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【十話】 少年、師匠っぽいことをする①

 さて、シャルがめでたく?ドラグの弟子になったわけだが、ドラグは今、初めてシャルに師匠っぽいことをしようとしていた。


 場所はオークの森の中にある、木々が一本も生えていない、かなり動ける広場のような場所だ。


 そこでドラグが何をしようとしているのかというと、


「まず、俺がやってみるから、見てて」


 実演だ。まだ17歳の、人にものを教えたことのないドラグだ。いろいろ考えて末に、とりあえず見てもらうか、と言う結論に至った。


 木々の間から姿を現す豚の頭をした亜人モンスター、オーク。その体長は、ちょうどシャルの身長と同じ位しかない。その汚い緑色の肌と膨らんだ下っ腹。とても不潔だ。

 オークと言えば、その圧倒的な性欲が有名と言えるだろう。実際、オークに襲われて、廃人となった者もいるという話がある。だが、その被害は少ない。

 それはなぜか。それは、冒険者がとても多いということと、オークはいわば、雑魚モンスターということだ。

 オークは、はっきり言って魔物の中で弱い。何も経験のない人間でも、しっかりと武装すれば倒せてしまうほどに弱い。


 と、言うわけでドラグは、シャルにとりあえずオークを相手させることにしたのだ。


 さて、今ドラグとオークの位置関係は、直線距離で15メドルほど。それぞれの武器は、オークが木の棍棒。ドラグはその左腰にさした片手剣一本という感じだ。

 ドラグはまだ剣を抜いていない。

 すると、ドラグを認識したオークは、「フゴッ!」っと鳴き、その後ドラグに向かってトテトテと走り始めた。その速度は、その肥えた姿の通り、とても鈍く、遅い。


 走ってくるオークを確認したドラグはその腰の片手剣を少しだけ抜く。

 すると、鍛冶屋のときと同じように、紫色の魔力が溢れだした。


「!?」


 シャルは見るのが二度目だが、それでも驚かずには居られなかった。


『闇属性魔法』


 それは今、『光属性魔法』と共に使用することのできるものがほとんどいなくなってしまっている魔法である。

 その原因はいまだに分っていないが、このグランド王国にも、確認されているだけで十数人しか使い手がいないほどにレアな魔法である。

 その『闇属性魔法』を見せつけられては、たとえ二度目だとしても、驚かずには居られないだろう。


「・・・・・・」


 闇属性の魔力を垂れ流すその片手剣に何かをつぶやくドラグ。すると、一瞬にして片手剣から溢れだす魔力の量が数倍に増えた。


「!?」


 驚きすぎて言葉が出ないシャル。


(あれだけの魔力量。いったいどんな魔法を!?)


 驚きながらも今からおこることに心躍らせるシャル。


 しかしドラグは、その片手剣を抜き、オークに攻撃を与えるのではなく、その片手剣を鞘に戻した。


「え?」


 拍子抜けするシャル。

 そんなシャルの様子など気にも留めないドラグは、地面に落ちていた短剣程の長さの木の棒を拾う。

 すると、ドラグはその棒を右手に持ち、オークに向かって駆け始めた。


しかし、


(あれ?あまり速くない?)


 その足は、シャルから見てもそんなに速くなかった。

 一般的、それも冒険者ではない、一般人の中で、一般的と言いえる速さだった。


 そんな風にしてドラグはついに、オークと対峙するドラグ。

 

 オークはまず、その右手に持っていた棍棒を大きく振りかぶる。


「ブヒィ!」


 しかしその速さは、ノロい。

 ドラグはそのガラ空きになった横っ腹に、木の棒を左から右に薙ぎ払い、思いっきり当てる。


 バキィ!


「ゴブッ!」


 あまりの勢いに折れる木の棒。思わぬ衝撃に腹を抱えるオーク。

 オークからの反撃を受けないためにすぐに後ろに跳んで離脱するドラグ。

 オークはまたしてもドラグに対して棍棒を大きく上に構え、襲いかかってくる。するとドラグは、


「セイッ!」


 その折れた木の棒を投げた。すると、


「ブッ!?」グサッ!


