第2話 父とは背中で語るものだ
ある休日――。
愛する由紀子が言った。
「たまにはコンビニスイーツが食べたいわ」
ああ、由紀子は何て愛らしいんだ。
今すぐにでも抱きしめたい。いや、もう抱きたい。
でもダメだ!今日に限って、紫音がいる。
俺はそっと自分の息子を抑えた。盛る気持ちを落ち着けるのも、ダンディズムの一つだと俺は思う。
「紫音、父さんと一緒にコンビニに行こうか」
「は?一人で行けよ!」
即答で紫音が冷たく返してくる。
Switch2に夢中になっているな。ゲームは一日一時間だぞ? 紫音。
そんな紫音は今日もウザ可愛い。
「ついてきたら、小遣いやるぞ?」
その瞬間、ニヤリと親指を立て、紫音が視線を上げた。
「……仕方ねぇなぁ。一緒に行ってやるよ」
ああ、素直じゃないな、紫音よ。
お前がいい子なのは毎日舐めるように見ている父さんにはお見通しなんだぞ?
まあそんなことはダンディズムを極めている俺は口にしないが……。
「紫音は今日も素直だなぁ」
嬉しさに思わず笑みが溢れてしまう。
「は?調子乗んな!」
鋭い視線で俺を睨む紫音。
父さんはわかってる。それが照れ隠しだってことをな。
◇◇◇
某コンビニ――。
気がつけば、妻へのスイーツ代と息子への小遣いで、俺の財布には木枯らしが吹いている。
給料日まであと三日。多分耐えられるだろう。
スイーツを手に入れ、由紀子の顔が頭に浮かぶ。うん、今夜が楽しみだ。
コンビニを後にしたが、少し浮かれていた俺はヤンキーっぽい輩にぶつかってしまった。
「あん? 痛ぇじゃねえか、おっさんよぉ」
とは言っていないが、そんな表情をしながら俺を見ている。
ビビるんじゃない!
俺はこんな場所で命を失うわけにはいかないんだ!
紫音と由紀子を守りきらなければ、死んでも死にきれない!
「紫音、お前だけでも逃げろ……」
脇腹を押さえ、俺は紫音を庇いながら囁く。
まあ、特にまだどこも殴られていないのだが。
「父さん、何してんの?」
紫音の声で、ハッとなる。
目の前には、『北極の拳』に出てくるザコの等身大人形が置かれていた。
どうやら人形にぶつかり、幻聴まで聞こえたらしい。
夏が見せた幻だったのか――?
紫音といた、この日、この時間を俺は忘れない――。




