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【完結】ハナコ・カーネル(ⅭAR寝る)二十六歳の異世界車中旅~転移先はおばあちゃんの故郷でした~  作者: ジュレヌク
ニケ・アンジェロ、ナイキに生まれ変わる

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第三話 尻尾は下げられ丸まったことだろう

「ぎゃ~~~~、貴方、誰!」



 言葉と同時に、女の見事な拳がニケの顔面を捉えた。


 さっきまで両手両足で彼を抱えていたのは自分だというのに、あまりにも酷い。


 確かに、自分からも手を回したが、あれだけ擦り寄られたら、つい腕を回してしまってもしかたないだろうとニケは思う。


 そこで、一応、文句を言ってみた。



「いたっ……、いきなり拳を振るわれなくても良いではないですか」


「殴るわよ!これ、不法侵入よ!てか、ナイキを何処にやったの!」



 そう言いながら、彼女は、必死に自分に与えてくれた名を呼ぶ。


 その姿が、とても焦っていて、子犬姿の自分は嫌われていなかったのだとホッとする。



「ナイキは、私なのですが?」


「嘘つかないでよ。ナイキは、小さくて可愛いの!」



 そう叫ぶと、涙目でグルグル両腕を回しながらつっかかってきた。


 ニケは、咄嗟に躱(かわ)して彼女の両腕を掴んだ。


 それは条件反射だったのだが、相手の顔色が真っ青になったのを見て慌てて手を離す。



――いきなり現れた全裸の男に腕を掴まれて、恐ろしくないはずがない。



 己の失態に反省しきりのニケは、全身で遺憾の意を表した。


 犬の状態なら、尻尾は下げられ丸まったことだろう。


 タオルを腰に巻いただけの状態で心もとないが、自分には敵対する気持ちは無いと伝える為、両手を上に上げて動かない。


 すると、彼女のも気持ちが伝わったのか、まだまだ不安そうではあったが、



「貴方、自分の服は?」



と、至極まっとうな質問をされた。



「変身した時に、脱いでしまいまして」


「変身?」


「こうでございます」



 ポン。



 白煙を上げて、ニケは白い犬に変化した。


 魔力が戻ったお陰で、通常サイズの大きさに戻っている。


 どうやら、彼女は変化自体を見るのが初めてらしく、



「……ちょっと理解できないんだけど」



と、混乱していた。


 異世界から来た渡り人であることは、昨日の発言で理解できている。


 ニケは、先ずは、自分の事を知ってもらおうと説明を始めた。



「私は、魔法使いなのです。敵から逃げるために犬に変化したのですが、多勢無勢。襲われ、魔力の大半を失い、小型化してしまっておりました」


「うん。本当に、良く分からない」



 考えることを放棄したのか、彼女は頭を振って全てを拒否した後、



「まぁ、いいわ。元気になったなら、出て行ってもらえるかしら?」



と、外を指さした。


 さっさと出て行けという威圧感が半端ない。


 しかし、主従契約を結んだことを抜きにしても、ニケは、彼女の傍を離れたくは無かった。



「残念ながら、それは、出来ないのです」



と、首を横に振る。



「何故?」


「貴女と私の間で、契約が成立してしまったからです」


「は?契約?」



 意味不明な理論を持ち出され、女性は混乱し、そして怒りが湧いてきたようだ。


 刀のようなものを手に、



「表に出ろ!一発殴ってやる!」



と、叫ぶ。



「なんの契約かは知らないけど、相手の意向も効かずに結ばれたものは、無効。クーリングオフよ!」



 威勢よく叫んだ声に反応したルーポ達が、遠くから土煙を上げて走ってくるのが見えた。


 昨日の敵は、今日の味方。


 彼らの出現のお陰で、どうやらニケは、彼女の傍に居られるチャンスを得られそうだ。



「お言葉、誠にもっともなのですが、今の状況だと止めた方が良いかと思われます」



 そう言って視線をルーポに向けると、女性もやっと気づいたようで顔をこわばらせていた。



「彼らは、既に貴方も敵と認識しているようでして」


「なんでそうなるのよ!」



 彼女は器用に後ろの扉を閉めると、運転席へと移動して乗り物を動かし始める。



「先ずは、話は逃げ切ってからよ!」


「承知いたしました」



 そこからニケは、彼女に見られないように服を着た。


 一番良い素材で一番格好よく見える物を選んだのは、可愛い男心だろう。



「なんで、こうなるのよ~~~~!おばあちゃんの、馬鹿~~~!」


 大声で叫ぶ声も可愛いなと思いながら、ニケは、これからの人生が楽しくなる予感に胸を躍らせた。


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