表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

男(1)

 自分の身がこうも無様に自由を失うなどとは想像だにもしなかった。指一つ動かせず、声も出せない。心臓は動き、脳も動いているというのに。


「いつ目覚めるか、分かりませんね」


 薄目の先に白衣が見えた。医者のようだ。分かったような口振りでえらそうに喋っている。

 いつ目覚めるか分からない? 馬鹿が。俺は眠ってなどいない。とっくに目覚めている。


「そうですか」


 おっとりした声が聞こえる。妻の月子だ。

 お前もお前で呑気に何を言っていやがる。いっつもいつも役に立たない女だ。

 早く俺が目覚めている事をそいつに伝えろ。そして適切な処置を行うように促せ。


「植物人間、という事ですか」


 月子がふざけた事を抜かしている。なんだそれは。植物で人間。笑えない。俺は人間だ。生きた人間だ。植物などではない


「しばらく様子をみましょう」


 足音が遠ざかっていく。


 くそ。

 何の冗談だ、これは。

 思い出せない。何があったのか。何故こんな事になっているのか。大方事故か何かに巻き込まれたのだろうが、何にしても不運この上ない事態だ。


「おい、月子」


 呼びかけたつもりだが、やはり声は出ていないようだ。月子は全く反応しない。


「ったく。ふざけやがって……」


 悪態をつく事しか出来ない。

 早くこんなふざけた現実など終わってしまえ。目が覚めたらまっさきにこの不出来な女を叩いてやる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