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血塗られた運命に抗うべく、俺はひたすら繰り返す  作者: 小麦粉
序章

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3/14

悲劇の始まり Ⅲ


 俺の通う高校は比較的校則が厳しい部類に入る。

 教師が生徒に対して日頃から廊下を走らないようにと注意を促しているのはよく見る光景だ。

 その教師が血相を変えて走り去っていくのはどう考えてもおかしい。

 校則を無視してまで急がなければならない理由は何なのか。


 ……俺は再び走った。


 職員室前がやたら騒がしい。

 教師のみならず、複数の生徒が職員室前に押しかけている異様な光景であり、唯ならぬ何かが起こったのは言うまでもない。


 俺は人混みを掻き分けて職員室へと近付き、ドアに耳を当てがい様子を伺う。


「女子生徒が……屋上から飛び降りました……」

「救急車がまもなく到着するはずだ」

「今日は部活を中止して全員帰宅させよう」

「なんてことだ……我が校から自殺者が出るなんて」

「まだそうと決まった訳ではない……無事を祈ろう」


 俺は一目散に学校の外に出た。


 まさか――――いや、違う。

 絶対に違う。

 まだ高山さんだと確定した訳じゃない。


「この目で確かめるまでは絶対に信じない……信じるもんか」


 今回は探すまでもない。

 生徒や教師が現場へと向かっているため、一瞬でその場所へと辿り着けた。


 俺は人だかりを掻き分け前へ前へと進む。

 心拍数が一気に上昇を始めた。

 絶対に有りえない……そう思いつつも、底知れぬ恐怖が俺の背中にのし掛かる。


 そして――――事故現場へと到着した。


「嘘だ………………」


 目を覆いたくなる悲惨な光景。

 付近は血の海となっており、中心に倒れ込む一人の人間の姿を視認してしまった。


「高山さんが……亡くなった……」


 程なくして救急車が到着し、高山さんは病院へと運ばれた。

 辺りは騒然としており、泣き崩れる生徒もいる。

 かくいう俺も、ショックの余り膝から崩れ落ち、しばらく動けなかった。


 ――――俺は事前に知っていた。

 知っていながら止めることができなかった。

 あの少女の話に少しでも耳を傾けていれば、事故は未然に防げたのかもしれない。


 だが、時すでに遅し。

 彼女は病院に運ばれたものの、手の施しようがなかったという。

 あの変わり果てた姿を見ればどんな素人でもわかる…………絶対に助からないと。


 俺は、後悔に押しつぶされそうになっていた。

 頭の中が真っ白になりながらも、よろよろと自身のアパートへの道を歩く。


 すると、笹野が走りながら声をかけてきた。


「彰人……聞いたぞ」

「……」

「俺も悔しい……同じクラスの仲間だからな」


(俺のせいだ……)


 同じクラスの仲間……か。

 俺にとって高山さんは、クラスメートであると同時に()()()でもある。


 何故自ら命を絶ったのか。

 今となってはその理由すらも分からない。

 かつての後悔と同じ後悔を繰り返している。


 頭の中がぐちゃぐちゃになりながらも帰り道を歩き、何とかアパートに到着した。


 自室のドアを開けると、俺の帰りを待っていたかのように少女が玄関に立っていた。


 俺は少女を見るなり自分自身の感情を抑えることが出来ず、少女をひたすら問い詰める。


 側から見れば、半狂乱の状態で子供を問い正す頭のおかしい男だと思われただろう。


「何でもっとしっかりと説明しなかった……お前が事細かに事情を話していれば助けることが出来た……お前が高山さんを殺したんだ……」


 この時の俺は、自分にのし掛かっていた罪悪感を少女に押し付けていたのだと思う。


 完全に頭に血が昇ってしまった俺に対し、少女は静かに呟く。


「まだやり直せる」

「ふざけんな……もう手遅れだろ」

「昨日も話したよ……君が諦めなければ、道は開けるって」

「諦めなければって……意味分かんねぇよ」


 事は既に起こってしまっている。

 諦めるも糞もないような後戻りの出来ない一本道だ。

 それこそ過去にでも戻れない限り……。


「もう一度やり直せるとしたら?」

「はっ……?」


 少女のその言葉を聞いた瞬間、怒りの感情に満ち溢れていた俺の血の気が引いていく。


 俺は思考を巡らせた。

 この少女は特別な力を持っている。

 何故そう言い切れるのかと言うと、普通の人間が知るはずのない未来の情報を事前に言い当てたからだ。


 であるならば、他者を過去に送り込む異次元の力を有していても何らおかしな話ではない。


 そう脳内で結論付けた俺は冷静さを取り戻し、少女に改めて尋ねた。


「本当にやり直せるのか??」

()()()()()()()

「そんな事が本当に……」

「私はこの世界の未来を観測する者……即ち、()()()としてこの世に存在している」


 にわかに信じがたい話ではある。

 が、その話が事実ならば、まさしく神のような存在じゃないか。


「私の名前は()()。君を助ける為にここに来た」

「八神彰人だ……怒鳴ったりして悪かった……ミカの言葉を信じなかった俺が悪いのに……」


 ミカは微かに微笑みながら返答した。


「大丈夫。君が綺麗な人間の心を持ってるって分かったから」

「ありがとう。じゃあ早速話を聞かせてくれ」


 俺はミカの言葉を信じることにした。


 しかし、具体的にどうやって過去へと戻るのだろうか。

 希望が見えてきたとは言え、未だ現実味が無く信憑性は薄い。


「時間を巻き戻すとは……文字通り、時間を巻き戻しているに過ぎない」

「ってことは……」

「君が思った通りだよ。ただ時間を巻き戻しただけでは、再び同じ結末にしかならない」


 同じ歴史が繰り返されるだけ。

 それでは何も意味がない。


「じゃあどうすれば……」

「君は産まれながらに、ある特殊な力を有している」

「俺がか??」

「基本的に過去へと時間を巻き戻したとしても記憶が保持されることはない」

「つまり……俺だけは特別で、記憶を残したままやり直せると?」

「うん」


 所謂人生のやり直し。

 つまる所、自分の行動次第で本来起こったであろう悲惨な結末を変えうる……ということだ。


「私がここに来た理由、分かったかな」

「あぁ、今なら何となく理解が出来る」

「あとは君次第。私は強制しないよ」


 これは神すらも恐れる行為でしかない。

 人の人生は一度切りで、決してやり直しが効かないのが世の摂理だからだ。

 本来死んでいた人間を助ける行為が、周りの人間にどれだけの影響を及ぼすのか……想像に難くない。


 ミカは俺に対して、その責任の重さを再確認しているのだろう。


 だが、迷いは直ぐに晴れた。


「高山さん……いや、()()を助ける」

「分かった。その答えが聞けて私も嬉しいわ」

「あぁ。絶対に止めてみせる」


 俺は過去へと時間を巻き戻し、高山さんを救う決心を固めた。



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