裏ギルド』への参加は犯罪。バレれば即牢獄行きとなる。当然だ。そもそも『裏ギルド』の存在自体が犯罪なのだから。
しかし現実では、『裏ギルド』はこのグランド王国ではびこっている。
それはなぜか。
『裏ギルド』には冒険者の中でも強い部類に入る『上級冒険者』がわんさかいるからだ。
そのために王国はこの『裏ギルド』を取り締まれず、実質黙認という形をとっていた。
さて、このピラルフがいる酒場も、このイースの街の裏ギルドと並列して店を構えている。というより、酒場の中に裏ギルドは窓口を持っていると言っていい。
そんな酒場で、パーティーの部下とともにピラルフは酒を飲んでいたのだ。
「あー!くそっ!腹立つ!」
もう一度、ジョッキの中にある安酒をあおってから、ピラルフは叫んだ。
今日ピラルフは、昨日ドラグに鍛冶屋でいいようにされたことを引きずって腹を立てていた。
すると向こうから、一人の男がピラルフに声をかけてきた。
「どうしたよ?「ドン」。昨日からやけに不機嫌じゃねぇか?」
いつもこの酒場でピラルフと話をする仲間、ビンキがピラルフに話しかける。
ビンキはパーティーは違うものの、実力がピラルフと同程度、歳も同じくらいの同性ということでピラルフと話が合い、いつの間にか二人は友となり、いっしょにクエストをこなし、仲間と呼び合える間柄になっていた。
「あ?あぁ、ビンキか。いやな、昨日すげーむかつく奴がいてよ。前から目ぇつけてた鍛冶屋あったろ?」
「あぁ、なんつったっけ。「鍛冶屋 デュイス」だったか」
「そう。そこの女にちょっかい出しに行ったらよ?小僧が居たんだよ。乳離れしたばっかみてぇな。
そいつな、フツーの片手剣を一本だけ持ってる、いかにも駆けだしの冒険者です!っていう感じの格好しててよ?
なんだ、雑魚の先客がいるじゃねぇかって無視して店の女の子と話し始めたわけ。
それでよ、俺が女に手ぇ出そうとしたらよ、その小僧が俺にはむかってきたんだよ」
「アッハッハッ!なんだピラルフ!自分の気に入った女が男連れだったからへそ曲げてんのか!?」
「ちっげぇよ!」
「はっはっ!で、その小僧をお前はどんな目にあわせたんだ!?」
「・・・・・・腹立ったから殺そうとした」
「ギャハハハハッ!恋の恨みは強烈ってか!?おもしれぇ!で?その小僧はどうした?後ずさりして逃げ出したかよ!?」
「・・・・・・・・・返り討ちにあった」
「アハハハッ・・・・は?」
ピラルフの話を酒の肴にして大笑いしていたビンキだが、最後にピラルフが発した言葉に、その笑顔を引きつらせた。
「返り討ちって、は?お前がか?」
「・・・二回も言わせるな。余計腹立つ」
「うそだろ・・・」
酒をさらに煽るピラルフと、信じられない、と、目を見開くビンキ。
「その小僧、駆けだしの冒険者だったんだよな?」
「格好はな。だから腹立つんだ。俺はもう何年も魔物を倒してんだぜ?それなりにレベルも上がってる。それなのに、それなのにだ!あいつは俺よりも強かった。それがどうにも気に食わねぇんだよ!」
ピラルフの歳はもうソロソロ30になる。冒険者を始めたのはもう十数年前。だんだんと冒険者の中でも中堅になってくる歳だ。それにこの街では強い冒険者はどんどんほかの街に行くため、ピラルフは実質、街の中で一番強い冒険者達の中の一人として数えられておかしくない冒険者だった。
だからこそ、自分が冒険者として生きてきた位の歳しか生まれてから経ってないドラグに返り討ちにされたことが、ピラルフを余計に腹立たせていた。
ピラルフはそういって残っていた酒を飲みきり、
「畜生!」
空になったジョッキを投げ捨てた。ジョッキはその勢いで粉砕。床も軽くへこんだ。
こんなことは、この酒場では日常茶飯事であるため、誰も何も反応しない。
「お前が負けるなんて、そいつ何者だよ?」
「わかんねぇ。でも武器からして、ただもんじゃなかった。あれは魔剣だ。しかも闇属性の」
「闇属性の魔剣だと!?」
予想外のワードを聞いたビンキは思わず机を叩く。
「間違いねぇよ。この目でしかと見た。刀身から紫色の魔力が流れてきたんだ」
「まじかよ・・・」
言葉を失うビンキ。息を荒くしているピラルフ。
その二人に話しかける人物が一人、
「おぉおぉ、盛り上がっているようだね、お二人さん」
「「情報屋」」
情報屋と呼ばれた謎の人物は、黒いローブに身を隠し、フードを目深にかぶった、いかにも怪しい人物だった。
「情報屋が、いきなりどうした」
情報屋とは、冒険者が必要とする情報を調べたり、知識をかき集めたりして、それを冒険者に金で売って生活している者のことだ。
情報屋は声色からして、まだ十代の少年だったが、その持っている情報量は侮れない。
基本的にこの酒場にいる情報屋は、その情報量から、ここに来る冒険者達からその存在を重宝されていた。
「いや、僕も今、左腰に片手剣一本携えた駆けだし少年について情報を集めててね」
「・・・詳しく聞かせろ」
情報屋の言葉に食い付くピラルフ。
「おいおい、情報屋からただで情報をもらう気かい?」
「っち、ほらよ」
情報屋は親指と人差し指に中指をこすりつける、貨幣を現すジェスチャーをピラルフにする。
するとピラルフは、手を自分のポケットに突っ込み、銀貨を二枚取り出し、情報屋に放った。
情報屋はそれを受け取ると、
「まいど~」
と言って銀貨をローブの裏側にしまった。
そうして、情報屋は話を始める。
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閑話なのに長引きそうです(笑)
根気よく読んでくださるとうれしいです。
次回あたりにはドラグを登場させるので、お待ちください・・・・




