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今日も凍てつく視線を投げてくる息子はまだまだ反抗期なので、俺のダンディズムを教えてやろうと思う  作者: 黒瀬 蓮


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第1話 人生は甘くない

 俺の名前は黒川孝之《くろかわたかゆき》

 年齢は47歳、某大手企業の会社員。

 役職は一応部長職だ。


 そんな俺も、家に帰ればただの夫で、父親。

 愛する妻、由紀子。

 生意気盛りの一人息子、紫音。

 そして47年間、いまだに掴めない俺の父親、玄斎。

 それが俺の守るべき家族だ。


 某月某日、俺は日記をつけることにした。

 SNS? 男は黙って、紙に書く。

 デジタルなんて、会社だけで充分だ。


 ダンディズムってやつを見せてやろう。

 まあ日記だから、俺しか見れないんだがな。


 帰宅し、妻の美味い夕食を食べた後、最初のページを早速埋めようかと思う。


「……父さんってば!」


 視線を上げると息子が俺を呼んでいる。

 由紀子《つま》に似て、とても可愛い息子だ。


「ったく!聞いてんのかよ」


 どんなにお前が怒った顔をしても父さんはラブだぞ?ラブ!

 ただ、ダンディズムを極めている俺はそんなことを口に出したりはしないが……。


「紫音、今日もイケメンだなぁ」


「は?キモ!いい加減早く風呂入れよ!後がつかえてるんだからな!」


 きつい言葉を投げかける息子だが、いつも一番風呂を俺に譲るツンデレな奴だ。


 思わず顔が綻ぶ。

 さあ、記念すべき第一ページをお気に入りの万年筆で文字を刻もう。

 下手くそな字でもいい。最初が肝心なんだ。


 少し緊張しながら、俺はさっき淹れたばかりのブラックコーヒーに口をつけた……。


「……熱っ」


 ああ、そうだ。俺は猫舌だったんだ――


 口に含んだコーヒーが、勢いよく前に飛んだ。

 茶色い飛沫が宙を舞い、真新しい日記帳の第一ページに見事な染みを作った。


 紫音《むすこ》からの蔑んだ目線を感じながら、俺は何事もなかったかのように口を拭いた。


 これは俺と家族の熱い物語だ。

 まさにこのコーヒーのようにな。

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