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第四話 猛犬注意


「まあ~~その前に俺が聞いてメモしてるからな意味ないぞ」

『ほら見ろ、あっちの陰陽師が手帳にしっかりメモしてるぞ』


 カキカキ。


 書いてるよ。

 プラカードを持ってる陰陽師さん。


「泣きてえ~~」

『自業自得』

「相棒が辛辣っ!」

『馬鹿につける薬は無い」

「辛辣っ!」

『はいはい』


 歪な日常のパレードとも言うべきだろうね。

 ええ。


 キュルキュル、と情けない音を立てて進むリアカー。


「ねえねえ~~次の日曜日どこ行く?」

「宮沢孝樹監督のアニメ「化け狸姫」が公開されるから見に行かない?」

「良いわねっ!」


 視界の端では、女子高生と化け狸が腕を組んでいる。

「普通」の女子高生と「化け狸」のカップルですね。

 仲睦まじく登校を続けています。


「けっ!」

『どうした』

「あの狸! 可愛い彼女を連れやがってっ!」

『モテない男のひがみか⋯⋯』


 僕の言葉に呆れる相棒。


「辛辣っ!」

『はいはい』

 

 女子高生の弾むような足取りがする。


 キュッキュッと。


 ローファーがアスファルトを叩く軽快な音。

 化け狸のふかふかした尻尾が左右に揺れる。

 制服のズボンから不自然に突き出した茶色の尻尾の毛並みがフサフサしてる。


「行こう」

「うん」


 心なしか僕を見て足が速くなるカップル。

 僕を警戒してるのかな?

 僕を見る目が犯罪者の其れだ。


 多分。


 


 カアカア。

 カアカア。


 朝からカラスの鳴き声が聞こえる。

 でけえ~~。

 この世界のカラスはデカい。


 それとは別に上空を横切る「顔付き車輪(輪入道)」がみえる。


 ポンポン。

 ポンポン。


 「顔付き車輪(輪入道)」上げる炎の爆ぜる音が、聞こえる。


 この世界の住人にとって、僕は「凶悪な未登録妖怪」である。

 ここ重要。

 未登録という事は未知。

 未知という事は存在する事を知らなかったという事。

 己を害するかもいれない未知なる存在。


 確かにそれは怖いだろう。

 彼らの反応は実に正解だ。


 僕の現状は元の世界で言えば密航犯罪者と言う扱いになるのだろう。

 つまり密航者なら殺人やテロリストよりマシと言う感じだろうか?

 逆に言えば、この世界ではあの化け狸は僕と違い「ちょっと毛深い彼氏」程度なのだ。

 その埋めようのない認識の乖離かいりが、僕の心をダメージを与える。


 というかだ。

 屈辱の市中引き回し。


 泣きたい。

 というか完全に犯罪者扱いだよね。

 これは。


「……なあ、せめてこのプラカード、どうにかならない? 」

「何で?」


 プラカードを持った陰陽師が此方を見る。


「『猛犬注意』って何時の間に書き直したの?」

「今さっき」


 おい。


「今さっきかいいいいっ! 何時の間に書き直したっ!」

「メモ書くときに」


 あの時かっ!


「書くなああああっ!」

「分かりやすく書いたつもりだ、危険性を」

「僕は猛犬じゃないわっ!」

「ノリで書いたからな~~」

「ノリで書くなあああっ!」


 信じられなねえ~~。


「あははははっ!」

「笑うなああああっ! 元に戻せっ!」

「もうすぐ本部に着くから良いだろう」

「良くないわっ!」



 陰陽師は前を向いたまま、笑いながら歩く。


 舗装されていても揺れるな。

 リアカーの振動が、ダイレクトに僕の背骨を揺らす。


 



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