 その折れた木の棒は、まるで吸いこまれるようにしてオークの首元へ一直線。そして難なく突き刺さった。

 亜人間モンスターであるオークはその中身、つまり内臓も人間の構造によく似ていた。つまりは、その首元はオークの急所と言える。

 その急所を刺されたオークは、変な声をあげた後、自分の首元に刺さった木の棒を見て、何が何だか分からないといった様子で木の棒に手を伸ばした。そして、


ブシュッ!


「グ、ガッ!」


 何のためらいもなく木の棒を抜いた。


 オークのような低級モンスターは、知能がとても低い。そのため敵となる人間、亜人間を見つけると、何も考えず突進してくるのだ。

 そんなオークには、その木の棒を抜く、という行為がどれほど危ないのか分らなかったのだろう。


 木の棒が抜かれた瞬間、その首元にあいた穴から湧き水のように汚い青紫色をした体液が溢れ出てきた。


 またしてもオークは何が起きたか理解できていない様子で、首元から溢れてくる自分の体液を止めようと、両手をあてがう。だが、その甲斐もなく、オークは糸を切られた操り人形のように、その場にどさっと倒れ、その姿を灰に変えた。


 オークを無事倒したドラグは、額の汗を拭きながらしゃるの方を向いてこう言った。


「ふぅ。分かった?」

「何も分かりませんでした!」


 清々しくそう返事をするシャル。むしろこんなので分かったほうがおかしい。


 そうだよなぁ~、なんて言いながらシャルは頭をかき、考え込み始める。

 そしてしばらく考えたのち、ドラグは手探りで指導を始めた。


「え~っと、とりあえず、今の俺はそこらへんの一般人と変わらない強さになっているってことからいおうかな」

「・・・・え?」


 突然そんなことを話し始めるドラグに、間抜けな声を出してしまうシャル。


「まずこの剣なんだけど、いわゆる『魔剣』ってやつなんだ」

「『魔剣!?」


『魔剣』


 それは、振るだけで一級魔術師と同等、あるいはそれ以上の大魔術を発動できる、名の通りの魔法の剣だ。

 山を消し、谷を埋め、山を削り、海を干上げ。さまざまな信じられない伝説を持つ魔剣。その強さはピンキリだが、魔剣の中で弱かったとしても、とても強力。


 しかし、魔剣は必ず『サブウェポン』になる運命なのだ。


 魔剣の特徴。それは強力な魔術を使える代わりに、その力を使い切ると割れてしまうことにある。


 魔剣はどのようにして作られるか。それは一級鍛冶師のなかでも選ばれた者が、長い時間をかけて自分の魔力を鋼に少しずつ少しずつ混ぜ、鍛造するのだ。ものすごい時間と労力をかけて作られるのが魔剣なのだ。

 しかし、その鍛冶師が混ぜ込んだ魔力を魔剣が使い切ると、形状を維持できなくなり、割れて砕けてしまうのだ。

 だから、魔剣はいつか壊れてしまう。そんなものを、常に武器として使う『メインウェポン』とする冒険者は一人もいない。


 しかし、ドラグは?


 そう。ドラグはその片手剣一本しか武器を持っていないのだ。


 さっきの戦い、そしてミユの鍛冶屋での戦いで見た魔力から、その剣が魔剣であることは納得いける。しかし、その魔剣をメインウェポンとすることはあり得ないのだ。


 シャルはそのことを知っていた。だからドラグに問う。


「魔剣なのはすごいですが、ドラグ師匠、武器、それだけしか使っていないですよね?」

「だからその「師匠」づけやめて・・・」


 いまだに自分のことを師匠づけするシャルに、半分あきらめながらそう言うドラグは、ひとつ溜息をついた後、気を取り直して言葉をつづけた。


「こいつはね、魔剣なんだけど、『妖刀』でもあるんだ」

「『妖刀』?」

「『妖刀』っていうのはね、使い手から魔力を吸い取って、切れ味を増したり、魔術を放ったりする刀のことなんだよ」

「吸い取る!?」


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長くなったんで、わけます

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