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【完結】ハナコ・カーネル(ⅭAR寝る)二十六歳の異世界車中旅~転移先はおばあちゃんの故郷でした~  作者: ジュレヌク
ニケ・アンジェロ、ナイキに生まれ変わる

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第二話 いいな……その名前

 乗り物の中に乗っている人物は、様子をうかがっているようでなかなか降りて来てくれない。



――お願いだ。助けてくれ。



 声にならない叫びは、相手に伝わったのだろうか?



「よ~しよし、お願いだから、噛まないでね」



 一人の女が、乗り物から降りてきた。


 その手には剣のようなものとタオルが握られている。



 「くぅ~ん」



 ニケは、精一杯媚びた。


 もう、恥も外聞もなかった。


 今彼女に助けてもらえなければ、死ぬしかないと分かっていたからだ。


 敵意はありません。


 決して噛みません。


 そんな思いをくぅ~んという鳴き声に込める。


 すると、相手もそれが分かったのか、



「そんなに媚びなくても、大丈夫よ」



と声を掛けてくれた。


 その瞳には、何故か涙が溜まっている。


 鼻を啜りながら抱き上げてくれた彼女の腕は、とても温かかった。


 その後、その女性は、甲斐甲斐しくニケを介抱してくれた。


 手つきが覚束ないのは、きっと慣れていないからだ。



「ちょっと待ってね……あ~、やっぱり、噛まれたのね」



 自分の方が痛そうな声を出しながら、彼女は丁寧に傷口を洗ってくれた。


 その手つきは優しいが、掛けてくる液体が相当滲みる。


 この感覚に、ニケは覚えがあった。



――これは、上級ポーション以上だな。



 以前右腕に大怪我を負った際使ったことがあるが、悲鳴が出るくらい滲みるのだ。


 それは、無理やり細胞を活性化させて傷を塞いでいるからなのだが、出来れば二度と体験したくないと思っていた。


 しかし、瀕死状態の今なら、喜んで受け入れよう。


 全てを受け入れて我慢する彼の頭上から、怪我の治りが良いことに驚いた女性の、



「あら、水まで異世界仕様?飲んだら若返ったりするのかしら?」



と言う声が、聞こえてきた。


 その言葉に、彼女がこの世界の人間ではないことが分かった。


 もしここでニケが人間の言葉で痛い痛いなどと叫べば、彼女を相当驚かせてしまう事になるだろう。


 ニケは、声を殺し震えて我慢をした。



「ごめん、ごめん。ふぅ。ここから、どうするかなぁ」



 優しく頭を撫でられて、ニケは、犬の姿のまま一生終えるのも悪くないと思った。


 彼女の横に侍り、護衛として今度は自分は守るのだ。


 そんな夢想をしていると、あっという間に治療は終わっていた。



「こんなことくらいしか出来なくて、申し訳ないわね」



 そう言いながら抱き上げてくれ、何故かニケを見て悲しそうに笑った。


 その瞳から、黄金に輝く涙がポロリと零れた。


 その美しさと甘い香りには、抗いがたい何かがあった。



 ペロリ



 一舐めしただけなのに、枯渇していた魔力がグングンと上昇していくのを感じた。


 そして、自分と彼女の間に切れない絆が出来た。



――これは、主従契約。しかも、完全に私が下だ。



 決して彼女が呪文を唱えたわけはない。


 ただ、自分が美味しそうな涙を舐めただけだ。


 その雫に含まれる魔力が、ニケの魔力をねじ伏せたと言って良い。



――まさか、自分が無詠唱で服従させられる日が来るとは思いもよらなかった。



 互いに意図しない契約。


 しかし、ニケは悪くないと思った。


 何故なら、彼女の傍にいる理由が出来たからだ。



 「助けられた身の癖に、私の方が可哀想に見えたの?本当に、生意気な子ね。そうだ、あなたの名前は、ナイキよ」



 彼女の言葉に、ニケは自然と口元が緩んだ。



――いいな……その名前。



 世界中に大魔法使いとして知れ渡ったニケ・アンジェロとい名前より、よっぽど好きになれた。



「あ~、暗くなってきたわね。仕方ない、今日は、ここで寝ようか」



 ニケにとって女神のような女は、乗り物の中の柔らかなベッドの上にニケを乗せると、自分は箱の中から食事を出して貪り始めた。


 その姿は、上品そうに皿に盛られた少量の料理を啄む母親よりも、ずっと素敵に見えた。



「うんうん、今日の私は花丸。よく頑張りました」



 独り言を言う言葉が、眠りに落ちる彼の耳に心地よく響いた。


 そして、何時間寝たのか分からないが、空が明るくなってきた頃にニケは目が覚めた。


 魔力が体から満ち溢れている彼は、自然と人間の姿に戻っていた。しかも、スッポンポンの状態で。


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