第十二話 「ひっでー有り様だな」
二匹の背に乗り、王城の方を目指す一行。人目を避けるため、リュカとローマンだけが飛ぶことになったのだ。マントをまとった一行が、リュカを先頭に飛んでいく。少しすると遠くに小さく城が見え始めた。
斜め後ろを飛んでいるローマンにリュカが目配せをし、二匹は高度を下げていく。
一行が降り立ったのは枯れ果てた大地だった。周辺に水源が一切無いせいだろう。しなびた草木、ひび割れた地面。廃墟と化した建物。
「ひっでー有り様だな」
「ふん、誰もいないみたいね」
ドラゴンたちが周囲を見回している横で、オリヴィアは眼前の光景に言葉を失っていた。風が吹くと砂埃が舞い、オリヴィアの視界を濁らせる。隣に立つノアも、この光景に呆然と立ち尽くしていた。
「あなたたちは本当に何も知らなかったんですね」
リュカが静かに放った言葉にノアたちは返す言葉もなく、沈黙が訪れた。
王城のドラゴンたちは空を飛び、城外に出ることは日常的にあるが、遠くへ行くことはそうそうなく、基本的には城の前にある大きな湖周辺を飛行している程度。王を守ることが彼らの使命であり、城以外の場所に興味もなかったのだ。
城に引きこもり状態だったノアはもちろんのこと、他のドラゴンたちも、この現状を知らないのは無理も無い話だった。
返答の無いノアたちを横目に、リュカは城の方向へと歩き出す。ノアたちは無言でその後に続くのだった。
どのくらい歩いただろうか。
ところどころ地面に雑草が生えている場所が現れてきた。
城の前の湖が水源となり、城に近づくほど草木は増えていくようだった。とはいえ、周囲の状況は良いとは言えない。
ノアたちは、村の青々と生い茂った草木と、周囲の惨憺たる状況を比べていた。少し雑草が見えてきたと言っても、まだひび割れた地面が視界の九割以上を占めている。
オリヴィアは、以前にノアが背に乗せて飛んでくれたときのことを思い出していた。
空から見たときも、緑はまばらで自然豊かとは言えなかった。近くで見ると、これほどまでにも酷い状況なのか、とオリヴィアは心を痛めていた。
「ここから先は誰かいる可能性があります。僕に近づいてください」
リュカの意図がつかめないまま、ノアたちはとりあえずリュカの周囲に集まった。みんなが近寄ったことを確認すると、リュカが太陽を見上げ、手をかざす。
すると、リュカの頭上を起点にキラキラと光るドーム状の壁のようなものが一行を包みこんだ。
「これは何だ」
ノアが問う。
「これは結界のようなものです。僕は光を操る能力を持っていまして、光の屈折を利用し、この結界内のものを他者から認識されづらくしているのです」
「見た目に反した能力ね」
リリーが輝く光の壁と、リュカの黒髪を見比べながら言った。
「光には影でしょう?」
リュカが口元だけで笑う。
「音が遮断される訳ではないので気を付けてください。では参りましょう」
今のところまだ人影は見えないが、リュカの言った通り人が住んでいる気配は感じられる。立派とは言えないが、建物もちらほらと建っている。
一行は音に細心の注意を払いながら、進んでいった。
「ちょっとあれ……!」
静寂の中、突然リリーが声をあげる。彼女の指さした先に誰かが倒れていたのだ。




