第三話 「わあ! ありがとう、お兄ちゃん!」
自覚してからは、オリヴィアと元通り会話ができるようになった。
俺にとってオリヴィアが特別であるように、俺もオリヴィアの特別になりたい。そう願いながら、オリヴィアと向き合った。
みんなからの俺への期待は相変わらず。いや、むしろ年々増していくようだった。それ自体は別に嫌なわけではない。けれども、時折息苦しく感じてしまうときもある。そういうときは決まってオリヴィアのところへ向うのだ。
オリヴィアに会えば、息苦しさから解放される。オリヴィアは俺にとって、ただの特別な存在ではなくなっていた。生きていくためになくてはならない、酸素のような唯一無二の存在になっていった。
城という閉鎖的な空間の中。見たこともないドラゴンの王様と、最強のドラゴン様たちに仕える俺たち。肩身は狭いが、みんなと、オリヴィアと力を合わせ、平穏と呼べる生活を送っていた。
「やっぱり、ここらはもう枯れちまっているな。もう少し奥まで行くか」
「わかった、親父」
問題があるとすれば、それは城の周りで狩りができなくなりつつあることだった。自然がなくなり、砂漠のように乾いた地が広がってきている。草木がなくなり、生き物が姿を消す。魔獣もまた然りだった。
城ではドラゴン様の食事が最優先される。食料が減ることで、まず苦しむのは城のみんなだ。
俺が頑張らないと……。
脳裏に浮かぶのはオリヴィアの笑顔だった。
よし、もうひと頑張りだ。
「お、おい! リアム!」
「子ども!?」
親父の指さした先には、今にも魔獣に喰われそうなふたりの子どもがいた。
「親父、後ろから援護を頼む!」
そう叫びながら、勢いをつけて一歩踏み出す。子どもに夢中になっている魔獣に、迷いなく飛びかかった。
親父の助けもあり、無事に魔獣を退治できた。
「大丈夫か?」
「うあああん」
子どもたちは大声をあげて泣いていた。
ふたりをよく見ると、顔立ちが似ている。おそらく姉弟なのだろう。小さい体を寄せ合うように抱きしめ合っている。その腕は枝のように細く、過酷な生活を送っていることが見て取れた。
ふたりはメグとネッドというらしい。話を聞くと、仕えているドラゴン様へ献上するための食料を探しに、こんな危険な場所まで来たという。
「どうしよう……また怒られちゃう……」
「お姉ちゃん……僕もう叩かれたくないよ」
ふたりの会話を聞いて、黙ってはいられなかった。
「これ持っていきな」
今日獲れた数少ない魔獣の肉を差し出した。周りを見回すが、親父はもちろん他のみんなも誰一人嫌な顔をしていなかった。
「わあ! ありがとう、お兄ちゃん!」
ふたりは笑顔で礼を言うと、食料を持って帰っていった。
俺でさえ、あの歳ではまだ狩りをしていなかった。
城の暮らしを窮屈だと、不満を抱えていた自分が恥ずかしくなる。




