第五話 酔いました
一時間後。
リアカーの振動で酔いました。
ですよね~~。
うぷ。
「気持ち悪い」
『酔ったか』
「多分」
『我慢しろ慣れる』
「慣れたくねえ~~」
相棒の言葉が薄情に聞こえる。
そう聞こえるだけで、別に相棒が薄情なのではない。
僕の体質を理解しているようなのだ。
鬼としての僕の。
多分。
詳しくは知らんが。
黒い幹のような超高層ビル群が見える。
枝のない黒い幹。
人造の森林。
それらがまるで巨大な墓標のように僕らを見下ろしていた。
「……相棒、本部に着いたらどうなると思う?」
『そうだな。解剖されるな』
「いやああああっ!」
『麻酔もなしに体の細部まで丁寧に切り裂かれ一つ一つ丁寧標本にされるだろうな』
「人殺しいいいいっ!」
『残念お前は人間じゃない』
「人権侵害っ! いや鬼権侵害っ!」
『だが諦めろ』
「なんでさ相棒っ!」
『地獄に堕ちた人間を苛む極卒たる御前が日頃からやってきた事だろうが」
「それもそうか」
うん。
「「いやマテ」」
陰陽師のツッコミが入る。
「どうした?」
「いや生きたまま麻酔もなく解剖とかソレ良いのか?」
「いつも自分がやってることだし」
「お……おう」
「偶には攻守交代しても良いよね」
「い……良いのか?」
「極卒の研修の時一通り経験したし」
「……やべえ……鬼ってぶっ飛んでるな」
僕の言葉に戦慄する陰陽師達。
まあ~~今更だし。
「鬼だからね」
『あ~~解剖の方がましな扱いかもしれんぞ』
「どゆこと?」
『もっと太い鉄柱を曲げさせられる「体力測定」なら御の字』
「ほう」
『放射能塗れの地域で無料奉仕とか悲惨だろうし』
「死ぬよりキツイかったねアレ」
『どちらにせよ、まともな扱いは期待するな』
僕達の言葉に絶句する陰陽師達。
「鬼の扱い方ヤバすぎだろう」
「放射能塗れって……」
ドン引きする陰陽師達。
「あのう~~僕の他に極卒を見たことないの?」
「地獄の極卒なんて初めてみたよ」
「極卒以外の鬼は?」
「極卒どころか鬼自体、見るのは初めてだ」
「初めて?」
「他の妖怪たちはでも可成り昔に見たことがある程度だ」
「へえ~~因みに僕は極卒はバイトですのであしからず」
「極卒を正規でなくバイト扱い出来るんなんて……」
目を丸くする陰陽師。
それはそうと。
「鉄棒曲げれるの二十センチ……。せめて五センチくらいって言っておけば良かった……」
『大して変わらんわ。脳筋』
相棒のツッコミがひでえ。
後悔の念と共に、僕は青すぎる空を仰ぎ見た。
清々しい青空。
だが今の僕にはどんよりとして見える。
そこでは、羽の生えた天狗らしき影が、悠々とビル風に乗って滑空していた。
天狗迄居るんかい。




