第二話 「リアムにもできないことがあるんだなあ」
それから数日間、何故か俺はオリヴィアとうまく会話することができなかった。彼女はいつも通りなのに、何だかむずがゆい感覚だ。
「ねー! オリヴィアと何かあった?」
「な、何もないよ」
「ふーん」
マーヤに気づかれるほど、露骨に態度に出てしまっているのか?
人に心配をかけるなんて俺らしくもない。
廊下を歩きながら、パンっと両頬を叩き、気を引き締め直す。
「お、リアムじゃないか」
「オットーおじさん!」
廊下の先で、城の修繕をしているオットーおじさんと出会った。
「ちょっと手伝ってくれんかね」
腰を押さえながら、そう言う。
おじさんと呼んではいるが、城の中ではかなりの年配だ。
仕方のないことだが、城内の人間は限られているため、どれほど年を取っても体が動くうちは働かねばならない。
「いつもすまないなあ」
「いいんだ! 頼ってもらえて、俺も嬉し……あっ」
直していた窓の部品が地面に落ち、小気味の良い金属音が廊下に響く。
「悪化させてどうするんだい。リアムにもできないことがあるんだなあ」
おじさんの何気ない一言が、ずっしりとのしかかる。
ちゃんとやらないといけないのに。
これからは俺がみんなを助けないといけないのに。
俺が……
「リアム、ここ押さえてて」
後ろから白い腕が伸びてくる。
言われるがままに外れた部分を押さえていると、その白く細い手が、手際よく部品を取り付けていく。
「これで良いんじゃないかな!」
「オリヴィア……」
振り返ると、そこに立っていたのはオリヴィアだった。
「ほら。リアムって案外細かい作業は苦手じゃない? 私はこういうの得意だから、一緒にやっていきましょ」
「若い者がふたりもいると心強いなあ。そしたら後はふたりにお願いするよ」
何だか、やっと息ができたような心地がした。
俺がしっかりしなきゃ。男の俺がみんなを守らないと。
みんな、俺に期待してくれている。
その期待に応えようと、何でもかんでもひとりでやろうとしていた。
そして、俺は気づかないうちに息もできなくなっていたようだ。
「リアム?」
何も反応しない俺を心配したのか、オリヴィアが首を傾げながらこちらを見ている。
その目を見ていると、鼓動が早くなる。
ああ……、オリヴィアが好きだ。
そう認めざるをえなかった。




