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血塗られた運命に抗うべく、俺はひたすら繰り返す  作者: 小麦粉
序章

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転生者と観測者 Ⅱ


 ーーーー5月7日木曜日 5回目


「こうやって二人で話すのはいつ以来かな」

「彰人……君……?」


 俺にとっては何回目だったか。

 優月からしてみれば、俺に話しかけられるなんて夢にも思っていないだろう。


「ビックリさせちゃってごめん」

「うんう。でも、何でだろ……久しぶりに話したって感じがしない……不思議な感覚……だね」


 ミカが言っていた通り、時間を巻き戻しても記憶は残らない。

 だけど……もしも仮にほんの少しでも頭の片隅に今までの記憶が残っているとしたら、優月には本当に辛い想いばかりさせてしまった。


 今でも不用意に歴史を変えてしまうことが優月の為になるのかは分からない。

 でも、やっぱり人が死ぬと分かっていて見過ごすなんて俺には絶対無理……それが昔大好きだった幼馴染なら尚のこと、放ってなんかおけないだろ。


 優月の悩みを聞いて少しでも力になってやるには……まず突破しなければならない難題がある。


 ーーーーこの無限ループを終わらせなければ。


「私……今日……本当は……」

「大丈夫。俺が近くに居るから。優月は何も悪くない」

「うん……」


 ここまで来たら恥じらいとか下らない感情はかなぐり捨てて、デートにでも誘うか。


「本当はずっと話しかけたかったけど中々機会がなくって……だからさ、明日学校が終わったら久しぶりにどっか遊びに行かない?」


 唐突な俺の誘いに対して少しだけ悩んだように見えたけど、すぐにニコっと笑みを浮かべて頷いた。


「う、うん……!」

「約束だからな!!」

「うん……約束だよ……!」


 俺は、優月と明日の放課後遊びに行く約束をした。

 約束をしたからにはもう失敗は許されない。

 二回も三回もデートに誘うなんて、男としてカッコつかなすぎだからな。


 今は八日に起きてしまう自殺を踏み留まらせたと信じるしかない。


(本当の勝負はここからだ)


 そして、帰りのホームルームが終わりを迎える。

 俺はいつも通り笹野と二人で下校をしていた。


「授業中に彰人が発狂した時は驚いたけど、なんか色々吹っ切れたみたいで良かったぜ!」

「まぁな。もう繰り返すのはやめるわ」

「ん……よく分かんねぇけど……何か困ったことがあれば何でも相談に乗るからよ!」

「マジで助かる!」


 優月だけじゃなくて、笹野にだって何度も心配をかけさせてしまった。

 ま、今度飯でも奢ってやるかな。




 笹野と別れ、再び悪夢の時間帯が訪れる。


 あの凶悪な殺人鬼の魔の手から逃れるにはどうすればいいのか。

 今までの悲惨な経験を元に解決の糸口を探る。



 ーーーーCase1 自宅で待機する。


 自宅に身を潜めてミカが訪問してくるのをひたすら待つ。


 ……結果、ミカは外で殺された。

 犯人は仮面の人物で間違いない。

 俺の暮らすアパート付近で偶然にも犯人と遭遇したことで命を奪われたと推察できる。


 これは間違った選択だ。



 ーーーーCase2 外で待機する。


 どこでもいいから居座る場所を探して待機する。

 自分自身の生存のみを目的とするならば、この選択は妥当だと思う。


 公園で野宿したのを覚えているだろうか。

 状況からしておそらくあの晩、睡眠を取っている最中に俺は殺された。

 であるならば、公園ではなく警察署に事情を説明して逃げ込むのはどうだろう。

 さすがに警察官が近くにいる中で大胆な行動を取ることは出来ないと見た。


 ……だが、ミカはどうなる?

 結局のところ、家を訪れたミカと犯人は鉢合わせとなってしまう。


 ダメだ……この方法ではミカが犠牲になるのが前提となるだろ。



 ーーーーCase3 戦って勝つ。


 武装を整えて殺人鬼と正面からやり合う。

 何なら誰でもいいから助っ人を呼んで応戦してもらうのも悪くない。


 いや……時間が問題だ。

 準備を整えてる間に事が起きてしまっては元も子もない。

 警察に協力してもらうにしても、証拠も何もない状態でどうやって信用させるんだ。

 『未来を予知出来るんです!』とか、変人扱いされるのが落ちだし……現に俺ですら夢や幻だと思ってたからな。



 ーーーーCase4 学校を早退する。


 避難訓練で優月と二人きりになるのは必須。

 要は避難訓練が終わった後、授業なんか受けずに即帰宅して準備を整える。


 大体四時間くらいは時間が稼げる訳だが……出来ればこの方法は避けたい。


 単純な話、もう死にたくはないからだ。

 あの苦しみは慣れるとかそう言う次元を軽く凌駕している。

 次、事実上生き返った時に正常な精神が保てているか自信がない。

 それに、また新たな行動パターンを加えてしまうのはリスクが高すぎる。


 よって却下……俺に取っては最終手段でしかない。




「あぁ〜ダメだダメだ」


 いくら考えても良いアイデアが思い付きそうにない。


 まさに八方塞がりだ。

 一体どうすればミカと自分が無事に生存した上で、再び出会うことができるのか。


「ゲームみたいに()()()()を選択できれば苦労はしないのに……」










 ――――その時だった。

 俺の脳内に一筋の光明が駆け抜ける。

 いいや、光明なんて大層なもんじゃない。


 俺はたった一度だけ()()()()()()()()()()


 至極簡単な話だ。

 俺が歩むべきはずだった本来の歴史、世界線。

 

 謎の少女ミカと初めて出会った()()()


 想像を絶することが折り重なって自分でも忘れていた。

 あまりにも単純明快、一番最初に取った行動をそのまま実行すればいいだけの話である。


 結果として――――必然的にミカとの邂逅を果たせるのだ。


 俺はすばやく身支度を整える。

 常日頃からプライベートで持ち歩いているバッグを手に持った。


「このお守り、長い間バッグに付けっぱなしだったからな」


 優月と離れ離れになってからというもの、あまりに長い時が経ちすぎて忘れかけていた思い出の品。

 優月がスクバに付けていた()()()()()()()だ。


 青い布地に家紋が刻まれている。

 このお守りは、当時二人が幼いながらに交わした些細な約束の証でもある。


「優月はあの時の事をずっと覚えていてくれた……」


 だが、今は感傷に浸っている余裕はない。


 自転車の鍵を下駄箱から取り出し、アパートの自室を抜け出しコンビニへと向かう。


 あの時は気が付かなかったが……今なら分かる。

 自身に向けられる圧倒的な殺意、何者かに後を付けられている感覚……コンビニ内で妙な視線を感じたのは気のせいではなかった。


 ――――奴は既に追ってきている。


 俺は犯人に悟られないように何食わぬ顔でコンビニへと入店した。



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