第六話 「すごい……発展しているんですね」
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リリーとローマン各々が村での時を過ごしている間、オリヴィアは片時も離れずノアの傍にいた。
時折、ノアを起こし薬を飲ませるが、それ以外の時間、ノアはずっと寝たきりだった。
薬が効いてきているのか、顔色はだいぶ良くなってきている。あとは意識さえしっかり戻れば、とオリヴィアは願うばかりだった。
「オリヴィアちゃん、ご飯に手をつけていないじゃないか。ちゃんと食べないと」
「すみません……食欲が無くて。後でちゃんと食べます」
話しかけたのは、村人のグレタだった。
オリヴィアが飲まず食わずなのが気になり、仕事が落ち着いたタイミングで様子を見に来たのだ。
グレタの予想した通り、薬と一緒に持ってきた朝食はそのまま机の上に残されていた。
ろくに睡眠もとっていないのか、オリヴィアの顔は、一晩でとてもやつれたように見える。
「そんなんじゃ、王が起きたときにびっくりしちまうよ。おいで!」
「でも……!」
グレタはオリヴィアの肩を優しく叩き、外へ出るよう促す。そしてそのままオリヴィアを連れて、村の中を歩きだしたのだった。
「す、すごいわ……」
オリヴィアは村を見回しながら、思わずそう呟いた。
村の家は石材でできており、それを包み込むように青々と木々が生い茂っている。
オリヴィアは、イザベルの村に戻ってきたような感覚を覚えていた。
今の時代、以前に建てられた建築物は廃墟と化し、崩れかけているものがほとんどだ。草木も枯れ始め、緑の無い土地が広がりつつある。そんな中、どういうわけか、この村にはそういった荒廃の気配が微塵も感じられないのだ。
「すごい……発展しているんですね」
「発展? そんなものしてないよ。自給自足には限界があるからね。もう千年も前であればね、他国と貿易とかして、より技術も進化してたと思うよ」
千年前……?
どうしてそれほど昔のことをグレタが知っているのか、オリヴィアは疑問に思ったが、それはすぐに解消された。
グレタの瞳を見て、彼女がドラゴンであることに気がついたのだ。
「ドラゴン様……! 無礼な態度、誠に申し訳ございません」
オリヴィアは隣を歩いていたグレタから一歩後ろに引き、急いで頭を下げた。
「なんだいそれ! この村にそんなしきたりはないよ。顔をお上げ。それから、私のことはグレタって呼びな!」
「グ、グレタ様?」
オリヴィアは頭を下げたまま、少し視線をあげてグレタを見上げるが、グレタは目を細めてオリヴィアを見つめ返すだけ。
「グレタさん……」
「うん、それでいい! ほら! 着いたよ」
グレタに言われオリヴィアが顔を上げると、村の女性たちが動物の世話をしていた。
グレタに気づいた女性たちが、笑顔で手を振り挨拶をする。瞳を見ると、やはり人間もドラゴンもいて、ともに働いているのだった。
オリヴィアはその光景を前に、やはり信じられないという気持ちが湧いてくる。人間とドラゴンが共同生活を送っているなんて。
その上、立派な建築物が建てられ、動物まで飼育しているのだ。
「食欲は無いと思うから、ここで働きながら癒やされな! 動物はいいぞ〜」
グレタが優しくオリヴィアの背中を押し、輪の中へと入れる。みんな、こうするんだよ、こうすると喜ぶよ、とオリヴィアに動物たちの扱い方を親切に教えてくれた。
オリヴィアが最初に任されたのは犬のブラッシング。言われた通り、ゆっくりと丁寧に犬の毛をとかす。
「ふわふわだわっ……!」
長毛種の犬の毛は見た目以上に柔らかい。オリヴィアがブラシを通す度、犬は嬉しそうに尻尾をぶんぶんと振った。そんな風に喜んでくれることに、オリヴィアもまた嬉しくなる。
「次は水やりね! 水を汲みに行くから手伝ってくれる?」
「はい!」
同い年くらいの女の子に声をかけられ、オリヴィアは外へと連れ出された。
その道中にも、衝撃と感動がオリヴィアを待っていたのだった。
歩いていると、目につくのは自然の緑。これほど豊かな場所を、オリヴィアは見たことがなかった。
「水がこんなにも……!」
「ええ。雨水を溜める場所があって、それを水車だったり、水路を利用して村全体に行き届くようにしてるの。ここが水を汲む井戸ね!」
そう言われ、オリヴィアは井戸の中を覗いてみる。太陽の光を反射してきらきらと輝く水が井戸の底に溜まっている。
「ほら! 汲むよ! 力仕事だからね〜」
「はい!」




